未来の戦争は変わるか 「空母は格好の標的になる恐れ」=台湾陸軍退役少将

2026/07/30 更新: 2026/07/30

近年、中国共産党(中共)は台湾周辺で実弾を使用した海空軍演習を頻繁に実施し、台湾海峡の中間線を越えるとともに、グレーゾーンでの侵犯と軍事的拡張を南シナ海や第1列島線の各要衝にまで広げている。威圧性を増す中共政府の権威主義的拡張に対し、台湾と周辺の民主国家はどのように対応すべきなのか。第1列島線の防衛体制には、どのような質的変化が起きているのか。

中華民国陸軍の余宗基・退役少将は最近、ワシントンを訪問し、複数のシンクタンクを訪ね、米議会議員らと面会した後、25日、新唐人テレビの番組「新聞大家談」のスタジオに招かれ、インタビューに応じた。余氏は、米国、日本、台湾、フィリピンによる多国間共同防衛、ロシア・ウクライナ戦争が示した技術面での教訓、中国共産党の「アナコンダ戦略」無人機産業がなぜ台湾にとって第2の護国神山(国家の防衛と経済を支える大黒柱)になり得るのかなどの主要な問題について、詳細な戦略分析を示した。

一 中共の拡張が逆効果を招く 

最近、中共の台湾海峡と周辺海域における軍事行動は、ますます攻撃的になっている。中共軍は福建省の離島・烏丘の対岸で実弾射撃を行い、武装ヘリコプターを澎湖付近で活動させたほか、南シナ海の仁愛礁ではフィリピンの補給船を暴力的に挟み撃ちにし、尖閣諸島周辺では海域の空間を圧迫する「アナコンダ戦略」を進めている。しかし、全面戦争の水準を下回るグレーゾーンの手段によって威圧しようとするこうした行動は、中共政府の予想とは全く反対の戦略的結果を生んでいる可能性がある。

余氏は、中共政府の計算は大きく外れたと指摘した。中共は、数的優位とグレーゾーンでの衝突を通じて周辺諸国を分断しようとしているが、実際には、この具体的な軍事拡張行動が、第1列島線の民主国家を団結させる最大の推進力となっている。共通の脅威が極めて明確であるため、米国、日本、台湾、フィリピンなどによる情報交換、意見交換、軍事演習の頻度と深度はいずれも過去最高に達している。

余氏は「全体主義的な独裁者による軍事拡張が、かえって第1列島線諸国の団結を促す最大の推進力となっている。中共の圧倒的な数的優位を前に、単独の国が一国だけで対抗することは難しい。『単一戦域』としての集団防衛体制を形成してこそ、そのグレーゾーンでの嫌がらせを効果的に打破できる」と述べた。

日本やフィリピンなどの戦略的変化について、番組ゲストの周子定氏も、米比合同軍事演習「バリカタン」の規模が年々拡大しているほか、日本が初めてヘリコプター搭載護衛艦「いせ」を参加させたことを挙げ、日本の防衛圏が急速に南方へ拡大していることは明らかだと強調した。

余氏は、日本は中共の野心が台湾だけに限られるものではないと、すでに深く認識していると分析した。台湾が陥落すれば、沖縄、バタン諸島、さらには第1列島線全体が併合の危機に直面する。全体主義国家では、意思決定が独裁者一人に左右され、議会や世論の監督が欠けている。このため民主国家は、強い脅威を感じる中で、従来の国防予算を巡る政治的制約を次々に打ち破り、軍備強化を積極的に進めている。

二 全体主義体制の情報ブラックボックス

現在、中国では景気が後退し、災害が相次いでいる。しかし専制体制には、情報を隠し、統計を粉飾する特権があり、大量の国家資源を軍備拡張へ強制的に投入している。例えば造船能力では、中国の艦艇建造規模は米軍の数百倍にさえ達している。しかし余氏は、資源を軍事に集中させるこうした体制には、致命的な戦略上の弱点が存在する可能性があるとみている。

余氏は、中共が対外的に強硬姿勢を示す背景には、深刻な国内の政治・経済危機が隠されていることが多いと指摘した。

全体主義政治は、反対意見を粛清した後、往々にして異論が許されない危険な状態に陥る。官僚機構は生き残りと昇進のため、必然的に良い情報だけを報告し、悪い情報を伏せ、最高指導者に対して、選別され、へつらいを含んだ虚偽の情報を提供する。これこそが、非合理的な戦争を引き起こす核心的な原因である。

余氏は「プーチン氏は当初、側近による『3日でキーウを攻略できる』との虚言を信じて侵攻を開始し、現在では数年にわたる戦略的な泥沼に陥った。中共指導部も同様に、ご機嫌取りに終始する軍事情報の報告を信じ、『土曜日に出兵すれば、月曜日には台湾総統府でコーヒーを飲める』と誤認すれば、プーチン氏の轍を踏むことになる。それは中共政権の完全な崩壊を加速させる恐れがある」と述べた。

三 「アナコンダ封鎖戦略」を打破する

中共が多数の軍艦、海警船、民兵船で台湾海峡を包囲し、船舶への立ち入り検査と封鎖を実施しようとする「アナコンダ戦略」について、余氏は打開策を提示した。この戦略は、南北戦争時代に米国のウィンフィールド・スコット将軍が採用した包囲・窒息戦術に由来する。

余氏は、「アナコンダ戦略」が成功するためには、相手が孤立無援であり、時間が封鎖側に味方していることが前提になると指摘した。しかし、台湾海峡情勢は全く異なる。

第1に、第1列島線の各国は利害を共有している。台湾海峡の封鎖は、日本、韓国、第1列島線諸国の生命線を直接遮断することになり、周辺諸国が傍観することは絶対にあり得ない。「台湾有事は日本有事」という考え方は、アナコンダ戦略による封鎖に対する直接的な戦略上の対抗策である。

第2に、台湾の「ヤマアラシ戦術」による反撃能力である。台湾は強力な長距離対艦攻撃能力と、ハリネズミ・ヤマアラシ型の防衛配備を備えている。自然界でアナコンダがヤマアラシを捕食しようとしないのは、締め付ければ締め付けるほど、ヤマアラシの全身の針が深く刺さり、致命傷となるからである。

第3に、経済と半導体産業からの反作用である。台湾は、世界の重要な半導体供給の命脈を握っている。中共が海上封鎖を開始した場合、経済と産業の崩壊速度という点では、中共自身が台湾を締め殺す前に、経済崩壊と深刻な打撃に直面する可能性がある。

四 無人機とAI計算能力 

対岸の兵力面での数的優位に直面する中、技術を通じて非対称戦の能力を発展させることが、戦場の均衡を変える最も重要な手段となる可能性がある。余氏はインタビューで、今後、従来型の軍事対抗は「AI計算能力の対抗、無人機の対抗、無人車両・船舶の対抗」に完全に置き換えられると強調した。

余氏は、ワシントンで米議会議員らと意見交換した際、台湾はロシア・ウクライナ戦争から大きな「希望」を見いだしたと明確に伝えたことを明らかにした。ウクライナは、兵力と重装備で圧倒的に劣る中、非対称戦を通じて極めて強い強靱性を示した。

余氏は、開戦当初、多くの人がウクライナは2週間も持ちこたえられないと予測したが、ゼレンスキー氏は亡命を拒否し、強い指導力を示したと述べた。さらに重要なのは、ウクライナがその後、無人機を大量に使用し、ロシア軍の人的損害の最大8割をもたらし、自国の兵力と装備面での劣勢を打ち消すことに成功した点である。

余氏は、このことは現代戦争において「人員数の優位がマイナスの資産になり得る」ことを示していると指摘した。大規模な部隊の兵站補給線が、無人機による優先攻撃の対象となるためである。

余氏は、現在、台湾立法院では関連予算の審議を巡って政治的な駆け引きがあるものの、無人機の発展は、党派を超え、民間を含む強い共通認識となっていると説明した。政府は経済部を通じて民間産業の積極的な参入を促し、米国、日本、欧州諸国と技術認証や協力を進めている。「Green U.S.」認証などがその例である。

余氏は「台湾には世界トップクラスの精密機械産業の集積、豊富なOEM受託生産の経験、先進的な半導体製造能力がある。『非レッド・サプライチェーン』を構築することで、無人機産業は台湾積体電路製造(TSMC)に続く、台湾にとって第2の『護国神山』となる」と述べた。

ゲストの周氏も、機械工学の観点から、西側諸国は中国から切り離されたサプライチェーンを構築する過程で、信頼できる精密加工の協力相手を早急に必要としており、台湾はこの巨大な市場の空白を埋めることができると分析した。

周氏は、無人機産業の発展には、3つの戦略的利益があると指摘した。第1は、高付加価値の経済成長を促進すること、第2は、防衛兵器の自主生産を実現すること、第3は、国際社会の台湾に対する依存度を高め、台湾防衛を、世界の民主国家が自国の産業安全保障を維持する上で唯一の選択肢とすることである。

中共が原子力潜水艦や大型空母を急速に進水させていることについて、余氏は、中共は依然として「艦艇は大きいほど良い」という伝統的な大艦巨砲主義に陥っていると指摘した。しかし、水上無人艇、水中無人潜航機(UUV)、空中無人機による飽和攻撃の下では、大型艦艇は最も目立ち、優先的に破壊される標的になるという。

五 心理戦と戦略的コミュニケーション 

国防部政治作戦局文宣心理戦処の元処長である余氏は、インタビューの最後に、現代の認知戦における「心理戦」と「戦略的コミュニケーション」の決定的な位置付けについて特に論じた。

余氏は、中共による台湾への認知戦とグレーゾーンの手段は、実質的には大規模な心理戦であり、米台関係を内部から分断し、社会の対立を生み出し、台湾人の防衛意志を打ち砕こうとするものだと指摘した。歴史を振り返れば、国共内戦時代に国民党軍が三大戦役で敗北したのは、装備が相手より劣っていたからではなく、心理的な防衛線が先に崩壊したためである。

余氏は「どれほど強力な装備があっても、心理的な防衛線が決壊すれば、ひとたまりもない。台湾は、国内、国外、敵に向けた戦略的コミュニケーションを強化し、共通の敵に対して一致団結する反共認識を取り戻し、民主主義と科学技術による国防への信頼を固めなければならない」と述べている。

李新宇
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