中国化が進むカンポジア。なかでも、南部の湾岸都市シアヌークビルでは、中国資本が広く浸透し、中国人が溢れていた。しかし、現在、新型コロナウイルスの影響を受けて、街から中国語が聞こえなくなった。
55歳のトゥクトゥク(電動三輪車のタクシー)ドライバーであるクワン・サムヘイさんは、路上で乗客を探すが、「中国人観光客はもうひろえない」とロイターに語った。「街は以前より穏やかで整然としている。でも、私のような仕事には悪影響だ」と語った。
東南アジアの他のどの都市よりも、専制体制を敷くカンボジアは、南シナ海にも近く、地政学的な利点から、中国共産党は積極的に投資してきた。タイランド湾に面すシアヌークビルは、一帯一路の重要な港湾および産業プロジェクトを抱える。
米ボイス・オブ・アメリカによると、2016年から2018年にかけて、中国資本と中国人が数多くシアヌークビルに押し寄せた。統計によると、中国人は同都市人口の3分の1を占め、約10億ドルの投資をしている。都市経済は、カジノにより支えられ、この利益で首都プノンペンへの高速道路の建設が進められている。オンライン賭博市場は治安を悪化させ、中国の闇組織の派閥抗争を引き起こすなどして、地元の人々を心配させている。
この状況を受けて、カンボジア政府は2018年8月18日、インターネット賭博の禁止を命じた。禁止令の後、シアヌークビルの残りの認可カジノは中国顧客を受け入れてきた。また街は不動産開発業者も投資を受け入れ続けた。
2019年の新型コロナウイルス(COVID-19)は、シアヌークビルを再びいらだたせている。肺炎は、中国の内外に広がっているため、カンボジアを含む各国は、中国人の入国を禁止している。こうして、シアヌークビルのカジノは「空っぽ」になった。
シアヌークビルは、新型肺炎の症例が出ている国内唯一の都市だ。13日、大型クルーズ船「ウエステルダム」は日本を含め多くの国に入港を拒否されたが、シアヌークビルが迎え入れた。乗客は、ウイルス検査で陽性が判明した。
シアヌークビル当局による2019年中間報告書は、州内企業の90%以上が中国人の所有であると述べた。ただ、オンライン賭博に依存していたカジノが2018年の禁止令で閉鎖された後、中国語の文字はレストラン、スーパーマーケット、美容院などあらゆる小売店から消えていった。
新型肺炎の発生でカンボジアも中国人観光客の入国を制限し、中国人はシアヌークビルに自由に出入りすることができなくなった。
複合ビルの入居は減り、部屋は埋まらなくなった。今後、中国投資と観光客に過大な依存をしてきたシアヌークビル経済は、新型肺炎による大きなマイナス影響が予想される。
(翻訳編集・佐渡道世)
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