中国インターネット上ではこのほど、日本にも進出している中国ゲノム解析・バイオ大手の華大基因科技有限公司(BGI)に関する告発が注目されている。BGIは、妊婦の血液を検査し、赤ちゃんがダウン症かどうかがわかる新型出生前診断(NIPT)のサービスを提供している。しかし、同社の検査ミスで異常の疑いがある胎児の中に、健常胎児も含まれていると指摘した。
中国版Twitter「微博」では23日、ユーザーの王徳明氏が実名でBGIの出生前診断について投稿した。王氏は、「BGIのNIPT陽性率は1/164(0.6%)に対して、中国国家衛生・計画生育委員会のNIPT統計データでは、ダウン症候群に関する陽性率は1/800~1/1000(0.125%から0.1%)と定めている。BGIの基準は国家の5倍以上」と書き込んだ。
同社の発表によると、17年末まで、全国で280万件のNIPTを実施したという。同氏によると、検査を受けた約1万5000人の健常胎児が障害の恐れがあるとして中絶された。また、「100人を誤殺しても、一人(の異常胎児)も漏らさないのがBGIの方針だ。まさに殺人だ」と強く非難した。
また、王徳明氏は、同社が生産日、品質合格証、生産メーカーの3点が記載されていないDNA血液採取用FTAカード300万枚を不正に使っていると暴露した。そのうちの一部はすでに、提携関係にある医療施設で利用されたという。王氏は、7月に起きた不正ワクチン問題と同様に「深刻な安全問題」に発展すると指摘した。
中国メディアによると、告発者の王徳明氏は江蘇省南京市にある南京昌健誉嘉健康管理会社の社長だ。同社は、中国国家基因庫(遺伝子バンク)の戦略パートナ―で、遺伝子検査や細胞保存などの事業を行っている。同社は過去にBGIと業務提携していたが、事業をめぐって対立し訴訟に発展した。
BGIは1999年に中国北京市で創設されてまもなく、中国を代表して、米政府が主導した国際プロジェクトのヒトゲノム計画に参加し、全体の1%(中国部分)の解読を担当し、創業当初から大きく活躍した。2017年に深セン証券取引所に上場も果たした。
また、同社は07年、本社を北京から広東省深セン市に移転した。10年、中国政策性銀行である国家開発銀行から15億ドルの融資を受け、米イルミナ社が製造する高速シーケンサー(遺伝子配列解析装置)を128台購入したことで、世界最大のゲノム解析企業に急成長した。同年末、BGIは日本の兵庫県神戸市で日本法人を設立した。同ウェブサイトによると、日本ではシーケンス解析やジェノタイピング(遺伝子型判定)などのサービスを提供している。
中国インターネット上で今年7月中旬にも、BGIのNIPT技術を疑問視するセルフメディアの記事で市民の注目を浴びた。同記事によると、BGIのNIPTを受けた妊婦らは、胎児に異常がないと診断されたが、染色体異常の子供を出産した。
中国メディアの報道によると、BGIはその後、同NIPT検査の精度について、「同NIPT検査の対象疾患である13トリソミー、18トリソミー、21トリソミーの検出率は、95%、85%と70%以上である」とこれまで主張してきた100%の高精度ではないことを認めた。さらに、「偽陽性と偽陰性があった」とした。
BGIが公表した2017年年間報告書でも、検査の検出率と特異度はそれぞれ「99%を上回った」としている。
同社がNIPT検査の精度を過剰に宣伝したとの見方が広がり、中国株式市場では、7月末までの2週間でBGIの株価が約20%急落した。
(翻訳編集・張哲)
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