茂木外相は31日の記者会見で、エジプトからパレスチナまでの8月の中東8地域訪問を振り返った。訪問中にアフガニスタン政府が崩壊しタリバンが支配力を急速に強めた。日本大使館職員を早期にドバイに退避させたことについて「相当危険が切迫していた」と述べた。
茂木氏は、駐アフガニスタン日本大使館は現在閉鎖され、トルコのイスタンブールに臨時事務所を設置しているが、これをカタールのドーハに移していく考えを示した。これは、タリバンが現地に政治事務所を置いていることも一因としている。また、岡田隆アフガン大使のドーハ滞在も検討していると話した。
茂木氏は、アフガニスタン政府の短期崩壊を「少なくとも私の知っている範囲において、主要国でこの速い展開を予想していたという人はいない」と述べた。このうえで、治安の急速な悪化をみて、8月上旬からチャーター機や自衛隊機の派遣など、邦人退避計画の策定に着手していたという。
カブール陥落の翌16日、日本大使館員らはドバイに英国軍用機で退避した。これについて、「相当危険が切迫していた」ためだと述べた。また、26日に空港での自爆テロが起きてから、タリバンの検問所も車が停滞し、車両で空港まで送る計画が困難になった。
米軍が31日と定めた撤退期限を延長しないことやテロの発生により、民間機の運航制限などが設けられカブール空港の機能が著しく低下した。こうしたなか、防衛省は23日、外相代理より要請を受けて航空自衛隊の輸送機を派遣し、邦人1人の報道関係者と旧アフガン政権協力者のアフガニスタン人14人をパキスタンへ退避させた。
防衛省の31日の発表によると、この退避計画でC-130輸送機を2機、C-2輸送機を1機、B-777特別輸送機を1機、人員約260人を現地に派遣した。25日から27日の間、輸送機はカブールと周辺国拠点との間で輸送を実施した。
輸送対象者は、現地スタッフの家族なども含め最大500人程度と想定されている。
茂木氏は、日本の手配をした輸送手段で輸送中の危険を想定して、「(無理をして空港に向かうような)突っ込む判断はできなかったと思う。私はすべきではなかったと思っている」と述べた。
米軍撤退を受けて、カブール空港の安全確保ができなくなった。防衛省は邦人退避を31日に終了したと発表した。政府は、出国を希望する日本の在留邦人らの安全な退避支援は関係国と連携して継続するという。
茂木氏は中東周遊中、「米国のみならず各国が想定していた以上のスピードで、事態が変化していった」と振り返り、各国訪問の中で情勢分析と懸念について共有したという。このなかで、アフガニスタンの安定は中東地域及び国際社会の平和と安定にとって重要な課題との認識を示した。
また、中東地域の大国であるトルコやイランとの間で、アフガニスタン情勢の更なる不安定さが深刻にならないよう連携していくことで一致したという。
茂木氏の中東訪問中、先進7カ国(G7)はオンライン形式の外相会議を開き、イスラム過激派組織タリバンが全権を掌握したアフガニスタンの情勢悪化の阻止に向け、国際社会の団結を呼び掛けた。
(佐渡道世)
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