江沢民派最後の反撃か 中国最高裁・検察の「司法解釈」(1)

2017/02/19 更新: 2017/02/19

第19回中国共産党大会が今年の秋に予定されている中、立法権を全く持たない最高人民法院最高人民検察院(以下、両高)が最近新たに「司法解釈」を行った。1月25日、両高は刑法300条の解釈として、「邪教を組織・利用し法律の実施を妨害する罪等の適用法に関する問題等の解釈(以下「解釈」)」を発表した。

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「解釈」では16種類の場合を列挙した後、それぞれに3年以上7年以下の有期懲役を適用し、罰金も課すと明示している。中国公安部が2000年と2005年にそれぞれ発表した公文書に記載されている14種の邪教リストに法輪功は含まれず、全国人民代表大会での決定及び両高の「解釈」にも法輪功が邪教だという内容は見当たらない。しかし法輪功の愛好者が迫害の実態を伝える活動をしていても、3年以上7年以下の有期懲役に処され罰金を課されたり、場合によっては無期懲役に処されるという内容となっている。

現在、習近平政権と江沢民派は激しい対立構造を成し、政権側の汚職摘発運動が江沢民派の牙城である政法システムに矛先を向けている。このような状況で「両高」のトップである周強(58)と曹建明(63)が江沢民派を擁護するために、最後の反撃に出たと見られている。

政法システムの妨害計画

政法システムとは中国独特の法執行システムであり、人民法院(裁判所)、人民検察院(検察)、司法局(監獄、弁護士の監督業務)、公安局(警察)、人民武装警察(現在は軍事委員会に隷属)を含み、司法と行政の両面性を持つ。元責任者の周永康・政法委書記は現在失脚し、無期懲役に処せられている。江沢民派はこの政法システムを掌握することで法輪功学習者を不法に拘束監禁し、刑罰に処してきた。また江沢民は武装警察をも政法委書記の管轄下に置くことで人民軍に次ぐ第二の権力を手中に収めた。武装警察は実際には準軍事組織であり銃器等の火器も所有するため、市街地では正規軍に劣らぬ戦闘力を持つと言われる。2012年には周永康が武装警察を利用して「3・19クーデター」を発動したが第38軍により武装解除されている。

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習近平政権の反腐敗運動が進展する中、江沢民派は政局をより混乱させ、習氏の行動を阻止しようとしている。去年発生した「雷洋事件(北京市民・雷洋が警察の拘留中に死亡した事件。警察関係者5名が不起訴処分となり、大きな波紋を呼んだ。)」と公安部の警察法施行など、政法システムは絶えず習近平当局と対抗し、妨害し続けている。

昨年12月1日、中国公安部公式サイトに「警察法」の修正案が発表されたが、その中で定められた「警察が武器を使用する権利」が論議を呼び起こした。12月5日、習近平当局寄りのメディア「財新網」は専門家の評論を引用し「警察の権利を拡大すると同時に、(警察に対する)管理・監督も強化しなければならない」と主張した。習近平政権が警察に対する掌握がまだ不足している状況で、警察の権力を過度に拡大すると濫用されかねず、社会の混乱を招きかねないからだ。 

中国最大の「法盲」とも称される周強・中国最高人民法院院長(中国最高人民法院公式ホームページ)

習政権の足を引っ張る文化宣伝部門

中国共産党中央宣伝部は中共中央委員会直属の機構であり、宣伝や教育を行う。劉奇葆氏が現在の部長だが、劉雲山・中央政治委員が実質上のトップだ。江沢民派の一員として劉雲山は国営メディアを利用して周強裁判長の一連の発言を大々的に宣伝した。

2017年1月14日、周強・最高人民裁判所長が全国高等裁判所長座談会に出席した際、「敵対勢力が『色の革命』を画策しようとする動きを断固防ぎ、国家政権の転覆や国家分裂の扇動等を狙い国家の安全を脅かす勢力を厳罰に処し、積極的に反スパイ特別捜査運動に参加してスパイの活動を厳重に処罰せよ」と要求する映像を中国国営メディアCCTVが放送した。

しかし周強裁判長の映像が消えた後、CCTVは突然アナウンサーの音声に切り替えて、「最高人民法院は、反邪教闘争を強化し、邪教組織犯罪に対する処罰の強度を高め、邪教が政治の安全に影響を与える突発要因とならないよう措置をとることを要求する」と報じた。この内容を報じた他のメディアは皆無に等しく、宣伝部門がでっち上げたとの見方が有力だ。

同日、中国新聞網は「周強:民主憲政、三権分立、司法の独立など、西洋の誤った思想と無慈悲に戦わなければならない」と題する記事を掲載し、周強が会議で「各裁判所がイデオロギー事業を適切に行うために備えなければならないいくつかの内容について言及した」と報じた。

江沢民派の劉雲山が掌握する文化・宣伝部門は「司法の独立を拒否」する周強の発言を大々的に宣伝したが、これは法治国家を目指す習近平氏の足を引っ張るに等しい。司法の独立が確保できなければ三権分立を確立できず、独裁国家と違いはない。

中国の歩むべき法治国家への道

時代の流れと逆行する周強の発言は民間の非難を買い、国際社会の注目を浴びた。賀衛方、張千帆などの法学者たちは、「周強は歴史と逆行しており、国と国民を害する元凶である」と非難した。中国学術界と法曹界は共同で署名し周強の退陣を要求した。

習近平氏は「新情勢下の政治法律隊伍の建設に関する意見(以下、意見)」でもってけん制した。「意見」では、司法における汚職腐敗を厳しく摘発し、職権乱用と贈収賄、違法行為及び司法ブローカー行為を調査し、厳に処理しなければならないと強調した。習近平氏はスイスで外遊中にもかかわらずすぐに政法システムを再粛清するという信号を送った。

(続く)江沢民派最後の反撃か 中国最高裁・検察の「司法解釈」(2)

(翻訳・齊潤、編集・文亮)

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