加藤勝信官房長官は10日の記者会見で、ベラルーシ当局が民間旅客機を強制着陸させ搭乗していた反体制派ジャーナリストを拘束した事案について、同国領空の通過を回避する勧告を国内航空会社に発出することを明らかにした。先進7カ国(G7)外相がベラルーシ当局に責任ある行動を求める共同声明を踏まえての措置だ。
ベラルーシの当局は5月23日、同国領空を通過していた民間機を首都ミンスクの空港に強制着陸させ、搭乗していた反政権派のジャーナリスト、ロマン・プロタセビッチ氏を拘束した。
加藤官房長官は記者会見で、「強制着陸について、ベラルーシ政府は非を認めておらず、今後、同様の事案が発生するおそれが排除されない」ため、ベラルーシの領空通過の回避を勧告する安全情報を日本の航空会社に対し発出することを明らかにした。
そのうえで、ベラルーシ当局の措置が国際民間航空条約に違反する疑いがあることなどを踏まえ、同国の航空会社による日本への乗り入れを認めず、航空路線開設の合意を控える措置も行うことが明らかになった。
最後に加藤長官は「ベラルーシ当局による強制着陸および乗客の恣意的な拘束を強く非難し、拘束されたジャーナリストの即時釈放を求める」と述べた。
自民党外交部会は9日、ベラルーシで拘束されているジャーナリストや政治犯の即時釈放や国民弾圧の停止を求める非難決議を茂木外務大臣に申し入れた。強制着陸事件以後、ベラルーシ情勢もG7における重要議題の一つとなっている。
2020年のベラルーシ大統領選では、候補者登録の拒否などの方法で一部の対立候補が事前に排除された。同国選挙管理委員会はルカシェンコ氏の得票率を80%超えと発表した。しかし国内では選挙の不正を疑う民衆と警察の間で衝突が発生し、多数の死傷者が出た。
ベラルーシは旧ソ連の構成国であり、「欧州最後の独裁者」の異名を持つアレクサンドル・ルカシェンコ大統領による統治が1994年から一貫して続いている。同国憲法には大統領の3選禁止規定が設けられていたが、2004年に撤廃された。
(王文亮)
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