韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は4日未明、3日夜に宣布した非常戒厳をわずか6時間で「解除する」と表明した。
韓国で戒厳令が宣布されるのは約44年ぶりで、戒厳令を宣布する理由として、野党が「北朝鮮の共産主義勢力」と連携しており、国政をマヒさせていることを挙げた。
一連の事態は韓国国内および国際社会に衝撃をもたらした。
韓国大統領府の首席秘書官らが一斉に辞意を表明した。戒厳令宣布に伴う混乱の責任を取ったとみられる。
与党「国民の力」の韓東勲代表は尹氏に対し「この悲惨な状況について直接、詳しく説明すべきだ」と訴え、「共に民主党」は戒厳令の宣布は「重大な憲法違反だ」と非難し、尹氏の即時辞任を要求した。
一連の混乱により、尹氏の求心力低下は必至だ。
CIAに務めたことがあり、韓国問題を専門とするブルース・クリングナー氏は、エポックタイムズに「国民が一致団結して批判し、野党の多数派が尹氏の弾劾を求めることから、尹氏の政治的日々は残り少なくなるだろう」と語った。
韓国情勢について、石破首相は「特段の重大な関心をもって注視している」と表明した。その上で「現時点で邦人被害の報には全く接していない」と述べ、在留邦人の安全には引き続き万全を期すと強調した。
尹氏は「北朝鮮の共産主義勢力の脅威」と指摘しているが、朝鮮半島に共産主義の影響力をもたらしているのは北朝鮮だけではない。最大の貿易相手である中共は韓国に非常に影響力を持っている。
韓国野党と中国共産党の関係
野党を率いる李在明氏は、尹氏の外交姿勢とは正反対に中共に対してより友好的な姿勢をとっている。
今年3月の選挙集会で、李氏は「なぜ中国を挑発するのか?」「中国と台湾の問題に、なぜ我々が介入しなければならないのか。台湾海峡で何が起ころうと、我々には関係がない」と述べた。中共外交部の報道官のナラティブと捉えられかねないこの発言は、韓国国内で波紋を呼んだ。
与党「国民の力」は、李氏の発言を「中国屈従」と批判。一方、中国メディアは李氏の発言を詳細に報じた。
昨年6月には、李氏は駐韓中国大使の邢海明氏と会談し、韓中関係の発展について意見を交わし、李氏は「韓中国交樹立以来31年間、両国は相互尊重と信頼の戦略的パートナーシップを構築し、北東アジアの発展と繁栄に大きな貢献をしてきた」と述べ、対中重視の姿勢を改めて鮮明にした。
中共は李氏の大統領就任を望んでいる可能性があるが、李氏が就任するためにはある問題を抱えている。
韓国のソウル中央地裁は先月15日、李氏に選挙法違反の罪で懲役1年、執行猶予2年の有罪判決を言い渡した。判決が確定すれば、李氏は国会議員を失職し、今後5年間は公職に立候補できなくなる。ほかにも、都市開発事業を巡る不正疑惑など複数の法的問題に直面している。
2022年の韓国大統領選挙では、尹氏が約25万票(0.73ポイント)差という韓国史上最小の得票差で李氏を上回って勝利した。
アメリカを拠点とする非営利団体(NPO)ディフェンス・フォーラム財団のスザンヌ・ショルテ代表は、エポックタイムズに対し「これは我々が認識しなければならない非常に深刻な問題だ」「(韓国は)前回の選挙で親共産主義候補を当選させるところだった」と語った。
「浸透していない場所はない」 各領域に浸透していく共産党
韓国は貿易と投資の面で中共に大きく依存しており、この依存が韓国経済をはじめ韓国の各領域に浸透するための潤滑油となっている。「(韓国の)経済、文化、大学、浸透していない場所はない」と匿名希望の元スパイ対策関係者はエポックタイムズに語っている。
中韓両国の都市は700近くの友好・姉妹提携を結んでおり、国家が後援する公務員交換プログラムを通じて、数百人の中国公務員が韓国で勤務することができる。また、中国大使館は、韓国の青少年が中国で1週間過ごすための費用を負担する代わりに、習近平の語録を手渡し、共産党の文化を輸出している。
昨年には、韓国の光州市は、中国からの観光客誘致を目的として、同市出身の作曲家、鄭律成(チョン・ユルソン)氏を称える「鄭律成歴史公園」の造成計画を進めた。鄭氏は、中国人民解放軍の行進曲「八路軍行進曲」や、北朝鮮の「朝鮮人民軍行進曲」を作曲した人物であり、1939年に中国共産党に加入し、朝鮮戦争時には中国共産軍の一員として活動していた。
この計画に対し、韓国の与党「国民の力」は、「共産党員を記念するものだ」として強く反発し、事業の中止を求めた。最終的に事業の見直しや中止が検討されることとなった。
中共による韓国での破壊工作は、北朝鮮からの脅威に比べるとあまり認知されていないものの、アメリカの戦略アナリストあるタラ・オー氏は「(中共の浸透は)広範囲に及びかなり深い」とエポックタイムズの姉妹メディアNTDに語っている。
数十の韓国メディアが、中共の官製メディア人民日報の記事を掲載している。韓国はまた、孔子学院の数が最も多い国でもある。孔子学院は、北京のアジェンダを推進するために中国が国費で運営する言語教育プログラムである。
韓国の国家情報院(NIS)を退官した崔洙容(チェ・スヨン)氏は、エポックタイムズのインタビューで、ソウル大学には習近平に関する著作を集めた専用の部屋があると明かした。一方で、同大学には韓国の先人たちの記念碑はない。
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