温家宝首相の公開文、中国経済の難局を露呈

2011/09/05 更新: 2011/09/05

【大紀元日本9月5日】中国の温家宝首相はこのほど、先進国の失業率の上昇と政府の債務危機などの要素が、中国国内の経済発展に影響する可能性を示唆した。中国問題の専門家は首相のこの見方を一方的であるとしながらも、中国経済が困難に直面していることを表している、と指摘した。

最新号の共産党誌「求是」が掲載した温家宝首相の「現在のマクロ経済情勢と経済活動について」と題する文章は、中国経済は国内外の複雑な環境に直面しており、不安定、不確定の要素が少なくないと記し、冒頭の観点を示した。

中国政府筋の一部の評論家は、同文章が首相個人の見解ではなくて、最高指導部の共通認識であり、政策決定の重要な綱要になると受け止めている。

中国最高指導部の貿易機関・商務部の元副部長で、いまは中国国際経済交流センターの事務総長を務める魏建国氏は首相のこの発言について、中国は経済危機にある欧州の救いの神にはなれないこと、そして、損失を避けるために中国は欧州の国債をこれ以上購入しないことなどを暗示したのではないかとの見解を示した。

輸出に大きく依存する中国経済、難局に直面

故趙紫陽元総書記のブレインの1人であった程暁農氏は、温首相のこの見解は一方的であるとしながらも、中国の現在の難局を露呈したと指摘した。

同氏の認識では、温首相は、中国経済が先進諸国の経済に大きく依存しており、自国の実力では経済発展できないという点を避けている。

最近中国政府は、米国の国債発行が多すぎて、中国の外貨準備高を押し上げ、中国経済にマイナス影響をもたらしたと非難した。このことについて、程氏は、「米国は中国に米国債の購入を強要しているわけではないので、中国の外貨準備高は自己責任である」と指摘した。

「国内の大半の国民は消費能力が弱いため、輸出で経済を引っ張ってきた。そのため外貨準備高が増え続けており、大量に米国債を購入するしかない。一方、国内市場には相応の人民元を流通させなければならないため、インフレがより深刻になる」と同氏は分析した。

香港在住の中国経済評論家・廖仕明氏は、中国は輸出主導型の経済であるため、欧米先進国の経済危機がもたらした消費の鈍りは、中国経済への影響が大きいと指摘した。「中国のような巨大な経済体は、輸出で経済を牽引するのは不可能だ。発展の初期段階では一定の成果を得られるかもしれないが…」と述べた。

輸出主導型の東アジア経済成長モデルが一定の段階に達すると、外貨準備高が増え続け、そのため最終的には他国の国債を購入することになる。「特に中国のような大きい経済体は、他国の投資家にとって、売買のタイミングを計る対象になる。こちらが購入すれば、向こうも購入し、相場を押し上げてしまう。こちらが売れば、向こうも売り、しかもより手早く売る。それにより相場が下がる。そのため、国債の収益率が悪化している」と廖氏は説明した。

「もちろん、(外貨準備高増加の対策として)中国は海外で企業を買収するのも一つの方法だが、中国政府の経営能力は国際水準には追いつかず、経済発展は主に安い労働力と低コストに頼ってきたため、企業買収で収益を上げるのも困難だ」と同氏は指摘した。

金融引締め政策でインフレ抑制 不動産市場に打撃

程暁農氏によると、中国のインフレは政府の公表データより遥かに深刻だ。中国中央銀行はインフレを抑制するため、絶えず金融引締め政策を打ち出している。最近では、預金準備金の対象範囲を、通常の預金だけでなく、新たに3種類の保証金預金も対象とする通達が出されている。この新たな政策は、実質上預金準備率を引き上げたことになる。

しかし金融引締め政策の結果、不動産市場が打撃を受けている。多くの不動産企業の資金調達が困難となり、この状況が続けば、不動産企業の倒産が増え、それにより銀行の不良債権が増加し、不動産価格が下がる、と同氏は分析した。国内報道によると、今年の中間決算で98の不動産関連上場企業の総負債額が1兆円を超しており、平均負債率は62%に達している。

中国特有の経済体制は所得分配に不平等をもたらす

廖仕明氏は、中国で民主的な政策決定が実現しないと、貧富の格差は広がり続けると指摘した。中国の今の経済政策は権力者と金持ちに有利であるため、金はますます金持ちの懐に流れて、貧しい人はますます金を稼げない。その結果、全国7~8割の国民は消費能力がとても低い。この問題を解決するには、所得の分配方法を改革しなければならず、それには現行の政治体制から着手する必要があると分析した。

程暁農氏は、「中国政府は本国の経済問題が解決できないため、責任を先進国に転嫁しようとしている。首相のこれらの見解に一見道理はあるが現状に沿っていない」との見方を示した。

(記者・高紫檀、翻訳編集・叶子)
関連特集: 日本経済