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習近平氏の政治改革と「中国の夢」(2)

2017/01/11 更新: 2017/01/11
この記事は、習近平氏の政治改革と「中国の夢」(1)の続きです。

中華文明の知恵を改革に取り込む

アメリカ軍を手本とする軍事改革と対照的に、監査機関の設立は中華文明の伝統に基づくと考えられる。西欧諸国を見渡しても、行政立法司法の三権に並ぶほど大きな権力を持った監査機関を持つ国は存在しない。会計監査委員会に相当する機関はあっても、その権能は財政面に限られている。

実は、監査機関の設置は中国の秦王朝から始まり、清王朝まで二千年にわたって存在していた。秦漢両王朝では監査機関は「御史」と呼ばれ、六朝以降には名称が「御史台」となり、明王朝と清王朝では「都察院」に改称された。

これは官吏の弾劾や監督を主な職務とし、行政の長である宰相とは独立した地位にあった。これを孫文が中華民国の政治体制に取り込み、現在に至る「五権分立」制度が成立した。五権とは立法・司法・行政・監査・考試(国家公務員の人事)を指し、ここに監査機構が含まれている。

習近平氏は孫文の功績を高く評価し、2016年11月の孫文の生誕記念において習近平氏は孫文が「偉大な国民的英雄であり、偉大な愛国主義者、中国民主革命の偉大な先導者」であると賞賛した。時事評論家・李林一氏は、習近平氏が孫文を大いに評価する背景には、孫文が打ち立てた中華民国の統治機構を手本に改革を推進したい意図があるという。

習近平氏の「中国の夢」3つのポイント

習近平氏の改革は政治体制や統治機構だけではなく、伝統文化の復興や宗教政策などにも及ぶ。特に習氏の伝統文化復興への思いは複数回の公開談話から明白に読み取れる。

2013年、中国政府高層部の情報筋によると、習近平氏の「中国の夢」には3つのポイントがある。すなわち「中国伝統文化の夢」、「中国憲政政治の夢」及び「中国の宗教の夢」だ。

しかし、江沢民派が掌握している中国共産党の宣伝部門は、習近平氏の「中国の夢」を歪曲して報じているという。大紀元が情報筋からの取材内容を先んじて報じた内容だが、昨年9月29日付のロイターの報道も、中国高層部とつながりを持つ3人の情報筋を取材して、同内容を伝えた。

李林一氏は習近平氏の改革を次のように評価する。「(習近平氏の改革の目標は)中国の伝統文化を復興し、宗教や信仰の自由を保障し、中国共産党の政治体制を変えることだ。中共が『万能の宝』として奉じてきた収容所送りや戸籍制度、司法制度、軍事制度そして一人っ子政策といった統治手段を捨て去る。この過程において中国共産党は自然と消滅し、中国は平穏に共産党のない社会へと過渡できるのではないだろうか。」

「習近平氏が中共の体制を変える過程において、中国人は中共の独裁政権がいかに醜悪で、反人類的であるかを十分見せられた。今でも習近平氏を理解しない人がいるが、それは習近平氏がまだ中国共産党体制内にいるからだ。だが習近平氏もそれほど愚かではない。習近平氏にとって共産党体制を放棄するのが最終的な目標であって、彼は共産党の罪悪をかぶるつもりは全くないのだ」。

中国共産党体制を徐々に変える

2016年11月、ポルトガルの政治家アントニオ・グレテス氏(現・国連事務総長)を北京の釣魚台国賓館で迎える中国・習近平国家主席(Jason Lee – Pool/Getty Images)
 

北京、山西、浙江で試運行中の国家の監査システムが順調ならば、中国現行憲法の改正はそう遠くはないだろうと予測されている。

10月末に開催された6中全会会報中で述べられた四つの機構(人民代表大会、政府、監査機関及び司法機関)のうち、監査機関と司法機関は現行憲法中に明文規定として存在していない。中国憲法には「審判機関」(裁判所)と「検察機関」(検察庁)しかないが、この機構は旧ソ連憲法からそのまま写してきたものだ。旧ソ連憲法は高度に中央集権された体制を構想しているが、これは今日世界中で採用されている分権的で民主的な憲法とは相いれない。

習近平氏は国家主席に就任した後、中国共産党体制に対して一連の修正を行った。特に2013年12月に労働教養制度を廃止したことは記憶に新しい。労働教養制度は旧ソ連で行われていたいわゆる「シベリア送り」と同等の意味合いを持つ。1999年から今日までの十数年間、数百万とも言われる中国国内の法輪功学習者が、裁判なしで強制収容され、労働教養制度のもと強制労働や拷問など非人道的な扱いを受けた。

2015年7月1日、習近平政権は「憲法宣誓制度」を設立し、2016年1月1日から実施した。以前、このような宣誓儀式は中国で「資本主義的」なものとして考えられ、政府職員の就任時には行われなかった。この憲法宣誓制度の宣誓文には「国家に忠誠を尽くす」、「国民に忠誠を尽くす」及び「国民の監督を受ける」等を含めているが、「共産党に忠誠を尽くす」という文言がほとんど見当たらない。これは以前であれば御法度のことであって、「党」という文言は必要不可欠だった。

習近平政権は共産党政権のもと、共産党の権力を使って脱共産党化を着実に進めている。李林一氏の言葉にもあるように、共産党の暴力的な統治手段を捨て去れば、その過程の中で共産党は自然消滅する。習近平氏の意図を理解できないのは表面的な事象にばかり注目し、水面下で確実に起こっている実質的な変化に気づかないからだろう。

著名な評論家・石濤氏は2017年を「浄化と回帰の一年」と予測した。中国国内の汚職と江沢民派と戦い、中国伝統文化の復興と道徳秩序の回帰を願う習近平氏は、新たな一年にどのような政策を打ち出し、中国をどのように変えていくか、注目したい。

(おわり)

(翻訳・揚思/編集・文亮)

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