カンボジア詐欺組織の大物が暴露 中共軍が接触し内通者送り込み狙う

2026/10/16 更新: 2026/10/16

アルジャジーラの独占調査ドキュメンタリーで、カンボジアの中国系実業家、鄧丕兵が手がけるココン州七星海のリゾート開発ロングベイ(Long Bay)内に、オンライン詐欺拠点や違法賭博、麻薬関連の活動が存在していた疑いが浮上した。

番組では、鄧丕兵が中国共産党(中共)軍から協力を持ちかけられ、広州に呼び戻されて秘密協議を行ったと自ら語っている。また、中共当局は鄧丕兵の部下で、カンボジア国家警察の警護部門に勤務する女性にも接触し、カンボジア政府内部で中共政府のために活動する「内通者」になるよう求めた。

鄧丕兵「中共軍から協力持ちかけられた」

鄧丕兵は現在、正恒(カンボジア)有限公司の董事長を務める。中国湖南省出身で、カンボジアに移住して20年以上になり、爵位も持つ。

正恒が開発するロングベイは、カンボジア南西部、タイ湾に面するココン州七星海経済特区に位置し、面積は約4万5千ヘクタール。住宅、観光、リゾートを一体化した世界級の観光地として宣伝してきた。

アルジャジーラの調査番組「101 East」は10月10日、約24分の独占調査ドキュメンタリーを放送した。映像は昨年撮影のものとみられる。

番組の記者は、フィリピンを拠点とする大規模オンライン賭博グループの関係者を装い、新たな事業拠点を探していると称して、鄧丕兵やそのビジネスパートナーに接触した。これにより、ロングベイ内部の実態を調査する機会を得たという。

番組は、開発区域内にオンライン詐欺拠点や違法賭博、麻薬に関連する活動が存在する疑いがあると伝えた。

オーストラリアに亡命している中共元工作員エリック氏は10月15日、SNSにアルジャジーラの潜入調査について「中共当局と詐欺組織との接点や関係をさらに明らかにした」と投稿した。

エリック氏によると、中共当局は詐欺組織が持つカンボジア政府内部の人脈を情報活動に利用しようとしていたほか、2019年には中共軍関係者が鄧丕兵を広州に呼び、七星海空港プロジェクトをめぐる協力について話し合ったという。

番組では17分29秒付近から、その場面が収録されている。

鄧丕兵は映像の中で、中共当局関係者から一度ならず接触を受け、2019年には広州に呼ばれて中共軍関係者と秘密裏に話し合ったと語った。

また当時、広州・南沙のホテルを訪れた際、情報漏えいを防ぐため、指示に従って携帯電話を袋に入れ、冷蔵庫の冷凍室に保管したと説明した。

鄧丕兵によると、中共軍側は七星国際空港プロジェクトでの協力を望んでいたという。

七星国際空港は、中国資本約3億5千万ドルを投じて建設した。一方で物議も醸してきた。滑走路が異例に長いことから、中共当局が軍事目的で使用する意図があるのではないかとの見方も出ていた。

空港の近くには、中共当局が支援するカンボジア最大規模の海軍基地、リアム海軍基地(Ream Naval Base)もある。

鄧丕兵は、中共当局側がカンボジアで物資を調達し、中共軍がアフリカ・ジブチに置く基地へ供給しようとしていたとも語った。

中共当局がカンボジア政府内に内通者勧誘か

アルジャジーラによると、鄧丕兵はカンボジア政府機関や警察内部に複数の人員を送り込んでいるとも明かした。その中には、インターネット監督部門や国家警察の警護部門に勤務する人物も含むという。

鄧丕兵は記者に対し、「今、どこを摘発し、どこを調べるのか、私は全部知っている」と語った。

国家警察の警護部門で働いていたのは、鄧丕兵が最も信頼するカンボジア人従業員、チート・モニー(Cheat Mony)氏だという。

モニー氏は鄧丕兵に同行してカンボジアのフン・セン前首相と面会したことがあり、習近平がカンボジアを公式訪問した際にも警備業務に当たっていた。

鄧丕兵は調査記者に、習近平が2025年にカンボジアを訪問した際の映像を見せた。その中では、モニー氏が習近平から近い位置に立っている様子が確認できる。モニー氏は、調査記者を招いた夕食会にも参加していた。

カンボジア国家警察警護局のイム・リアン局長の兄弟は、鄧丕兵のビジネスパートナーだと報じている。

鄧丕兵は調査記者に、「私も彼女(モニー氏)の上司であり、彼(イム・リアン氏)も彼女の上司だ」と説明した。

番組では、鄧丕兵がモニー氏を紹介する際、中国語で「私は彼女のボスだ」と話す場面も映っている。

モニー氏もカメラの前で、「あなたは私の兄貴で、彼は私のボス。私は兄貴のために働いている」と話した。

さらに鄧丕兵によると、習近平のカンボジア訪問中、モニー氏の働きぶりが中共関係者の目に留まり、中共当局の人物が彼女を脇に連れて行き、「われわれのために働き、内通者になれないか」と尋ねたという。

鄧丕兵はここでいう「内通者」について、中共当局側がカンボジア政府内部に潜伏して活動する人物を求めていたという意味だと説明した。

鄧丕兵によれば、モニー氏はその際、中共中央警衛局の関係者に対し、「まず私のボスに聞いてください」と答えたという。その「ボス」が鄧丕兵だったとしている。

「柬中時報」によると、カンボジア当局は、国内のいかなる場所もオンライン詐欺活動を容認していないと表明した。

現在、正恒グループ董事長の鄧丕兵について捜査を進めており、鄧丕兵が開発した七星海ロングベイは封鎖され、厳重な管理下に置かれている。

カンボジア移民総局によると、鄧丕兵は2026年5月末にカンボジアを出国した。国際刑事警察機構は鄧丕兵に赤手配書(国際逮捕手配書)を出している。

カンボジア内務省のドゥ・ソク副報道官は10月14日、ドキュメンタリーで鄧丕兵のために働いていたという関係者について調査中だと説明した。

現時点ではモニー氏と鄧丕兵の具体的な関係は明らかになっておらず、国家警察の警護部門など関係機関が事実関係を調べるとした。

鄧丕兵 佘智江と「10年以上前から知人」

鄧丕兵はまた、昨年11月に中国へ引き渡された亜太新城の中心人物、佘智江とは長年の友人だと語った。

アルジャジーラの調査ドキュメンタリーで、鄧丕兵は佘智江と同じ湖南省出身で、10年以上前から知り合いだったと明かした。

鄧丕兵は、大きな問題を考える際には「上には上がいる」ことを理解し、自分の立場をわきまえる必要があると話した上で、「われわれは皆、一つの脚本の中にいる役にすぎない。監督が決めたことを壊してはいけない」と語った。

佘智江は2024年8月、タイの刑務所が提供したビデオ面会システムを通じて、101 Eastの取材を受けている。

その際、佘智江は自らについて、中国僑商聯合会の副会長を務めたことがあり、中共国家安全部の関係者でもあったと説明した。また、その指示に従って亜太集団を設立し、ミャンマーのシュエコッコは巨大経済圏構想一帯一路の一部であり、中国のインフラを世界に広げる構想の一環だったと主張した。

佘智江は、中共当局から政治的迫害を受けているとも訴えた。

国家安全部や一帯一路に関する秘密を知りすぎているため、中国に送還されれば殺されると主張し、事業の支配権を手放すことを拒んだため、中共指導部に「裏切られた」と述べていた。

陳志の拘束 鄧丕兵の逃亡 詐欺組織摘発の背景

アルジャジーラによると、鄧丕兵は、太子集団のトップとされた陳志が今年1月6日に拘束される数日前に、カンボジアを離れるよう助言を受けていたという。

今年初め、カンボジア当局は、オンライン詐欺犯罪への関与を指摘されていた太子集団の創業者兼董事長、陳志を中国へ送還したと発表した。

太子集団に勤務していた中共当局の元工作員エリック氏は、以前の大紀元の取材で、太子集団は中共当局がカンボジアをはじめ東南アジアで秘密活動を展開する上で、最も重要な協力者の一つだったと主張した。

同氏によると、太子集団は通常の企業活動の範囲を大きく超え、資金や人員、輸送手段などを通じて、中共当局の海外活動を幅広く支援していたという。

エリック氏は、北京や重慶の治安当局幹部が、陳がカンボジアに所有する私設施設「雲軒閣」で秘密会議を開き、亡命中の漫画家、王立銘氏に罪を着せる計画を立てていたのを目撃したとも主張している。

その際、太子集団が接待を全面的に担当していたといい、陳が「龍哥」と呼ばれるかつての上司に低姿勢で頼み込み、中共公安部に便宜を図ってもらおうとする場面も見たとしている。

米司法省の文書では、陳が中共国家安全部、公安部、統一戦線工作部から保護を受けていたとされている。

東南アジアで、中共当局との関係が疑われる詐欺組織のトップが当局に相次いで追われている背景について、中共当局の内部事情に詳しい独立評論家の杜政氏は、台湾メディア「上報」への寄稿で分析した。

杜氏によると、王小洪が公安部の実権を握った後、公安部門では大規模な人事刷新が進み、陳一新が国家安全部門を掌握して以降も、国内外で大規模な粛清が行われた。

海外に残っていた旧来の情報網も大幅に入れ替えられ、一部の関係者は中国へ連れ戻された。その中にはオンライン詐欺拠点のトップも含まれるという。

杜氏は、こうした旧来の関係者は習近平側と対立関係にあり、虚偽の情報を報告することもあったため、忠誠心を疑われたとの見方を示している。

北京の元弁護士、頼建平氏は以前、大紀元に対し、こうした詐欺組織のトップについて「少なくとも情報提供者であり、中には国家安全部の正式な要員もいる」との見方を示した。

さらに、中共当局の有力者一族が資産を蓄える際の「ホワイトグローブ」として使われ、中共指導部の秘密を握っている者もいると指摘した。

頼氏は、「中国に連れ戻された後、本当に刑に服しているのかどうかは誰にも分からない」と語っている。

カナダ在住の作家、盛雪氏は、中共当局は、海外浸透工作の戦略や配置、資金の流れに関する秘密を知る人物が米国や英国の手に渡る事態を避けたいはずだとの見方を示した。

その上で、「中共当局は必ず彼らを守ろうとするが、時機を見て、その人物を排除することもあり得る」と述べている。

唐兵
関連特集: 中国政治