[ニューヨーク/ロンドン/シンガポール 8日 ロイター] – 米政府が原油輸出を解禁してから約2年で、同国産原油を満載したタンカーが、中国やインドといった大口消費国からトーゴなどの小さな国まで世界30カ国以上に寄港するようになった。
米国のシェールオイルが大量供給されたことで、原油の国際価格は下がり、石油輸出国機構(OPEC)の影響力が弱まるとともに、OPEC加盟国の多くが市場シェアを奪われつつある。
シェール革命以前の2005年、米国の原油純輸入量は日量1250万バレルだったが、今やたった400万バレルだ。
米国勢がアジアや欧州で新たな大口顧客を獲得していることは、サウジアラビアとロシアという米国並みの生産力を持つ2国にとっても脅威となっている。
米国からの原油輸出量は現在日量150万─200万バレル。2022年までにはおよそ400万バレルまで拡大する可能性がある。
輸出の大半は中国向けで、昨年11月以降カナダを抜いて米国産原油の最大の買い手になった。
その中国勢の中で購入量が最も大きいのは、中国石油化工(シノペック)の原油取引部門の中国国際石油化工連合(ユニペック)だ。ユニペックのチェン・ボー社長はロイターに、アジアでの販売拡大や欧州などでの新規顧客開拓のため、今年の米国産輸入は倍増して日量30万バレルになるとの見通しを示した。
ユニペックは、米国のパイプラインやターミナル運営会社との長期供給契約締結を検討しているほか、米国の輸出インフラ改善に関係する企業と提携する可能性もある。
チェン氏は「米国産原油のアジアへの流入は、国際的な石油取引における大きなトレンドだ」と語った。
2010年に日量550万バレルだった米国の原油生産量は、テキサスやノースダコタのシェール開発が急ピッチで進んだことを受け、17年には1000万バレルと1970年代に記録した過去最高水準に近づいた。サウジにほぼ並び、1090万バレルと世界最大のロシアにも肉薄している。
商品取引大手ガンバー・グループのチーフエコノミスト、デービッド・ファイフ氏は、米国産原油生産は今年末まで日量約50万─60万バレル増加するとの見方が大勢だと話した。米エネルギー省の見通しはもっと強気で、年末までに120万バレル増えて生産量は1100万バレルに達するだろうという。
ファイフ氏は「増産分の多くは輸出に回される公算が大きい」と予想した。
米国内市場でも、外国産原油が押され気味だ。06年のピーク時が日量1060万バレルだった米国の原油輸入量は足元で760万バレルまで減少。輸入量に占めるOPEC産原油のシェアは50%強からおよそ37%に低下した。
最も打撃を受けたのはサウジとナイジェリア、アンゴラで、昨年後半に米国がサウジから輸入した原油は平均日量70万9000バレルと1987年以降の最低水準になった。ピークは03年の173万バレル。
米国産原油は、世界第3位の原油輸入国インドにも流入している。インドは原油調達先を多様化するため、昨年10月に初めて米国産原油を輸入した。トムソン・ロイターが関係者から集めた海運や船舶航行のデータによると、米国産原油の昨年の総購入量は日量800万バレルだった。
欧州に目を向けると、昨年11月時点でフランス向けの原油輸出では米国がナイジェリアやリビア、イラン、北海を上回って第5位に食い込んだことが関税統計で確認された。16年11月には、米国はまだトップ10にさえ入っていなかった。
一方、中国の関税統計に基づくと同国は第4・四半期にナイジェリアからの原油輸入を停止した。また昨年の中国の原油輸入は全体で12%増えたが、サウジからの輸入の伸びは2.3%にとどまっている。
ペトロマトリックスのマネジングディレクター、オリビエ・ジェイコブ氏は「米国勢がOPEC加盟国から本格的に市場シェアを奪取している」と指摘した。
(Catherine Ngai、Libby George、Florence Tan記者)
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