【大紀元日本1月7日】中国山東省教育庁は、『三字経』や『弟子規』など中国に古くから伝わってきた児童向けの啓蒙教材の原文使用を禁止する通知を出した。当庁は『三字経』の論理に従って育成された学生たちは、「現代中国社会に適応することが難しくなる」と主張し、「かすを捨てて,粋を取る」方針で「不良内容」を取り除いた上で使用しなければならないとしている。
『三字経』は中国に現存する児童向けの啓蒙教材として最古のもので、影響力も最も大きい。『三字経』は、人と接するときに備えるべき「仁義礼」、社会を生き抜く「智信」など、人間としての基本を大切にすることを中心とし、幼児・児童の道徳や教養を育むための教科書として愛用されてきた。その内容は歴史、天文、地理、倫理、道徳、民間伝説に及ぶ。
さらに同著は、1990年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)より「世界児童道徳叢書」に指定された。『三字経』が児童道徳叢書の手本として、全人類の共通文化遺産となったわけだ。
今回の通知に対して、教育に従事する何(ハー)さんは、「『三字経』と『弟子規』から「不良内容」を探し出そうとしたが、見当たらない。そのような内容があるなら、はっきりと教えて欲しい」と語る。
同通知に従って、一部の学校ではすでに「不良内容の取り除き」作業が開始されているそうだ。湖北省のある小学校では、すでに再編集された『三字経』を利用している。改訂にあたって、「孟母三遷の教え」(※)にあたる「昔孟母 択鄰処」の一節が削除された。
同校の国語教研室の主任の説明によると、この文は「環境がすべてを決定する」という意味を含んでおり、「現代社会は、環境に適応する能力が必要であり、それに反するため」「不良内容」と確定したという。
ほかの一部の学校でも、自らの理解を元に、これらの古典に対する取捨選択を行っているようだ。
同通知の発表に対し、全国から賛否両論の声があがっている。
賛成派の一人として、復旦大学歴史学部の銭文忠(チェン・ウォンチュン)教授は、「子供を『弟子規』の教えのように、忠実で、信用を守る人に育ててしまったら、今の社会で生き残ることは難しい」と賛成の理由を語る。
一方、一部の親たちは「『人を欺く』より『誠実である』ほうが良い」と声高に批判する。
また、「かすを捨てて,粋を取る」方針で、人それぞれが自分なりの理解に基づいた取捨選択を行っては、いつか古典そのものが本来の姿を失ってしまうだろうとの意見もある。
さらに、『三字経』が「現代社会への適応能力を低下させる」のではなく、同著の道徳倫理が、中国共産党統治下の社会の醜さと凶悪を浮き彫りにしてしまうため、政権の「安定」維持に危機を感じたから、原文が禁止されたのだと指摘する声もあった。
中国伝統文化の思想は、豊かな内包を含んでいる。例えば「仁」は、人を人として尊重し互いに慈愛しあうことを意味する。そして「義」は、公正、道理、合理を基礎にして、自らの内心を制御支配し,道徳倫理の準則や基準に符合させるという含みがある。『三字経』や『弟子規』の教えは、古代の道徳倫理に基づく価値観を反映している。
しかし、現代の中国人は、それらの伝統的な価値観から遠ざかってしまった。中国共産党統治下の社会で価値観は変異された。「誠実」「忠実」などの美徳が失われていくことが、中国人にとって真の悲哀だ。
(※)孟子の母親が孟子のために住居を三度移したという話で、家が墓に近かった時は、孟子は葬式のまねをして遊んだ。市場の近くに引っ越すと、商売のまねをしはじめた。学校のそばに引っ越すと、祭礼や礼儀のまねをするようになったので、母親はここに住居を定めることにしたというもの。
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