カナダのトルドー首相が辞任 後任選びに注目集まる

2025/01/07 更新: 2025/01/07

1月6日、カナダのトルドー首相は、自由党党首の辞任を表明した。ただし、新党首が選出されるまでは首相職を続ける意向である。同時に、自由党の党首選出まで議会の休会を延長することを決定した。この発表を受け、次期党首が誰になるのかに注目が集まっている。

トルドー氏は同日、官邸であるリドー・コテージ前で記者会見を行い、この決定を正式に発表した。会見で、党内に「修復困難な内紛」があると指摘し、自由党が次期党首を選出した時点で、党首および首相の職を辞する意向を明らかにした。

この発表を受け、金融市場は敏感に反応した。6日午後4時30分以降、カナダドルは米ドルに対して0.82%上昇し、1カナダドル=0.6978米ドルとなった。また、カナダ国債の利回りもわずかに上昇した。マッコーリー・グループは報告書で、トルドー氏の辞任がカナダドルの見通しを支える可能性があると述べた。現在、カナダドルは米ドルに対して過去9年間で最低水準となっている。

議会の休会延長

同日午前、トルドー氏はカナダ総督のメアリー・サイモン氏と会談し、議会の休会を今年3月24日まで延長するよう要請し、承認された。これにより、自由党が新党首を選出する前に、反対党が不信任案を提出して総選挙を求める動きを回避した形となる。

議会は当初、1月27日に再開する予定だったが、今回の休会決定により、審議中の法案は一時棚上げされる。次回の議会再開時には、自由党は新党首を選出している見込みであり、最初に審議する予定の政府施政方針演説は事実上の信任投票となる。

トルドー氏の後任を巡る動き

規定によれば、カナダは今年10月20日までに総選挙を実施する必要がある。長年続く低い支持率に直面する中、自由党議員たちは新たな党首が党勢を一新することを期待している。自由党は2か月以内に党首選挙を実施する予定だが、議会の休会期間が限られており、時間的な余裕は少ない。

自由党の議員らは、6日午後に開催した特別オンライン説明会に招集され、党の規約や党首選挙における党内コアグループの役割について話し合った。

トルドー氏の辞任を受け、自由党の党首を巡る争いが激化する見通しだ。有力候補として元副首相のクリスティア・フリーランド氏や他の閣僚たちの名前が挙げられている。アンガス・リード社による世論調査では、フリーランド氏が自由党の厳しい支持率を最大限引き上げる可能性はあるが、保守党を上回るほどではないとする。

また、一部の政治評論家は、元カナダ銀行総裁のマーク・カーニー氏が党首争いに加わると予想している。政府高官によると、フリーランド氏が辞任した際、トルドー氏はカーニー氏が財務相に就任すると伝えたが、最終的にカーニー氏は辞退した。

一方、自由党のベテラン議員で現財務相のドミニク・ルブラン氏が次期選挙で党を率いるべきだとの声もある。

反対党は早期総選挙要求

トルドー氏の辞任発表を受け、保守党のピエール・ポワリエブレ党首は、自由党が党首を交代しても実質的な変化は期待できないと述べた。

同氏は、「過去9年間、自由党議員はトルドー氏を支持してきた。それは彼らも現状の責任を負っているということだ」と指摘した。

また、ケベック党のイブ・フランソワ・ブランシェ氏は、自由党が短期間で本質的な変化を遂げるのは不可能だとし、早期総選挙を要求した。

さらに、新民主党のジャグミート・シン党首も、「自由党を誰が率いるにせよ、新民主党は現政権に反対票を投じ、国民が選択できる総選挙を実施する必要がある」と明言した。

トルドー政権10年 その功罪

トルドー氏は約10年間首相を務めたが、近年は支持率が低迷している。その理由として以下が挙げられる。

  • 債務の倍増

カナダ納税者連盟(CTF)のデータによると、2025年初頭の連邦債務は1.2兆カナダドル(約132兆円)に達しており、2015年の6120億カナダドルから倍増している。

  • 気候変動政策の効果限定的

トルドー政権は気候政策に積極的に取り組んだが、温室効果ガス排出量の改善は限定的だった。2015年のカナダの一人当たり排出量は20.9トンで、2022年には18.2トンに減少したが、依然として目標に達していない。

  • 薬物過剰摂取による死亡者数の急増

カナダ医師会の報告によると、2015年には薬物過剰摂取で死亡する人は1日約5人だったが、2024年上半期には1日平均21人に増加した。2024年の最初の6か月間だけで、3787人のカナダ人がオピオイド中毒で死亡した。

  • 犯罪率の上昇

カナダ統計局によれば、2023年の殺人件数は778件で、2014年の516件から大幅に増加している。また、銃犯罪も増加傾向にある。2014年にはカナダ人10万人当たり14件の拳銃犯罪があった。 2022 年までに、その数は 19.3 人に増えた。

トルドー首相の辞任は時代の終わりを告げるが、自由党が党首交代によって国民の支持を取り戻せるかどうかはまだ分からない。

 

周行
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