政府は28日午前、首相官邸で犯罪対策閣僚会議を開き、危険性の高いストーカー加害者にGPS機器を装着し、被害者への接近を通知する新たな保護措置の検討を盛り込んだ緊急対策を決定した。ストーカー規制法の改正も視野に、制度の導入を早急に検討する。
緊急対策では、加害者に治療やカウンセリングの受診を義務づけることも検討する。特殊詐欺などへの対応を担う「金融犯罪対策センター(仮称)」の設置に向けた検討を加速することも盛り込まれた。
GPS装着の検討に踏み切る直接の契機となったのは、今年3月、東京都豊島区の商業施設で、勤務中の女性が元交際相手の男に刺殺された事件である。男は過去に女性への同法違反容疑で逮捕されて警察から受診を促されており、事件当時は被害女性への接近を禁じる禁止命令を受けていた。
警察庁によると、令和7年のストーカー事案の相談などは2万2881件に上り、前年から16.9%増加した。禁止命令なども3037件となり、平成12年のストーカー規制法施行以降で最多となった。
一方、特殊詐欺の被害額は1423億1千万円、SNS型投資・ロマンス詐欺は1834億3千万円で、合計約3257億円に達した。
ストーカー加害者の身体にGPS機器を装着する制度を導入するには、プライバシーや行動の自由との調整が必要となる。
身体への装着を認める現行制度には、令和5年改正刑事訴訟法で設けられた「位置測定端末装着命令」がある。ただし、対象は保釈中の被告人による国外逃亡の防止に限られ、裁判所の命令が必要である。同制度は成立しているが、まだ施行されていない。
海外では、司法機関の判断や厳格な要件を設けた上で、GPSなどによる位置監視を導入する例がある。
米国では、本人の同意なく身体に装置を取り付けて移動を追跡する行為は、憲法上の「捜索」に当たると判断されている。
またドイツでは、重大犯罪を起こす具体的な危険がある者などに対象を限定し、位置情報の保存期間や利用方法を制限するなど、GPSの装着に対して、利便性や再犯防止効果だけでなく、「個人の権利をどこまで制限してよいか」という憲法・人権法上の観点から法的なハードルが非常に高く設定されている。
一方で、韓国などでは2024年1月施行の改正ストーカー処罰法により、裁判所が暫定措置として位置追跡電子装置の装着を命じることが可能となっており、国の対応は大きく異なる。
今回の緊急対策は、GPS装着制度の検討方針を示した段階である。今後は、装着を警察の禁止命令で決めるのか、裁判所の判断を必要とするのかが焦点となる。
対象者を選別する基準のほか、被害者に伝える情報を接近の事実に限るのか、加害者の位置そのものまで含めるのかも検討課題である。収集した位置情報の保存期間や利用目的についても、明確な制限が求められる。
ストーカー規制法に基づく禁止命令などが過去最多となる一方、加害者の身体に装置を取り付け、被害者への接近を監視する法的枠組みは、現時点では存在していない。
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