米ヘッジファンド、ヘイマン・キャピタル・マネジメントの創業者であるカイル・バス(Kyle Bass)氏は、中共肺炎(新型コロナウイルス感染症)で米ウォール街の金融機関は信頼失墜した中国当局との関係を見直す必要があると指摘した。
バス氏は、大紀元英語版の番組「アメリカン・ソート・リーダーズ(American Thought Leaders)のインタビューを受けた。同氏は、「米国ではますます多くの人が、『中国政府は信頼できない。中国政府はわれわれの友人ではなく、われわれに死をもたらす敵である』と認識し始めた」と述べた。この社会背景に、中国当局と深い関係にあるウォール街が「関係を変えざるを得ない」
一方、米国の金融機関と中国共産党政権のデカップリング(分離)について、「注視する必要がある」と意見を保留する専門家もいる。
2018年に米中貿易戦が始まってから、外部の圧力下で、中国当局は昨年、金融セクターにおける外資規制を一部緩和した。サウスカロライナ大学の謝田教授は、「この政策では、米金融機関が短期間に中国市場から撤退しないだろう」と指摘した。
今年3月、中国証券当局は、米金融大手のモルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスに対して、中国での合弁会社の保有株式を51%に引き上げることを承認した。これによって、両社は中国の合弁会社の経営権を握ることが許された。
謝教授は、「中国当局が2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟してから、金融部門の市場開放という約束を一度も果たしたことがなかったにもかかわらず、外資銀行は依然として中国市場を獲得しようとしていた」と述べた。
「ウォール街の金融機関が多くの中国企業に対して、米株市場上場を手助けしてきた」。米政府の統計では、2019年9月までに、約172社の中国企業が米の証券取引所に上場を果たした。その時価総額が1兆ドルを上回っているという。
また、モルガン・スタンレーを含む一部の欧米金融大手が、中国上層部との人脈を築くように、当局高官の子弟や親族を雇用していたことも明らかになった。
中国で急成長し、米株式市場に上場しているコーヒーチェーン「瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)」は4月初め、2019年の売上高に関して、上層幹部などによる不正会計があったと発表した。米投資会社のマディ・ウォーターズ・キャピタルの市場調査部門は今年1月末に、ラッキンコーヒーの粉飾決算について報告書を発表した。ラッキンコーヒーは否定していた。
謝田教授は「マディ・ウォーターズ・キャピタルなどごく一部の投資会社を除いて、中国企業の詐欺行為を知っている金融機関が多くある」と指摘した。
カイル・バス氏は、中国市場を追い求めるために、中国当局による人権侵害を無視した米金融機関を非難した。同氏は、「中国共産党政権は、100万人以上の良心の囚人を拘禁しており、毎日これらの政治犯に対して強制臓器摘出を行っている」「米金融機関は、金銭のためにこの事実を無視している」と語った。
バス氏は、米株式市場に上場する中国企業が米証券当局に財務諸表を提出することが、「状況を改善する第一歩だ」との認識を示した。中国当局は、「国家機密」として、中国企業が米政府に財務報告を提出することを阻んでいる。
昨年6月、米超党派の議員は、上院と下院に対して、米上場の中国企業に対して金融監督を受け入れることを義務付ける法案を出した。また、米政府は、中国当局のために軍事やスパイ活動を展開し、人権侵害にも一翼を担っているとして、公的年金基金による中国企業への証券投資を制限する姿勢を示した。
近年、MSCIやFTSEなどの世界インデックス大手は、中国企業の株式をグローバル市場、または新興市場指数に組み入れた。これによって、米国投資家から数十億ドル規模の資金が中国企業に流れた。これらの企業の中に、中国当局のウイグル人弾圧政策に協力している監視カメラメーカーのハイクビジョンや、軍事関連国有会社の中国航空工業集団などが含まれている。
バス氏は、中国当局とウォール街の関係にすでに変化が起きているとの考えを示した。
(記者・Cathy He、翻訳編集・張哲)
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