中国共産党(中共)は、人工知能(AI)をDNA編集技術に応用することで、戦略的優位性を獲得しているーー。英国のイアン・ダンカン・スミス下院議員は、中共が国際社会に対してかつてない権力を行使する可能性があるとして、戦略的な対策を講じる必要性を訴えた。
スミス議員は28日、米保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」の講演で「中国(共産党)は現在、ゲノムにAIを適用することに関して先行している。これは集団国家安全保障にとって重大な脅威となっている」と述べた。
「もし中国がAIとゲノミクスを支配すれば、世界の医療を含む主要産業に対して、前例のない影響力を行使することになるだろう」
さらにダンカン・スミス氏は、中共がヘルスケア製品を通じて密かに世界中の人々からDNAを採取していることに触れ、英国をはじめとする民主主義国家が戦略的な対策を講じなければ、第二次世界大戦以来、類を見ない形で世界の安全保障が脅かされる可能性があると警鐘を鳴らした。
「中国は目論んだ計画や戦略に基づいて行動している。偶然なことはない。私たちが今直面している脅威は、冷戦時代や1930年代の脅威に匹敵するのだ」
世界中の女性と胎児のDNAを採取
ロイター通信は2021年、中国ゲノム解析大手の華大基因(BGI)が出生前検査で収集した遺伝子データを中共当局に提出する恐れがあると報じた。
BGIは中共軍と共同開発した出生前検査「NIFTY」を通して、ダウン症やその他の遺伝的疾患をスクリーニングするとしているが、収集されたDNAデータは中国本土のサーバーに保存され、中共はいつでもアクセスが可能だという。
現在5か国の保健規制当局が、この出生前検査を調査している。スミス氏は「この検査によって中共は世界中の母親と胎児のゲノムデータにアクセスすることが可能になった」と危機感をあらわにした。
BGIは、ウイグル人からDNAを強制的に採取するなど、他の人権侵害にも関与している。米商務省は3月、中国の軍事プログラムや少数民族の弾圧に関与した疑いがあるとしてBGI子会社3社をブラックリストに追加した。
「新たな枢軸」
スミス氏は、この脅威は中国主導のイラン、北朝鮮、ロシアを含む「全体主義国家の新たな枢軸」というより大きな文脈の中で理解する必要があると述べた。
同氏は、この4か国は「自由世界への脅威の増大」をもたらし、ミャンマー(ビルマ)やシリアといった国々と連携を強め、権威主義的な未来像を広める動きを強めていると指摘した。
中共がAIとゲノミクスの両分野で世界のリーダーになりつつあることを踏まえると、この新しい軸が「人類存亡の危機」をもたらすことを国際社会が認識する必要があると強調。
「ウクライナでの戦争も、ハマス・イスラエル戦争も、台湾を侵略するという中国のあからさまな脅威にも一貫性がある」
「これらの脅威は、この軸を通じて不可避的につながっている。これらの脅威の一つを無視することは、他の脅威の危険性を倍増させることになる」と述べた。
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