【大紀元日本12月25日】南方週末でこんな記事を読んだ。重慶市の中学生、14歳の婷婷(ティンティン)さんは11月に、親がホンダ車の購入を考えているのを聞いて猛反発し、「日本車は絶対にいやだ。買うなら国産。こんな行為は尊厳のない行為だ」と責めた。しかし、次の日になっても、親が考えを改めるどころか、お金の手配までしているのを見た婷婷さんは、親がお金のことしか考えておらず、政治や国に無関心なことをさらに咎めた。「どうして中国人は自分のお金で敵を支援しなければならないの?うちが日本車を買ったら友だちに見下される」と憤慨し、その晩、家に帰らなかったという。
婷婷さんの家出は親の国内車購入で幕引きとなったようだ。14歳、歌やアイドルに夢中な年頃で、日本文化からも少なからず影響を受けているはずなのに。この強烈な反日感情はどこから来たのだろうか。
そういえば、中国では近年よくマスコミに騒がれる言葉がある。「反華勢力」ーー中国の発展にヤキモチを焼き、中国の繁栄や「調和」を破壊しようとする世界の諸勢力を指すらしい。西洋の民主を中国に導入し、中国の「秩序」を乱そうとするアメリカなどの「内政干渉」、かつての侵略を認めず、いまだ軍国主義の野心を捨てていない日本……。世界中の至る所に「反華勢力」という「仮想敵」が存在し、現政府の導きがなければ、共産党政権のリーダーシップがなければ、中国の主権まで危ういというシナリオが作られている。
このシナリオにより、婷婷さんのような若者は、作り上げられた「仮想敵」に反感や軽蔑感、危機感を覚え、異様なナショナリズムが高じるわけだ。日中戦争から65年が過ぎた今もなお残る根強い反日感情が、この政府主導のシナリオによって、特に近年いっそう煽られている。政府はこの国民感情を利用して、自分たちしか13億人を束ねることができない、自分たちしか皆を守り「仮想敵」と戦うことができない、という虚像を作り上げ、多くの社会問題が存在している中国で、「仮想敵」という対外問題で皆の目を内部問題からそらそうとしている。
その中でも、近くて侵略の歴史のある日本はとりわけ「仮想敵」に仕立てやすいのだ。尖閣諸島問題のように何かトラブルが起きる度に、「仮想敵」をたちまち「事実敵」に変身させ、「ほら、言った通りだろう。またいじめてきただろう」といとも簡単に白黒を逆転させてしまい、いとも簡単に婷婷さんのような少女を作り出してしまうのだ。
婷婷さんも大きくなって、もっと広い視野を持つようになると、今の考えを恥ずかしく思う日が来るだろう。筆者がかつて経験したように。十数年前に日本語学校にいた時、韓国人のクラスメートが「朝鮮戦争は北朝鮮の武力攻撃から始まった」と発言したのを聞いて大きな衝撃を覚えた。今まで受けた教育とは正反対だった。それは世界一般の認識だと後に知った時は、悔しさや怒りに近い感情がわき上がった。小さい時から触れて来たあんなに感動的な教科書のストーリーも、涙を流した映画も、すべて嘘だったと知ったからだ。
婷婷さんもきっといつかは、とてつもなく大きな力で作り上げられた、とてつもなく大きな嘘に「騙された」と気付くに違いない。
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