【大紀元日本3月29日】東日本大震災の支援策として中国が海軍医療船の派遣を表明していたが、日本政府は26日、受け入れを見送ることを決定した。見送る理由について、防衛省は「海岸の津波被害で、横付けが難しい」と説明している一方、海外メディアは、中国政府は震災における人道救援を通じて、東シナ海での勢力拡張を目論んでいると分析し、日本政府もそれを警戒し今回の中国海軍の申し出を断ったとの見方がある。
中国国防省が15日に医療船の派遣用意があると発表し、19日に京都で行われた日中外相会談で、楊潔チ外相が提案した。共同通信社の報道によれば、外務省内では「漁船衝突事件で中断しているハイレベル交流の再開」への期待感もあったが、政府内では、日本近海における中国海軍の最近の活発な動きを警戒し、「善意の医療支援とはいえ、中国海軍を受け入れるのは時期尚早だ」との声もあるという。
日本政府が「見送る」と決定した26日当日、東シナ海中部海域で海上自衛隊の護衛艦に対して、中国のヘリコプターが近接飛行を行なった。中国ヘリは、護衛艦「いそゆき」の水平約90メートル、垂直約60メートルの距離に接近し、1周ほど周回して離れたという。
また、14日の人民解放軍機関紙の解放軍報は、中国海軍が「最近」東シナ海でミサイルの実弾射撃演習を行ったと報じている。同報道によると演習は、新型爆撃機戦隊から海上の遠距離目標に向かって爆弾を発射し、「敵艦」に命中するというシナリオで行われた。ラジオ自由アジア(RFA)のコメンテーター林保華氏は、「敵艦」は明らかに日本の軍艦という設定だと指摘した。さらに演習が行われた「最近」について、「(地震発生の)11点xun_ネ降だとしたら、日本の危機に乗じて挑発していることになり、11点xun_ネ前だとしても、14日のタイミングで報道するということは挑発の意味を帯びる」と分析した。
一方、防衛省によると、今回の地震で航空自衛隊松島基地(宮城県)で、空自F2戦闘機18機(1機約120億円)のほか、T4練習機、U125救難捜索機など10機が水没し、軍事施設や設備も損傷するなどの被害が出ている。米軍事サイトStrategyPageの17日の報道は、「地震と津波は日本の自衛隊の作戦能力を大きく弱めた」と指摘し、自衛隊員の半分以上は地震被害を受けた軍事基地の修繕と被災地住民の援助に派遣されているため、自衛隊の訓練も深刻な影響を受けているという。一方、中国は今月初めに、2010年の軍事予算は5321億元(約779億5000万ドル)で、前年比7.5%増加している上、ハイテク化に対応できる現代的な軍への転換を図っている。「一部の国は中国を自国の安全を脅かす脅威的存在だと見ている」と同報道は結んでいる。
米の有力雑誌「アトランティック」のフレーザー副編集長は、東日本大震災直後に「中国は地震から利益を得るのか」という評論で、中国が震災後に人道援助を行うことは、東アジア各国の勢力関係に影響を及ぼすと予測していた。フレーザー氏は、中国は過去1年間、国力・軍事力誇示を通じて、近隣海域での勢力拡大を狙ってきたが、皮肉なことに、これらの活動は逆効果をもたらしていると指摘。日本とアジア各国は前にも増して団結し、アジアの安定を保つアメリカの役割がいっそう重要視されるようになった。しかし、「日本が困難なこの時に日本を助けるということは、中国にとって狙っても手に入らなかった勢力拡張のいいチャンスだと、中国は気付いている」とフレーザー氏は指摘し、日本がこれらの援助を受け入れることで、中国の軍艦がもっと自由に、もっと高頻度に近隣海域に出没することになると分析した。
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