米中通商協議は難航し、3月中に予定されていたトランプ米大統領と習近平中国国家主席との合意に向けた首脳会談は、4月以降にずれ込むとみられる。専門家は、中国共産党政権の専制体制によって、通商問題で両国が折り合うことは難しいとし、米中貿易戦は「米中政治体制の全面的対決」と形容する。
時間稼ぎの会談延期 トランプ大統領の「立ち去り」なら中国メンツに関わる
中国共産党政権に近い香港メディア、サウスチャイナ・モーニング・ポストは3月16日、米中首脳会談は6月に行われる可能性があると報じた。同紙によれば米中双方は、3月末までの通商協議は困難とみているという。
また、ブルームバーグは14日、米関係者3人の話として、中国側は貿易戦を形式的にも終結するため、習主席の訪米は「簡素なもの」ではなく、国賓として迎える公式訪問を米国側に求めていると伝えた。同メディアはまた、首脳会談は4月下旬に行われる見込みだと伝えた。
大紀元の取材に答えた米サウスカロライナ大学の謝田教授によると、米中首脳会談の延期については、「時間稼ぎという中国側の策略」とみている。
「中国当局が国賓としての公式訪問を要求しているのは、米朝首脳会談のように、トランプ大統領が再び『立ち去る』のを恐れているためだ。トランプ大統領にとって、合意に至るか否かはメンツに関わる問題ではない。しかし中国の首脳は違う。メンツに関わる問題であるうえ、場合によっては失脚につながる」
米国の内政と社会の混乱を期待する中国
中国の習近平国家主席が、訪米することで、「貿易合意が国事訪問の一環であることを示すことができる。また、合意に至らない場合でも、メンツを保てる」と謝田教授は述べた。
米ボイス・オブ・アメリカ19日付によると、専門家の間では、中国当局が時間を稼ぎながら、米国内の情勢が変化することを望んでいるとの見方が多い。中国側は、いわゆるロシアゲートや最近のボーイング問題などで、米国内のトランプ政権への反発や圧力が強まることを期待している。これにより、米中通商協議でトランプ政権は強気に出ることができなくなるという。
しかし、謝田教授は「トランプ政権は中国の策略に気づいている。つまり、中国側に時間を与えれば与えるほど、通商協議が棚上げされる可能性もある」と話した。
欧州に接近
習近平国家主席は21~26日までの日程で、イタリア、モナコ、フランスの欧州3カ国を公式訪問する。
海外メディア中国支局の報道関係者は、大紀元の取材に対して「習主席が米中通商交渉を放っておいて突如欧州を訪問するのは、欧州に接近し、欧州を米中貿易戦における中国側の切り札にする狙いがあるから」と分析した。
関係者は、米中貿易戦の影響は、中国企業が急進出する欧州にまで広がっていると指摘した。「実際に、中国よりも、欧州は米国との協力強化を望んでいるが、現在まだこの本音を言うのをためらっている」
「このなかで、習近平国家主席は米中首脳会談の開催前に、欧州に『一帯一路』への参加を説得し、中国側に懐柔する意図がある」
昨年以降、米国の大学は相次いで、中国当局のスパイ機関とされる「孔子学院」を閉鎖した。関係者は、中国共産党のイデオロギーを宣伝する孔子学院が閉鎖される今、「中国当局は国際社会における影響力を発揮するために、一帯一路に頼るだろう」との見解を示した。
「約束を後退させた」
ブルームバーグは19日、米中通商協議の進展が遅くなった背景には、米国側が要求する知的財産権保護の改善について、中国当局が当初の約束を後退させたことにあると報じた。
報道によると、中国側は知的財産権保護について米国に譲歩したが、米国側は中国の求める対中関税措置の撤廃を受け入れなかったため、当初の立場を変えたという。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)20日付によれば、通商交渉では微妙な駆け引きが続いていることがうかがえる。米国は、将来中国側が貿易合意を履行しない場合、米国は対中関税制裁を実施するが、それに対して中国が報復措置をとらないよう要求した。しかし、中国はこの提案を拒否した。
さらに、米中双方は、現在実施されている追加関税をどう撤廃していくのかについても、意見が対立している。米国側は、中国当局が貿易合意を一定の程度まで履行したら撤廃するとの認識を示した。これに対して、中国側は、合意後直ちに追加関税を撤廃することを希望している。
トランプ米大統領は20日、製品に対する関税を「かなりの期間」維持する意向であることを明らかにした。大統領は、米中通商協議での合意事項を中国が確実に履行するよう強く求めている。
謝田教授によれば、米政府が主張する合意履行の検証メカニズムの設立は重要だという。「検証がなければ、中国側は従来通り、言い訳や言い逃れをするだろう。過去数十年間、共産党政権は時間稼ぎ、言い訳、屁理屈などの手段で利益を得てきた」
全面対決
しかし、検証メカニズムの設置でも不十分との見方がある。中国政治学者の王軍涛氏は「非合法の地下党だった中国共産党は、脅迫、騙り、かどわかし、ごまかしなどあらゆる悪事に精通しているためだ」と話した。
王氏は、米中貿易交渉において、中国当局は「電信産業と国有企業への補助金」に関して米側に妥協しないと推測する。
「現在、国内で最も業績のよい企業はインターネット関連企業だ。米政府は中国当局に対してネット上の市場開放も求めている。中国ネット業界大手のテンセントとアリババ集団、百度が継続的に成長できるのは、中国共産党に協力して、ネット上で国民、反体制活動家などを監視しているからだ。中国の電信産業は中国当局の政権維持に関わっているため、米企業の進出を絶対に容認しない」
また、国有企業への補助金に関して、銀行の国有企業に対する低金利の貸出、国有企業の市場シェアの確保、国有企業の価格支配権も、補助金の一環だ。中国の構造問題の一つとして、米政府は補助金の撤廃を求めている。
王軍涛氏は、「国有企業への補助金は政治制度に関連する問題だ。トランプ政権は、米中が対立する理由は貿易不均衡ではなく、イデオロギーの違いだと気づく。つまり、米中の政治制度の衝突である」と述べ、米中冷戦に発展するとの見方を示した。
「トランプ政権は、米中の政治制度が平和に共存できないと分かれば、全面的に中国を封じ込めにいくだろう。欧州も米に続き、中国への対抗姿勢を強めている。外部圧力の下で、中国国内の政治情勢が悪化すれば、中国国民によるカラー革命が現実になる日は、もう遠くない」
(記者・駱亜/周慧心、翻訳編集・張哲)
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