【大紀元日本11月29日】北朝鮮砲撃で東アジアの緊張が高まる中、28日から米韓合同軍事演習が始まった。北朝鮮に圧力をかけようと各国が中国に期待する中、中国国営メディアは、「米韓の行動は更に平壌を刺激し、朝鮮半島の緊張は戦争にいたるほどの臨界点に迫っている」と報道した。「『即停止させなければ一切の責任をとってもらう』と、北朝鮮は米韓を強く非難している」と北朝鮮よりの立場を見せた上、米韓の演習は北朝鮮の新たな攻撃を阻止する目的だけでなく、「中国・山東半島の近くで行われる軍事演習は、中国に対する警告を意味する」との見方も示した。
一方、韓国延坪島へ砲撃し、民間人まで犠牲者を出した北の行動について、国営新華社は25日、「韓国軍は先に北朝鮮に発砲したと認めた」と題する報道で、「多数の韓国軍の幹部が24日に認めた事実によると、両国が争議している海域での軍事演習を停止するようにとの北の要求を韓国が無視して、22日に争議海域で火砲を発射した」と述べている。北朝鮮砲撃事件の責任は韓国側にある、と国際社会の認識とは正反対の立場を伝えている。
国際社会は北の挑発をけん責するのとは裏腹に、北京当局の曖昧な態度に注目した。一部の専門家は、北京政権の一連の報道姿勢から、今回の砲撃事件の裏に中国の姿が浮き彫りになっており、今回の事態は北朝鮮と中共が作りだした局面を緊張させる策略であると分析している。
朝鮮半島衝突は米中衝突
グローバルに拡張する北京政権の野心を一連の著作で著し、中国内部機密資料をリークさせた経験を持つ中国人政治作家(オーストラリア在住)の袁紅氷氏は、今回の事件における北の行動について、「実際上全て中共の政治に制御されながらやっていることだ」とコメントした。
「北朝鮮は中共から独立した存在であると国際社会は認識しているが、実際、金政権は中共の支えがなければ一日も存在できない。現在、北朝鲜の命脈は中共に掌握されており、政治、経済は言うまでもなく軍事命脈も相当握られている。対外発表も含めた北朝鲜の行うこと全ては実質上、中共政治による制御の表れだ」と同氏は指摘する。
今回の砲撃事件における中国の策略の狙いは、米国に向けられたものであると袁氏は分析している。「中共の世界覇権を狙った行動に国際社会は警戒している。最近、米国と周辺諸国が行っている一連の軍事演習もその視野にあり、この情勢が続けば、 中共が外交上一番優先にしている2012年までの台湾取り込み計画に不利益となる。そこで北朝鮮の攻撃活動を米国への圧力に利用した。これが今回の攻撃を打ち出した一つの原因だ」
また袁氏は中国のもう一つの狙いとして、米国との利益交換があると見ている。「2012年台湾作戦時、米国を関与させないようにするため、中共は3つの方面から米国にとっての核心となる国家利益の交換を行っている。一つはイラン問題、二つ目は国家テロ問題、三つ目は北朝鮮の核の脅威と核戦争威嚇問題だ。中共は現在北朝鮮に供与した核技術を公開させ、同時に延坪島を砲撃させた 。これは米国との国家核心利益の交換の比重の中で、北朝鮮の比重を増加させる狙いだ」と同氏は分析する。
一方、砲撃事件後や28日の米韓軍事演習後に中国側が繰り返した「6カ国協議を緊急再開」のメッセージについて、「関連各国を結果の会談に参加させて、北朝鮮に最終的に核能力保有の実現に時間を延ばす狙いがある」と述べる。
エスカレートの可能性小
中国問題専門家で元北京首都師範大学教授の孫延軍氏は、「南北朝鮮の軍事衝突は実際、米国と中国の間の衝突であり、広げて考えると自由世界と専制政権間の衝突である」と指摘している。
今後の局勢について、北朝鮮と中国両方とも事態のエスカレートに控えるだろうと孫氏は分析している。
「この地域に緊張局面を作り出すことは、中国と北朝鮮が抱える国內政治及び経済危機を乗り越えるために有益な策である。北朝鮮側は金正恩の後継ぎ固めに当たり、政局不隠や経済などの問題をそらす目的もあるが、国內に向けて権威を誇示する狙いもある。しかし直面する米国の軍事力はあまりにも強大であるため、これ以上はエスカレートしないだろう」と読み、「一方で中国側も現在の內憂外患の情況の下、開戦はしないだろう。今回の事件に対して、中共は必ず必死に事態収拾に乗り出すだろう。中共の戦略ははっきりしている。中共は、米国は自国経済が完全に回復するまでは戦争に入りたくないはずだと見通している」という。
また、米韓合同軍事演習後、北朝鮮が主導となる発砲のチャンスは比較的少ないと同氏は考えている。「今回の韓国の対応も誤りがあり、今後も韓国が自ら挑発することはないだろう」と見解を示す。
南北双方は本当に戦う情勢に入るについて、中国事情評論家・伍凡氏は、「北朝鮮はそのような力はないし、北京政権は全力を挙げて北朝鮮を後押しして戦うほどの実力もない」と否定的な見方を示している。
朝鮮半島危機の解決は中共解決にある
中国国内メディアは、「国際社会は、北朝鮮が主導している今回の事件の解決を中国に期待する一方、中国の北朝鮮に対する影響力は限られており、現在は進退両難の境地に立たされている」と伝えている。これについて、袁紅氷氏は「世論を混乱させる報道である。視点が根本的に間違っている」と切り捨てた。
「北京政権の支持がなければ北朝鮮政権は一週間も持たない。現在の北朝鮮の経済、政治及び軍事は、中国以外に源泉はなく、中共に完全依存する情况の下で北朝鮮が自分の意思を持つことはあり得ない」と同氏が指摘した。
コロンビア大学政治学博士で中国政情評論家の李天笑氏は、中国国内の報道から、北京政権は各方に冷静さ呼び掛けながらも、北朝鮮を責める意図は少しもないと指摘。一方、砲撃事件の当日、北朝鮮と「経済貿易合作協定」を調印したほか、中国衛生部訪問団が予定通り平壌を訪問し、高級な接待を受けたという。また同時に、朝鮮戦争で戦死した毛沢東の息子を美化するテレビドラマ「毛岸英」のDVDの寄贈式典で、「鮮血で固める友好」関係を誇示した。
「中共は表面上無辜(むこ)を装い、北朝鮮が言うことを聞かない、北朝鮮への圧力は効果がないと見せているが、実際そんなことはあり得ない」と李氏は見ている。
李氏によると、中共は経済上長期に渡って北朝鮮に90%の石油、80%の消費物資と45%の食糧及び大量のマネーを輸血しており、軍事上は核武装及びミサイル技術供与の同盟関係にある。国際社会の非難を浴びながら、中共は北朝鮮へ保護の傘を差しのべ、韓米連合に対峙しながら北朝鮮を今日まで維持させている。
「朝鮮半島危機の根本的解決は中共を解決すること」と李氏は指摘する。
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