[ニューヨーク/ロンドン/カラカス 20日 ロイター] – ベネズエラ政府が対外債務再編を表明した当初は、多数の投資家の撤退につながった可能性がある。しかし一部の投資ファンドはこうした状況が投資の好機に結び付くと見込んでポートフォリオを維持し、買い増す例さえ見られる。
マドゥロ大統領が今月、約600億ドルの債務を再編する方針を発表すると債権者は動揺した。ただ大統領は当面は債務返済を続けるとも約束し、高い利回り狙いなどでベネズエラ債に投資してきた人はいくらかの安心感も得られた。またアルゼンチン債の一部投資家グループが長年にわたる訴訟の末に昨年勝ち取ったような「大きな思いがけない収入」を目当てに積極的なポジションを構築する向きもある。
カラカスで先週開かれた債権者との会合で、ベネズエラ政府は債務問題に関する戦略を明らかにしなかった。
一方で債権者は電話会議やカラカスのホテルでの会合で、ベネズエラが債務不履行(デフォルト)に陥った場合に備えて債権者グループの結成について話し合った。
こうした中、グレイロック・キャピタルのディエゴ・フェルロ共同最高投資責任者(CIO)は過去数週間でベネズエラ政府と国営石油会社PDVSAが発行した債券を購入したと明らかにした。特にベネズエラの2027年償還債を優先的に買ったという。
ベネズエラの2027年償還債とPDVSAが発行したすべての債券には共通の特徴があり、債権者の75%が再編に合意すれば全債権者に再編を受け入れることを義務付ける集団行動条項(CACS)が盛り込まれていない。
CACSの条件がなければ、2001年にアルゼンチンが債務不履行に陥った後に起きたように、少数の債権者がより有利な条件を求めて債務再編に合意せずにホールドアウトする余地が生じる。
<アルゼンチンの再現>
破綻した資産への投資を手掛けるエリオット・マネジメントやオーレリアス・キャピタル・マネジメントなどのファンドは昨年、アルゼンチン新政権との合意で何十億ドルもの償還金を手に入れた。
オンスロー・キャピタル・マネジメントの創設者ニコラス・ガルペリン氏はベネズエラの対外債務について「基本的には、アルゼンチンが2001年から05年にかけて行った形と最終的にそれほど違わない再編になると考えている」と述べた。
ガルペリン氏によると、オンスローは額面1ドルのベネズエラ債を0.20ドル程度で購入して利払いを受け、最終的には転売で利益を確保することを目指している。
同氏は、PDVSAとベネズエラ国債の双方を2─3年保有して売却する戦略を思い描いているという。
だがアルゼンチン型の決着は、短期間では実質的に不可能だ。
米トランプ政権がベネズエラに科した制裁により、米国の銀行はベネズエラが新たに発行した債券を購入することができない。
また投資家は特定のベネズエラ高官を対象にした制裁により、ベネズエラの対外債務協議委員会の主要メンバーであるエルアイサミ副大統領やゼルパ経済相と交渉の席に着くことさえ禁止されている。
このため制裁が何年にもわたり債務再編の成功を妨げる可能性があり、長期投資には暗雲が垂れ込めている。特に野党勢力が打倒マドゥロ政権で前進しなければ、先行きは一段と不透明になる。
それでも投資家は短期的な高リターンに引き寄せられ続けている。
2027年償還のベネズエラ国債は利払いだけで年間34%のリターンが得られ、収益率は10年物米国債の15倍となる。
多数の関係者は、ベネズエラが最終的には返済を停止して債権者が訴訟に踏み切ることになると考えているが、投資家は今のところ、アルゼンチン型の法廷闘争を開始するよりも目先の高リターンを手にする方に興味があるようだ。
(Dion Rabouin、Maiya Keidan、Corina Pons記者)
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