日米豪印 フィジー港湾整備で協力 中共の南太平洋進出に対抗

2026/06/02 更新: 2026/06/02

アメリカ、オーストラリア、インド、日本でつくる「日米豪印戦略対話(Quad)」の4か国外相はこのほど、南太平洋の島国フィジーで重要港湾の整備に協力する計画を発表した。事業規模は最大18億ドルに上る。

専門家は、今回の動きについて、Quadが対話の枠組みにとどまらず、集団安全保障の仕組みへと発展しつつあることを示すものだと指摘している。中共による南太平洋での戦略的拡張に対し、4カ国が具体的な行動で対抗し始めた形だ。また、米中の競争が第一列島線の外側にある海洋空間へ広がっていることも浮き彫りになった。

Quad外相会合、フィジー港湾整備で一致

5月26日、4か国はインドのニューデリーで外相会合を開いた。会合後、フィジーで「モデルケース」となる港湾整備事業を共同で進めると発表した。

ルビオ米国務長官は、「港湾インフラの分野で協力を進める。特に、太平洋島しょ国の港湾処理能力の不足に対応するため、フィジーとの協力計画を発表した」と述べた。

ルビオ氏は、この計画について、Quadが「質が高く、強靭なインフラを提供する能力」を持つことを示す具体例だと強調した。そのうえで、「われわれは真の成果と実質的な進展を示し始めている。このパートナーシップに深く関与している。これは、アメリカの世界戦略における核心であり、基盤でもある」と述べた。

報道によると、フィジー港湾公社のスレシュ・プラサド暫定最高経営責任者は、今回の発表に驚きを示した。同氏は「Quadの計画であるなら、スバ港の大規模開発事業である可能性が高い」と語った。

フィジー港湾公社は、フィジー政府が41%を出資している。同社はこれまでに、米国側と1億8100万ドル規模の港湾改修案や、18億2000万ドル規模のスバ港移転計画について協議していた。

対話枠組みから集団安全保障へ

フィジーでの港湾整備は、Quad発足以来、初の共同インフラ事業となる。このため、国際社会からも注目を集めている。

スバはフィジーの首都であり、最大都市である。スバ港は同国最大の港で、フィジー海軍基地も置かれている。南太平洋の重要な航路拠点でもあり、「南太平洋の十字路」と呼ばれている。

現在、約100隻の中国漁船がスバ港を拠点に、太平洋海域で操業している。中共海軍の宇宙・ミサイル追跡測量船「遠望7号」も、過去に同港へ寄港したことがある。

台湾国防戦略資源研究所の蘇紫雲所長は大紀元に対し、今回のQuad外相会合は安全保障枠組みの「さらなる深化」だと述べた。対話の枠組みを、具体的な案件へ落とし込み始めたものだという。

蘇氏は「港湾問題に具体化されたことで、北京に対する実質的なけん制が示された。特に第一列島線の外側、第二列島線において、中共がこうした重要インフラの支配権を握ることを防ぐ意味がある」と語った。

台湾国防安全研究院の鍾志東若手研究員も、今回の動きはQuadの「役割の格上げ」だと見る。鍾氏は大紀元に対し、スバ港の整備計画に共同で関与することで、Quadは安全保障対話の枠組みから「集団安全保障メカニズムへ向かっている」と述べた。

鍾氏によると、中共は南太平洋で積極的に影響力を広げ、第一列島線の封鎖を突破しようとしている。これは、中共の対外的な脅威を反映しており、「アメリカがインド太平洋で築いてきた既存の優位に挑戦するもの」だという。

フィジーはオーストラリアに比較的近く、両国間の直線距離はおよそ2700〜4000キロである。鍾氏は、オーストラリアも直接的な脅威を感じていると指摘した。

鍾氏は「この段階でQuadは集団行動を取り、北京が第一列島線を突破し、太平洋に影響力を広げようとする企てに共同で対抗している。これは、Quadが中共を戦略的競争相手と見なしていることを示している」と述べた。

鍾氏はまた、今回の動きはインド太平洋戦略全体に重要な意味を持つと指摘した。「その影響は、南太平洋の島国フィジーにあるスバ港の事例にとどまらない。インド太平洋地域全体に、極めて重要な戦略的意味を持つ」としている。

南太平洋で広がる中共の影響力

報道によると、フィジーのランブカ首相は2023年、フィジー港湾の再開発と造船業の振興を目的に、習近平中共党首に経済支援を求めた。

現在、フィジーは中共の国有銀行に約1億900万ドルの債務を抱えている。これは主に、10年前に中共がフィジーで進めた道路建設やその他のインフラ事業に由来する。

鍾氏は、中共とフィジーの間には安全保障協定や軍事協定はないと指摘する。そのため中共は、軍民融合のグレーゾーンを利用し、「一帯一路」事業などを通じて、南太平洋島しょ国への影響力拡大に伴う警戒感を弱めようとしているという。

鍾氏は、中共があらゆる活動を政治目的に結びつける体制であることから、遠洋漁船が必要に応じて「海上民兵化」する可能性があると見る。

同氏は「中共は、民間船団、港湾インフラ、海上法執行、経済援助を組み合わせ、南太平洋島しょ国での戦略的存在感を徐々に拡大している」と述べた。

さらに深刻な例として、南太平洋のソロモン諸島がある。ソロモン諸島は2019年に台湾と断交し、中共と国交を結んだ。その後、2022年には中共と「二国間安全保障協力協定」を締結し、中共が警察や軍を派遣して社会秩序の維持を支援することを認めた。2023年には、双方が「警務協力に関する覚書」に署名し、警察分野での協力をさらに拡大した。

中共はソロモン諸島に対し、「楓橋経験」と呼ばれる社会管理モデルも輸出している。これは、地域住民同士の監視を通じて、末端レベルの統制を強める仕組みである。こうした動きは、米、豪、ニュージーランドに強い懸念を引き起こしている。

海洋支配を狙う中共 民主主義国が連携

蘇氏は、中共には「陸権から海権へ進出する」野心があると指摘する。中共はその目的に沿って、経済的な誘因を組織的に利用し、一部の発展途上国に港湾や空港への投資を受け入れさせている。これにより、遠洋展開能力を拡大する海軍艦隊、いわゆる「ブルーウォーター海軍」のために、外洋での港湾や補給拠点を確保しているという。

さらに中共は、遠洋漁業や海底探査なども組み合わせている。蘇氏は、その最終的な目的について「陸上資源が枯渇した後、海洋資源を奪い、海上支配を進めることにある」と述べた。

蘇氏は「これは中共のインド太平洋戦略における核心的な競争領域だ。だからこそ、日米印豪は、海上で中共の戦略と衝突している」と指摘した。

また蘇氏は、アメリカやオーストラリアなどがこれまで太平洋島しょ国への関与を十分に重視してこなかったため、中共に「隙を突かれた」と述べた。現在のQuadによる共同行動は、民主主義の海洋国家が発展途上国に働きかける動きであり、同時に、民主主義国家側がより多くの支援を提供する方向へ政策を調整する動きでもあるという。台湾も第二列島線の国々への支援に加わっている。

蘇氏は、これこそが民主主義国家による「実際の協力を通じた中共拡張への対抗」だと述べた。

一方、鍾氏は、南太平洋島しょ国側も、米中競争や民主主義国家と中共との競争の中で、自国の価値を高め、利益を得ようとしていると指摘した。

2024年、オーストラリアは中共によるフィジーの重要港湾へのさらなる関与を防ぐため、フィジーの既存埠頭施設の改修支援に合意した。ただし、スバ港の移転計画への支援には同意していなかった。

今回、Quadがスバ港の移転計画への関与を正式に発表したことで、鍾氏は、Quadが集団的な戦略行動として南太平洋に入り、中共との競争を本格化させたと見ている。

また、南太平洋島しょ国は今や、インド太平洋地域において、第一列島線の外側に位置する「太平洋戦略競争の節点」になっているという。

鍾氏は「米中の戦略競争は、実際には第一列島線から第二列島線、さらには第三列島線の海洋空間へと広がっている」と述べた。

易如
程雯
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