中国の軍事産業を統括する工業情報省が管轄する北京航空航天大学は、米国の複数のトップ大学との提携関係を隠蔽していることがわかった。米メディア「ワシントン・フリー・ビーコン」は29日、同大学がウェブサイト上から、これまでに公開されていた海外の教育機関とのパートナーシップに関する記述を削除したと報じた。
インターネットのアーカイブにあるウェブ履歴によると、同大学は世界の50以上の大学と協力関係にあり、うち5校は米国の大学となっている。
北京航空航天大学は、ハルビン工業大学、北京理工大学、ハルビン工程大学、南京航空航天大学、南京理工大学、西北工業大学と合わせて、中国の軍事防衛に関係の深い「国防七校」と呼ばれている。同大学は軍事実験を専門に行うための9つの研究所を持っており、研究予算の60%を防衛活動に費やしている。
また、同大学で行われている研究開発の中で最も注目されているのは、戦闘機、衛星、弾道ミサイルなどの領域となっている。これらの領域は、米国防総省のシミュレーションでは、中国がインド太平洋の米同盟国を攻撃する戦略の礎となる要素とされている。
2001年、米商務省が国家安全保障や外交政策上の懸念があるとして指定した企業を列挙した「エンティティー・リスト(EL)」の中に北京航空航天大学を加えた。同大学が中国のロケットシステムやドローンの研究開発に関わったためとしている。
ワシントン・フリー・ビーコンによれば、中国軍とつながりのある組織は6年間で8800万ドルを米大学に提供したという。
北京航空航天大学は、ミシガン大学、コロンビア大学、カーネギーメロン大学、セント・メアリーズ大学、ローズ・ハルマン工科大学とパートナーシップ関係を締結している。
米国のパートナー校も、海外の大学に関する過去の記述をウェブサイトから削除している。セント・メリーズ・ロー・スクールは、海外との協定に関する複数のページを削除したが、2022年に再開する予定の北京航空航天大学との夏季交換プログラムについてのサイトは残っている。ミシガン大学は、同校のウェブページによると、主に数学と工学の授業で北京航空航天大学との単位互換を行っている。
セント・メリーズ・ロー・スクールの広報担当者は、国家安全保障上に問題ある1つのプロジェクトを除き、北京との協力関係を継続していることを確認した。他の4つの大学からはコメントを得られなかった。
「プロジェクト2049研究所」研究員、イアン・イーストン(Ian Easton)氏はワシントン・フリー・ビーコンに対し、中国軍と交流協定を結んでいる米大学は、共産主義政権の性質を無視していると指摘した。
「米国務省は、中国共産党はジェノサイドを行う政権であり、戦略的競争相手であると繰り返し強調している」「米国のどの大学にとっても、中国共産党が管理する研究施設との連携は、起こりうる失敗だと考えるべきだ」
教育関連機関も、北京航空航天大学と米大学との連携の不透明さに警鐘を鳴らした。
全米学識者協会の上級研究員であるレイチェル・ピーターソン(Rachelle Peterson)氏は、「教育者は中国共産党からの財政支援によって米国の国家安全保障が妨害されることを許してはならない」と述べた。
また「これらの機関は、中国問題に関して判断力が鈍っている」「中国が軍民融合政策を進めているため、大学はこれらのパートナーシップ関係を強く警戒しなければならない」と同氏はワシントン・フリー・ビーコンに語った。
(翻訳編集・李凌)
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