ハワイ州のファーストレスポンダー(災害や事故時に最初に対応する消防隊員や警察官、救急隊員ら)約1200人が、ワクチン接種義務化を巡って同州を訴える。デービッド・イゲ州知事は8月5日、州や郡で勤務する従業員は、ワクチン接種証明書を提出するか、そうでなければ毎週の検査と渡航制限を受け入れることになる、と述べていた。
イゲ州知事は、8月16日までにワクチン接種をしない従業員に対しては、解雇を含む懲戒処分を受けることになる、と通告していた。ホノルル市のリック・ブランジャルディ市長は、ワクチン接種をしていない郡の職員らが自宅待機を余儀なくされることに起因する急な人員不足を避けるために、接種期証明書提出の期限を1週間延長した。
「感染力が非常に強いデルタ株が、特にワクチン未接種者の間で猛威を振るっている。COVID-19 の感染者数が急増している今、我々の医療システムに対して始末の負えない被害を与えないためにも、今すぐ対策を講じなければならない。この新しいワクチン接種と検査の方針は、ハワイに住む人たちの健康、安全、福祉を守ることにつながる」(イゲ州知事)。
宗教上や健康上の理由から接種できない人に対しては、免除がみとめられている。しかし、一部の労働組合は、免除手続き申請や、免除される人たちの資格に関する情報が不足していると懸念している。
今回の決定を受けて、ホノルル郡とマウイ郡の警察官、消防士、救急隊員は8月15日、義務化を取り消すよう求める集団訴訟を起こした。
本訴訟の弁護士は3人。Michael Jay Green & Associatesの弁護士マイケル・グリーン氏、Shawn A. Luiz, Attorney at Lawの弁護士ショーン・ルイス氏。Empire Law, LLLCの弁護士クリスティン・コカロ氏だ。
弁護士の一人であるコカロ氏は、ハワイ現地メディアKHON2ニュースの記者会見で、事の深刻さを以下のように話した。「彼らが無料の検査を待っている間、検査結果を証明できないとしたら、給料も貰えずに自宅にいることを強制されることを意味する。つまり、ほとんど解雇されているのと同じ状態になる。大多数のファーストレスポンダーが職を失い、罰を受けてしまう」。
コカロ氏の主張の通り、新たな義務化措置には、無料の検査を受けられない州の職員は、検査のための費用を自己負担しなければならない、と記されている。
また、イゲ州知事は労働組合が組合員を代表して交渉することを認めている公共職業法の第89章の一部を停止している。
「ハワイ州には、(アメリカ)国内でも最も強力な労働組合がいくつか存在する。イゲ州知事は、彼らの戦う能力を喪失させるために、緊急事態宣言を発令した」とグリーン弁護士は公共職業法が一部停止された理由を説明する。「何千もの人たちが、『ワクチンを接種しろ、さもなければ職を失うぞ』と脅されているのだ」と、グリーン弁護士は述べた。
グリーン弁護士とルイス弁護士は、今回の義務化措置への懸念はワクチンそのものに対してではなく、接種を義務付けることと、義務化措置決定までに事前の協議や通知がなされていなかったことだと会見で説明した。
「(ファーストレスポンダーたちは)選択の自由を求めているだけだ。ワクチン接種は、極めて個人的で、個人の責任による健康上の決断に委ねられる行為。全ての人たちが、接種するか否か、自由意志で決めるべきだ」(ルイス弁護士)。
ホノルル市消防局のカイミ・ペレカイ隊長は、会見で、市は職員に対して8月16日までにワクチンを接種する、または宗教上、健康上の理由から免除される証明書を提出するように、と記された手紙を送っただけであった、と話した。イゲ州知事が与えた猶予期間は10日間だけだった。
ペレカイ隊長は心境を吐露した。「私は20年間、消防隊員としてこの身を捧げてきた。そして、37年間、父親が消防隊員をしてきたのを見てきた。治験中の薬を身体に入れたくないという理由だけで、キャリアの全てを諦めなければいけないのだろうか?」
「(月曜日に)私たちが仕事場に駆けつけなかったとしたら、それは市長、知事のせいだ。私たちは仕事をしたいだけだ!この仕事こそが、私たちが人生をかけて成し遂げたいことなのだ!私たちは(災害現場に)駆けつけたいのだ。私たちは(事件現場で)弾丸が放たれるのを止めたいのだ。私たちは40フィートの波に飛び込んで、あなたの命を助けたいのだ!それが全てであり、それが私たちのやりたいことだ。もし私たちが、16日に助けを必要とする現場に姿を現さなかったとしたら、ブランジャルディ市長に感謝すればいい」(ペレカイ隊長)。
ハワイ州の消防隊員たちは、カリフォルニア州で発生する山火事の消火活動を度々支援している。現在、ハワイ火山国立公園の消防隊員たちは、加州で猛威を振るう大規模な山火事「ディキシー・ファイア」の消火活動に隊員を派遣している。
ファーストレスポンダー1200人あまりによるワクチン接種義務化をめぐる訴訟は、9月8日、デリック・ワトソン連邦地裁判事のもとで公聴会が開かれる予定だ。
(翻訳・大紀元日本語編集部)
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