現在、世界にはインターネットに接続された監視カメラが約12億台ある。住宅や店舗、公共空間の安全を守るために設置されたものだが、戦時下では情報収集の手段として使われることもある。中東情勢が緊迫するなか、中国製カメラがハッキングされた事例もあり、こうした機器の安全性に改めて注目が集まっている。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、今年初め、米国とイスラエルがイランを攻撃した際、イスラエル北部の養鶏業者が鶏の様子を確認しようと、鶏舎の外に設置したネットワークカメラをスマホで確認した。すると、画面の表示言語がアラビア語に切り替わった。
業者がイスラエル国家サイバー局に連絡したところ、ハッカーがこの中国製カメラを乗っ取っていたことが判明した。
ハッカーの目的は、鶏舎の監視ではなかった。カメラは近くのレバノン国境方面に向けられており、イスラエル治安部隊の動きを捉えられる状態になっていた。
イスラエル国家サイバー局はその後、業者のカメラのセキュリティー対策を強化するとともに、軍事活動が映り込まないようカメラの向きを変更した。
フィナンシャル・タイムズが3月に発表した調査によると、イスラエルの情報機関は、ハッキングした道路監視カメラとAIを活用し、当時の最高指導者ハメネイ師を標的とした作戦に先立ち、イラン高官らの行動パターンを把握していた。
その後、イランや同国と関係するハッカー組織も反撃し、イスラエル国内の数百台のカメラに侵入した。対象には、国家安全保障上、機密性の高い情報を扱うナンバープレート認識システムや、軍事施設周辺の監視カメラも含まれていた。
イスラエル国家サイバー局のサイバーセキュリティー専門家、ノリ氏は、「イランから望遠鏡を使ってイスラエルを直接監視することはできない。そのため、インターネット上に接続されたカメラを利用し、自分たちの監視の目にしている」と説明した。
イランと関係があるとされるハッカー集団「ハンダラ」は、イスラエル人を間近で監視できると主張した。市民が交通監視カメラに向かって話しかければ、自分たちにメッセージを送ることもできるとしている。
ロシアとウクライナも監視カメラをハッキングし、部隊の動きを追跡したり、攻撃目標を探したりするほか、空爆による被害状況の確認にも利用している。ウクライナ側によると、ロシアによる全面侵攻が始まって以降、安全保障上のリスクがあるカメラを約4万台特定した。
監視カメラのサイバーセキュリティーをめぐる問題では、中国ブランドの製品が関係する例が多い。一部の西側諸国では、ハッキングを受けやすいとされる機器や、中国共産党(中共)政権との関係が疑われる中国製監視機器の使用を制限している。
専門家は、多くのネット接続型カメラでソフトウェアの更新が長期間行われず、破られやすいパスワードが使われているため、攻撃の標的になりやすいと警告した。
こうした機器が軍事基地や主要交通路、政府施設の近くに設置されていれば、本来は安全を守るための監視カメラが、逆に機密情報の流出につながる恐れがある。
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