シリア内戦などにより今年欧州に流れた難民・移民の人数は第二次世界大戦以来の最高記録となり、ヨーロッパ諸国は最大の難民危機に直面している。こうした中、2日、トルコの海岸に漂着した「小さな難民」、3歳のシリア人男児の遺体の写真がネット上に公開され、難民の置かれている悲惨な現状に国際社会が強い衝撃を受けた。難民保護の責任を擦り付け合ってきた欧州諸国が相次いで受け入れを表明した。
※難民の現状
欧州にたどり着く難民・移民は2011年のシリア内戦開始後から年々激増している。欧州連合(EU)の報告書によれば、2014年難民申請の人数は62.6万人で前年の1.5倍近くに達した。その2割強はシリア人であり、アフガニスタンや、エリトリア、ナイジェリア、ソマリアなどの中東とアフリカの国々がそれに次ぐ。2015年はさらに急激に増えている。。欧州対外国境管理機関(FRONTEX)の統計によると、今年7月に流入した難民・移民ははじめて月間10万人を突破し、昨年同期比の3倍以上となった。
欧州への不法入国を試みる人々の死亡も増え続けている。国際移民委員会の発表によると、今年に入ってから、地中海で命を落とした同死者数は2000人を超えた。今年4月イタリア周辺の海上で難民船が沈没し、800人余りが亡くなったとみられる。欧州諸国は今後、海上警備を増強し、密航をあっせんする闇組織への取り締まりを強化する予定。
人数が膨大すぎることから、難民や移民の上陸地である東ヨーロッパ諸国は入国を阻止する措置を取っていた。難民が西と北の欧州諸国に向かう要所であるハンガリーは国境地帯に金網フェンスの設置を検討しているという。1日から、ハンガリー政府はドイツとオーストリアに向かう国際列車の駅を一時強制閉鎖したため、乗車予定の千人規模の難民が警官隊と対峙する事態が起きた。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、欧州諸国のほかに、トルコや、レバノン、ヨルダン、イラク、エジプトがこれまでに400万人以上のシリア難民を受け入れた。一方、難民問題専門家は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦など裕福な湾岸アラブ諸国は「同じアラブ人である移民の受け入れに消極的で、少人数しか受け入れていない」と非難を強めている。
※欧州各国の対応
国連難民高等弁務官事務所によると、難民がヨーロッパに入る玄関口にあるギリシャには今年16万人の難民が押し寄せた、昨年の年間総人数の4倍近くである。
冒頭の「小さな難民」でシリア男児の遺体写真が公開されてから、オーストリアが難民受け入れを表明したので、ハンガリー政府は自国内に滞っていた数百人の難民をバスで送り届けた。
欧州諸国の大半が難民の受け入れに腰が重いなか、もっとも積極的に取り組んでいるのは西ヨーロッパのドイツである。今年80万人を受け入れる予定で、5日およそ1万人がミュンヘンに到着した。メルケル首相は、欧州諸国は難民への道義的責任を分担すべきと呼びかけ、「ドイツは非常に我慢強く、我々にはまだ受け入れる余力がある」「欧州が難民問題を解決できなければ、未来の欧州も期待通りの発展を成し遂げられない」と一致団結の対応を訴えた。
国際社会の関心が強まる中、これまでに難民の受け入れを半ば拒否してきた英国のキャメロン首相は4日、これから数千人のシリア難民を受け入れると表明した。
※難民問題の解決策
欧州諸国はこれまでに難民問題について意見が分かれ、十分な協力体制が取れていないのが現状である。解決策を協議するため、14日、全28カ国の閣僚が参加する緊急会議が開かれる予定。
BBC中国語電子版の報道によると、内戦続きのうえ、過激派組織「イスラム国」の拠点ともなったシリアからの難民を最優先に保護すべき、との見解も強まっている。EUは難民・移民を送還できる「安全国家リスト」の作成を検討し、コソボや、セルビア、アルバニア、ボヘミア共和国、マケドニヤを編入する予定。これらの国々からの不法入国者は主に貧困が理由で、人権抑圧や戦争の被害を受けている難民ではないからという。
多くの難民問題専門家は、シリアやリビア、アフリカ、アフガニスタンの内戦と不安定情勢を収束させることが、難民問題を根本的に解決する道筋であるとして、国際社会に対してこうした分野への努力を呼びかけている。
(翻訳編集・叶子)
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