中共の干渉で海底ケーブルを迂回 南シナ海で高まるリスク 日本の役割とは

2026/10/27 更新: 2026/10/27

今年初め、シンガポールで開かれた安全保障会議で、オーストラリアのリチャード・マールズ国防相は、海底が新たな戦いの舞台になりつつあると指摘した。この発言には、出席した各国の軍高官や地政学の専門家、政府関係者らからも賛同の声が上がった。

ブルームバーグによると、現在、世界のデータ通信量の95%以上が海底ケーブルを経由しており、毎日数兆ドル規模の金融取引も支えている。各国は既存の海底通信網を守るとともに、海上交通が集中する海域を避け、中国共産党(中共)の海洋進出に伴うリスクを抑える方法を模索している。

オーストラリア、英国、米国は、2027年までに海底ケーブルの保護に使う水中ドローン技術を開発する方針を発表した。また、シンガポールは東南アジア、欧州、中東、オセアニアの17か国が参加する協力枠組みを立ち上げ、重要インフラの保護に向けた防衛協力について検討を進めている。

海底ケーブルに2つのリスク 西側企業が敷設ルートを変更

インドネシア、マレーシア、シンガポールの間に位置するマラッカ海峡は、インド太平洋地域で最も重要な海上交通の要衝の一つだ。世界の海上貿易の約21%がこの海峡を通過している。

しかし、マラッカ海峡は狭い海域に多数の海底ケーブルが集中しており、ひとたびケーブルが損傷すれば、通信網に深刻な影響が及ぶ恐れがある。

こうしたリスクを避けるため、民間企業による大規模な海底ケーブル事業では、マラッカ海峡を迂回する動きが広がっている。

例えば、グーグルの海底ケーブル計画「TalayLink」は、マラッカ海峡を通らず、インド洋経由でオーストラリアとタイを結ぶ予定だ。

ただし、特定の海域にケーブルが集中することだけがリスクではない。南シナ海は、海底ケーブルの敷設ルートをめぐる地政学的な対立が特に激しい地域の一つだ。

中共は新たな規制を設け、海上での取り締まりを強化するなどして、外国企業による海底ケーブルの敷設に干渉している。こうした動きによって、世界の海底ケーブルの敷設ルートも変わりつつある。

西側の大手IT企業は、中共によるリスクを避けるため、費用が増え、敷設条件が不利になっても、中共の影響を受けにくいルートを選ぶようになっている。アジア太平洋地域では、通信網のルートを見直す動きが進んでいる。

例えば、グーグルとMetaが参加する海底ケーブル事業「Echo」は、グアムとインドネシアを経由して米国とシンガポールを結ぶ。

海底ケーブルは建設に巨額の費用がかかるため、敷設ルートの選択は、その地域の今後数十年の発展を左右する。国家間のつながりを強める一方、ルートから外れた国が次第に孤立する可能性もある。

オーストラリアのラ・トローブ大学の研究員、サミュエル・バッシュフィールド氏は、南シナ海での敷設作業を危険だと判断する企業が増え、この海域を完全に避ける動きが広がっていると指摘した。

中共の干渉で海底ケーブル計画に影響 西側諸国が対抗

中共による海底ケーブル事業への干渉は、さまざまな形で行われている。

中共海警局の船舶が海底ケーブルの修理作業を妨害するほか、敷設予定海域への立ち入りを阻止したり、煩雑で厳しい許認可手続きを課したりしている。こうした措置は、外国企業による海底光ファイバーケーブルの敷設を事実上妨げている。

バッシュフィールド氏によると、中共の認可の遅れを受け、一部の新規事業ではルートの大幅な変更を余儀なくされている。

その結果、沿岸部に沿ってケーブルを敷設し、水深の浅い海底に埋設するケースもあり、通信網が損傷や障害の影響を受けやすくなる恐れがあるという。

例えば、新興企業Inligo Networksが主導する総事業費7億ドルのAsia Connect Cable Systemは、南シナ海を避け、インドネシアとフィリピンを経由するルートを採用する。

米国、台湾、フィリピンを結ぶPacific Light Cable Networkも、同様の変更を行った。当初は香港にも接続する計画だったが、米国の介入を受け、最終的に香港への接続を断念した。

米中両国は、相手国の企業が海底ケーブルの建設に関われば、情報収集や意図的な破壊工作につながる恐れがあると警戒している。

米国は中国の技術が国家安全保障上の脅威になると考えている。一方、中共も米国や日本の技術が安全保障上の脅威になると主張している。

米国や日本、オーストラリアなどは、アジアの海底ケーブル事業で、中国資本が関与するHMNなどの企業の利用をできるだけ避けたい考えだ。

今年8月、オーストラリアは、太平洋諸島フォーラム(PIF)の全加盟国が初めて世界の海底ケーブル網に接続したと発表した。

これは重要な進展だが、中国企業が太平洋地域から完全に排除されたわけではない。

次の競争の焦点は、データセンターだ。

海底ケーブルの建設に資金を投じる国々は、現地でデータを保存・処理できるよう、データセンターなどの関連施設も整備する必要がある。こうした施設の整備が遅れれば、中国企業が参入する隙を与えることになる。

この取り組みでは、日本が重要な役割を担うとみられている。

日本は海底ケーブルの主要な製造国であり、北米とアジアを結ぶ通信網の重要な拠点でもある。NECは、世界有数の海底ケーブル建設企業の一つだ。

日本には、米国、日本、インド、オーストラリアによる協力枠組み「Quad」や、ASEANなどを活用し、インド太平洋地域の海底ケーブル網の整備を進めることが求められている。

ケーブルの敷設能力を高め、中共がこの分野でさらに影響力を強めるのを防ぐ狙いがある。

ASEAN首脳会議は来月、フィリピンのマニラで開かれる見通しだ。Quad首脳会議も同時期の開催を予定しており、海底ケーブルの安全保障が主要議題の一つになるとみられている。

李平
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