韓国メディアのTV朝鮮は12月17日、日本政府が朝鮮半島有事の際、在韓邦人の避難のために烏山・米軍基地の使用許可を韓国政府に申し入れたと報じた。韓国側は、日韓の歴史的背景のほか「日米韓が軍事同盟に発展しない」との中韓合意により、自衛隊機の受け入れには難色を示している。
報道によると、長嶺安政・在韓日本大使が韓国政府に、半島有事の際にはソウル南40キロメートルに位置する烏山・米軍基地の使用を申請したという。別の協議でも、日本当局者は韓国軍と米軍に同様の意志を伝えた。
在韓日本大使館などによると、これまで退避時の輸送手段は民間航空機を想定するとしていた。しかし、12月17日付の産経新聞によると、政府は自衛隊の陸海空のヘリや航空機、艦艇を使用して、長崎県・対馬と韓国・釜山の間で輸送する計画を用意しているという。
韓国南部に位置する釜山は、対馬から約80キロ。高速船なら片道1時間の距離だ。
韓国内の邦人は約3万8000人だが、観光客などを含めれば5万人以上にのぼり、多くは北朝鮮との軍事境界線から約30キロ離れた首都ソウル周辺に滞在すると推計されている。
自衛隊受け入れに否定的な韓国
朝鮮半島有事において、日韓の協調に不穏さを感じさせる報道がある。
朝日新聞12月16日付によると、北朝鮮が11月29日に新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15号」を発射した際、日本は韓国との防衛相会談を試みたものの、韓国側が拒否したという。
同紙は「日米韓協力が軍事同盟に発展しないよう求める中国側に配慮したとみられる」との推測を示した。
日本政府も、植民地時代の歴史から、自衛隊が領域内に入ることに韓国が強く抵抗することを認識している。産経新聞10月25日付によると、在韓非戦闘員の退避活動は、日本が主要な中継地点になり、米国やオーストラリア、カナダを中心とした有志連合が連携する。
同紙は「自衛隊を有志連合の一角と位置づける方が、(韓国領域に入るのに)同意を得やすいと判断している」と複数の政府関係者の話を伝えている。また、有志連合は軍事作戦とは異なる退避活動という人道的措置であり、国連決議で採択を求めることも視野に入れるという。
中韓合意「3つのノー」で自衛隊受け入れ論さらに困難に
自衛隊受け入れ論は、たとえ緊急時であっても、韓国にとって敏感な話題のひとつだ。
2015年、当時の黄教安・韓国首相が半島有事における自衛隊の受け入れについて「基本的には認められないが、状況を考慮し韓国が同意すれば可能」と受け入れ論に触れたことで、野党や韓国メディアから一斉非難を浴びたという過去がある。
半島有事における自衛隊の受け入れ拒否ついて、最近、日本にとって不穏な要素がまた一つ加わった。11月に中韓が合意した安全保障政策に関する「3つのノー(三不)」だ。
TV朝鮮の報道でも、自衛隊の烏山基地利用について、韓国政府は「困難な立場にある」と報じている。
中韓合意の内容は、日米韓軍事同盟の放棄を骨子としている。▼1THAADを追加配備しない▼2米国のミサイル防衛(MD)に参加しない▼3日米韓の安保協力を軍事同盟に発展させない、というものだ。
自衛隊の韓国入りは、中国側からは▼3の合意に則していないと批判材料にされかねない。
中国当局によるTHAADを巡る報復措置で受けた韓国の経済的損失は、軽くない。韓国メディアの亜洲経済12月14日付によると、今年の韓国のGDPは5兆ウォン(約303億元)減少する見通しだという。韓国法務部の出入国・外国人政策本部が10月に発表では、今年1~8月に韓国に入国した中国人は延べ302万2590人で、前年同期(574万3294人)の52.6%にまで減少した。
聯合ニュース11月5日付では、文大統領が9月に米ニューヨークで行われた韓米日首脳会談で、安倍首相とトランプ大統領に対して「米国は韓国の同盟だが日本は同盟ではない」と明言していたと報じた。2カ月遅れの3カ国会談の内容を明かすのは、先の中韓合意を強調する目的があるとみられる。
元防衛大臣・拓殖大学総長の森本敏氏は4月、有事の際に韓国が自衛隊を受け入れるケースは2つあると述べた。テレビ番組「よるバズ!」に出演した森本氏によると、1つは、韓国人を日本に避難させる場合。もう1つは、日本政府が安全保障関連法で定められた日本の平和と安全に重要な影響を与える『重要影響事態』を宣言し、アメリカから、人道的措置として自衛隊の受け入れを求めることだとした。
(編集・佐渡道世)
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