中国 ますます複雑化している

金委員長3回目の訪中 中国、対北影響力の健在ぶりを誇示

2018/06/20 更新: 2018/06/20

北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長は19日、訪中して中国の習近平国家主席と会談を行った。金委員長は今回の訪中で、習主席に12日の米朝首脳会談について説明を行った。

金委員長は3月、5月に続き、3回目の中国訪問となった。中国当局は、北朝鮮の「後ろ盾」として引き続き朝鮮半島の非核化に積極的に関与し、同国への影響力を維持していくと誇示したとみられる。

金委員長の再々訪中の意味

中国政府系メディアの報道によると、習近平国家主席は会談で、「中国の党と政府は、中朝の友好と協力を重視している。国際および地域の情勢がどう変化しても、中国の党と政府は、中朝関係を発展させる立場は変わらない」と述べた。

また、朝鮮半島の非核化問題に関して、「中国側は過去と同様に建設的な役割を果たしていく」とした。北朝鮮の核問題に関して、中国当局が今後も主導していく姿勢を示した。

一方、金委員長は、米朝首脳会談について、「(米朝)双方が、首脳会談で一致した合意の一歩ずつを履行すれば、朝鮮半島の非核化は新たな重要局面を迎える」と述べ、段階的な非核化を再び強調した。

過去3カ月の間に金委員長は3回も訪中した。一部の専門家は、中国当局が依然として背後で、北朝鮮を操り、米国、韓国などを翻弄(ほんろう)していると指摘する。

20日付の米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は、米朝首脳会談で得られた結果は、中国の従来の要求に沿った内容だとの見方を示した。

中国は、これまで「北朝鮮が核実験を中止する代わりに、米韓両軍の共同軍事演習も中止すべきだ」と要求してきた。金委員長が今回訪中の前日に、米側は今年8月開催予定の米韓共同軍事演習を取りやめると発表した。

中国は、金正恩委員長の再々の訪中を通じて、北朝鮮の盟友かつ支援者として、当局が今なお東アジア勢力図の中心にいると強調する狙いだ。

中国系米国人作家のゴードン・チャン氏はTwitterで、「中国は、トランプ大統領に対して、北朝鮮が相変わらず北京の影響下にあると見せたいだろう」と書きこんだ。

「われわれ(米国)にとって、北朝鮮問題は実に存在しない。中国問題があるのみだ」と、チャン氏は指摘した。

中国側が異例に事前報道

トランプ米大統領が18日、2000億ドル相当の中国製品に対して10%の追加関税を課すと明らかにした。その直後、中国当局が金委員長の訪中について発表した。

これまで、中国当局は、金委員長の訪問活動が終了後に、北朝鮮指導者の訪中を公表してきた。今回、事前に報道したことは異例だ。

中国外交部(外務省)の耿爽報道官は19日の記者会見で、金委員長の訪中を事前に公表した理由について明言を避けた。「それなりの理由があるだろう。情報公開の時期について、われわれは、訪問活動の具体的な状況に基づいて、具体的な段取りを行う」と言うにとどまった。

中国と北朝鮮の打算

 

VOAによると、戦略国際問題研究所(CSIS)上級研究員、ボーグレイザー氏は、訪中した金正恩委員長と習近平国家主席らは、今後の対米戦略を議論したと推測する。中国当局にとって、将来朝鮮半島問題をめぐるいかなる交渉にも中国の主導権の保障と、駐韓米軍の撤退の要求が、最優先事項となる。

一方、北朝鮮は、国連安保理の経済制裁の緩和を求めるのに中国側の支持を必要としている。

ロシアはすでに、北朝鮮に対する経済制裁をすべて解除すべきだと主張した。中国側はロシアの主張に同調している。

耿爽報道官は記者会見で、国連安保理の枠組み外の独自制裁を一貫して認めないと述べた。

しかし、ポンペオ米国務長官はこれまで、北朝鮮の非核化プロセスが完了するまで、米は対北の制裁措置を継続していくと繰り返し強調した。

北をめぐる米中の駆け引き

中国北京市にあるシンクタンク、清華-カーネギーグローバル政策センターの趙通研究員はこのほど、中国当局が地政学的に、北朝鮮が非常に重要であることを認識していると指摘した。「対米関係と比べると、核兵器を持つ北朝鮮と密接な関係を確保することがより重要だ。

米朝首脳会談で、トランプ米大統領が金正恩委員長に「直通の電話番号を渡した」ことに、中国側が驚いたという。

中国は、米朝首脳会談の前から、「蚊帳の外」に置かれることを懸念していた。「仲間外れ」を不安視した中国が、米朝首脳会談の前に、北朝鮮との関係改善を図り金正恩氏の2回目の訪中を促した、との見方もある。

VOAによると、一部の専門家が、米中が北朝鮮を取り込もうとする駆け引きがこれからも続くと予測する。「こうした動きは北朝鮮問題を複雑化させている」

(翻訳編集・張哲)

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