米中貿易戦争の標的となった「中国製造2025」がいま、鳴りを潜めている。しかし、中国共産党政権の「世界の製造強国入り」の目標が消えたわけではない。中国国務院は今年1月、「中国標準2035」戦略を打ち出した。
当時の中国国営通信・新華社の報道によると、同戦略は今年、IC設計、バーチャルリアリティ(人工現実感)、スマート型健康・高齢者介護産業および5G(第5世代移動通信システム)の重要部品などの国家規格の制定に着手する。将来的にIoT(物のインターネット)、情報技術設備の相互接続、太陽光などの分野にまで広げる。最終的にこれらの国家規格を「国際規格」に押し上げる。
3月、同戦略の発足会が行われた。中国国家標準化委員会の戴紅工業二部主任は人工知能、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなど新技術の国際規格がまだ確立されていないため、「車道変更による追い越しのチャンスだ」と明言した。
昨年の党大会で発表された報告では、「2035年にイノベーション(技術革新)の先進国に成長する」という目標が盛り込まれた。「中国標準2035」はこの構想の具現化といえる。
技術標準化は国の産業競争力を左右する。独自の特許が国際規格に採用されれば、各国のメーカーからライセンス料(特許使用料)を徴収することができる。携帯電話用チップの製造技術を保有する米通信大手クアルコム社は、2014年度だけで中国市場から80億ドル(約9千億円)のライセンス料を得た。
今年4月、米政府は中国通信大手ZTEに対して今後7年間米企業による半導体の輸出禁止令を出し、ZTEは経営難に追い込まれた。その後、中国指導部は技術の自主開発の重要性を唱えてきた。
米テキサス州セントトーマス大学国際研究センターの叶耀元助教は「中国標準2035」が「中国製造2025」の改良版であり、その目的は世界に中国の技術を売り込むためだと、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)に述べた。
米大手総合情報サービス・ブルームバーグは中国が「一帯一路」を通じて沿線国に技術規格を輸出し、それを足がかりに、世界の国際規格制定の主導権を握ろうとしている、と分析した。「中国が国際規格でリーダーシップを取れば、国際市場の競争局面を変えることになる」
叶耀元助教は「中国製造2025」と同じように、中国は他国からの技術盗用によって「中国標準2035」を実現させようとしていると指摘した。
(翻訳編集・李沐恩)
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