チェコ上院は6月10日、中国共産党政権によるウイグル人やイスラム系少数民族に対する扱いは「人道に対する罪」や「ジェノサイド」にあたるとする動議を可決した。15日には、ベルギー議会も同様の動議を可決している。
チェコ上院の動議は38対0で、全会一致で可決された。「中国では人権と自由の大規模な侵害、ジェノサイドと人道に対する罪、民族差別、文化的・宗教的・政治的アイデンティティに対する抑圧が行われている」と指摘し、特に中国最西部に位置する新疆ウイグル自治区において、顕著に見られるとした。
「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」のチェコ共同代表を務めるパベル・フィッシャー上院議員は、「中国政府がウイグル人やチベット人、ほかのグループに対して最も残忍な迫害を行っているあいだ、我々は黙っていることはできない」とIPACの声明で述べた。
ベルギー議会もまた、ウイグル人がジェノサイドの「深刻な危険性」に直面しているという動議を6月15日に可決し、中国政府が「人道に対する罪」を犯していると非難した。
IPACのベルギー共同代表を務めるサミュエル・コゴラティ議員は、「今日、ベルギー議会は世界に向けて警告のサインを発した」「ウイグルの収容所が閉鎖されないかぎり、中国との間に 『いつも通り』の関係を築くことはできない」と述べた。
中国共産党(中共)は、新疆ウイグル自治区において、ウイグル人をはじめとする少数民族に対して広範な弾圧を行っている。100万人以上のウイグル人が収容所に収容され、拘禁、強制労働、拷問、強制中絶、強制不妊手術などが行われている。
中共による新疆ウイグル自治区での弾圧を「ジェノサイド」と指定した政府機関は、チェコ上院が初めてではない。カナダ、リトアニア、オランダ、英国の議会も同様の指定を行っている。1月には、マイク・ポンペオ前米国務長官が、中共によるウイグル人弾圧を「ジェノサイド」と認定している。
チェコの動議、北京冬季五輪のボイコット呼びかけ
また、チェコ上院が可決した動議は、2022年に中国の首都、北京で開催される冬季オリンピックへの「参加要請を拒否する」ようチェコ政府に呼びかけている。さらに、選手を中国に派遣して競技に参加させることは、「さらなる差別、暴力、基本的権利の抑圧を(中国が)正当化するために悪用する可能性がある 」と述べた。
動議は、すべての民主主義国に向けて、北京冬季オリンピックをボイコットするよう呼びかけている。「ウイグルやチベット地域で起こっていることは、恐ろしいことであると発信するよう期待している。これは、ちょっとした政治問題ではない。大規模な残虐行為を防ぐためだ。オリンピックへの招待を受け入れる政治指導者は、これらの虐待を黙認する危険性がある」とフィッシャー氏は付け加えた。
6月初旬には、米国、チェコ、EUなど8カ国の議員が、中国の広範な人権侵害を理由に、2022年北京五輪の参加辞退を検討していると発表した。米国では、民主党と共和党の両党がオリンピックのボイコットを呼びかけている。
ワシントンに拠点を置く非営利団体「Campaign for Uyghurs」(CFU)は、プレスリリースで、チェコ上院の動議の可決を支持した。
CFUの創設者で事務局長のルシャン・アバス氏は、「これは中国共産党の権威主義に対する潮流の変化の明確な兆候だ。(中共)政権があまりにも長い間、責任を問われることなく運営されてきたことを表している」と述べた。さらに「国際社会が2022年の北京オリンピックをボイコットし、より多くの西側諸国の政府が、現在東トルキスタンでウイグル人に対して行われている残虐行為を認識することを強く求める」と付け加えた。
ミュンヘンに拠点を置く権利擁護団体「世界ウイグル会議 (WUC)」はプレスリリースを発表し、ベルギー議会の動議の可決を支持した。
WUCのドルクン・エイサ総裁は、「他のEU加盟国やEU機関も後に続き、中国の残虐行為に対して断固とした姿勢で臨み、それをジェノサイドと認識することが必要だ」と述べた。
(Frank Fang/翻訳・蓮夏)
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