日米を含む主要7か国(G7)外相会議が3日から5日、英ロンドンで開かれた。対面式は2年ぶりで、中国、ロシア、イランをめぐる問題を中心に「民主主義、自由、人権」を損なう地政学的な脅威について議論される。主催国の英国は、インド太平洋地域における関係国外相も参加することで、G7が同地域への戦略的重点を移行させていることを反映していると説明した。
今年のG7外相会議を主催する英外務省は、「G7議長国である英国は、自由で開かれた民主的な力を集結し、共通の課題や脅威の増大に対処する。必要な時期に団結力を示すべきだ」というドミニク・ラーブ英外相の声明を発表し、自由主義を掲げる主要国の結束を呼びかけた。
G7外相会議にはオーストラリア、インド、韓国、南アフリカ、ASEANの議長国ブルネイがゲストに加わる。ラーブ外相は、これらの国と地域の参加は「G7におけるインド太平洋地域の重要性が高まっていることを意味する」と声明で述べた。
インド外相は英国訪問団メンバーに新型コロナウイルス陽性反応が出たため、急遽リモート参加となった。
2日目の4日には、参加国外相らによる中国情勢に焦点を当てた議論の時間が設けられた。外相たちは、南シナ海での軍事拠点化の動きなどについて懸念を共有した。茂木敏充外務大臣は、香港情勢や新疆ウイグル自治区の人権状況に深刻な懸念を表明し、また、中国海警法の施行など、東シナ海や南シナ海での一方的な現状変更の試みが強化されていると述べた。
また、茂木外相は、ミャンマー情勢にも懸念を表明した。同国では2月1日に発生したクーデターで文民指導者のアウン・サン・スー・チー氏が拘束された。ミャンマー国軍による軍事政権で、4月末までに国民100人以上が殺害された。国連は4月22日、厳しい景気低迷で食糧不足が深刻化し、今後数か月で数百万人が飢えに苦しむとの予想を発表した。
ドミニク・ラーブ英外務大臣はG7諸国に対し、制裁や武器禁輸などの軍事政権に対してより強力な行動をとることや、人道支援を強化することを求めるとした。
3日、ラーブ外相と米アントニー・ブリンケン国務長官は米英外相会談を行なった。英国の声明によれば、双方は中国問題について議論し、新疆ウイグル自治区と香港情勢に関して、中国に説明責任を果たさせる必要性があることを確認した。また、インド太平洋における英国の優先事項を米国に説明した。
ラーブ外相は米英外相会談後の会見で、米国とは「基本的な自由を保護し、偽情報に対処し、人権侵害者の責任を追及する」ために志を同じくする国々の力の結束が必要であると一致したという。また、これらの問題の対象国は中国であることも指摘した。
さらに、英米は、香港の資本主義制度の50年維持に合意した1997年の英中共同声明を含め、中国に約束を守らせる必要があることを確認した。ラーブ外相は、中国との対話路線の可能性について触れ、「可能な限り賢明で前向きな行動でもって、中国と建設的な方法で協力する可能性を見つけたい」と付け加えた。
G7外相会議は最終日に共同声明が発表される見通し。この会議は、6月11日から13日に英南部で開催予定のG7首脳会議の準備会議とされる。
(佐渡道世)
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