中国共産党が軍備を増強し「赤い革命」を海外へと輸出しようと画策するなか、民主政の日本と台湾の関係が再び重要度を増している。双方に正式な国交はないが、大使館の役割を担う代表処や日華議員懇談会(日華懇)を通して外交関係を深めている。日華懇の会長を務める古屋圭司衆議院議員は、台湾の国宝の来日を実現させるなど、日本と台湾の信頼関係の構築に尽力してきた。
中共ウイルス(新型コロナウイルス)の世界的な感染拡大以降、中国共産党はワクチンの国際的な供給網から台湾を孤立させ、パイナップルの輸入禁止を行うなどして打撃を与えようとした。しかし、中国共産党の思惑とは裏腹に、それらの「謀略」は日本と台湾の距離を縮め、互いの信頼関係を築く機会を提供する結果となった。双方はますます接近し、最近では、自民党と台湾民進党との上層部対話「2プラス2」を行う計画があると報じられた。
日本と台湾は苦境のなか、どのように強固な絆を構築したのか。そして、膨張を続ける中国共産党にどのように対応していくべきなのか。大紀元は古屋圭司衆議院議員に考えを伺った。
―コロナ禍における、台湾との助け合いについて。
昨年、日本はコロナで大変だった。医療用マスクが全くなかった。そこで、蔡英文総統からの提案で、日本にマスクを届けることになった。本当にありがたいと思った。ほどなく成田空港にマスクが200万枚届いた。ジャンボ機一機分だった。日本代表処の謝長廷代表と共に出迎えた。マスクは、特に必要とされていた全国の感染症指定病院と特別支援学校に届けられた。台湾総統府には日本全国から数千通の感謝のメッセージが届いたという。これこそ絆だ。
この出来事があったので、今年台湾で感染が拡大した際に、ワクチンを支援することを決めた。アストラゼネカ社製のワクチンは、日本では限定的に認定されていたが、台湾では全面的に認定されていた。
台湾のワクチン事情について聞いたのは5月中旬だった。できるだけ早く届けてほしいとのことだったので、6月4日には届けた。しかし中国共産党からの妨害も予想されていたため、すべて水面下で行われた。政府、総理官邸、安倍晋三前総理大臣、秘書官など、限られた範囲内で決定をし、絶対に情報が漏れないようにした。そのため、発表は飛行機が出発する前日の6月3日になった。
―なぜ中国共産党は人命救助用の物資を妨害するのか。
我々の感覚からは理解できない。WHAの参加について同様のことが言える。WHO憲章には政治的、人種的なものを配慮してはいけないと定められている。健康は人類の普遍的な原理であり、明らかに憲章に違反している。そのような行為をする政権であると認識しなければならない。
その例として、私は新疆ウイグル自治区議員連盟の会長も務めている。2012年に世界ウイグル大会を日本で開会しようと計画した。その情報を聞きつけた中国大使から脅迫状が来た。
「これ以上ウイグル・チベット問題に触れたら皆さんの身の安全を保障しない」という内容だ。主権国家の国会議員に対する手紙としては甚だ不適切だ。我々はすぐ反論した。テレビにも出演した。すると、中国側からはそれ以上の抗議はなかった。これは教訓だと思う。中国当局はまず強く言ってくるが、必ず強く反論しなければならない。
ご存じの通り、日本と中国は互いに強い経済的な結びつきがある。しかし共通の価値観を持つ国ではない。人権と民主主義という基本的な価値観を共有していない。だから戦略的互恵関係で良いと思う。はっきり言うべきことは言う。これが基本的なスタンスだと思う。
―昨今、日本の大手メディアでも中国の臓器狩り問題について報じられるようになった。
現在はSNS等の発達により、情報統制が緩んでおり、多くの情報が国外に流れている。動かぬ証拠として動画がある。捏造とは言わせない。現実で起きていることについて、世界の共通の価値観を持つ国々が互いに連携して、けん制していくことは当然のことだ。
―台湾は文化的に中国と近いが、なぜこれほど違う国家になってしまったのか。
歴史的な問題がある一方で、統治機構が根本的に違うことも忘れてはならない。中国は共産党の一党独裁だ。いっぽうで台湾は民主国家である。ここの差が大きいと思う。
中国は習近平政権になってから常軌を逸した行動を取っている。私は太平洋島しょ国議員連盟でも会長を務めている。島しょ国の14カ国に対しても、中国が様々な支援をしている。相手国は受け入れているが、アフリカ諸国が経験したような、見えない債務の罠に陥る恐れがある。島しょ国のリーダーたちもこのことに気づき始めている。
キリバスとソロモンは台湾と断交し、中国と始めたが、それは間違っていたことであると皆が気づき始めた。共通の価値観を持つ国家が互いに連携すべきである。
7月には日本が主催する太平洋島しょ国サミットが開催され、「海洋安全保障問題」が重要なアジェンダとして提起された。これは初めてのことであり、今後もこの問題を深堀していきたい。
―中国共産党政権が海洋進出を強めるなか、「日米台戦略対話」を開催する意義について。
昨年の1月に蔡英文総統が再選した際、米国在台湾協会(AIT)のウィリアム・ブレント・クリステンセン所長(当時)及び蔡英文総統と話し合い、日米台の議員外交のなかで戦略対話を行うことを提案した。蔡英文総統とクリステンセン氏は非常に前向きだった。
新型コロナウイルスの影響により、会議はリモートで行った。駐日大使を務めたウィリアム・F・ハガティ上院議員もメンバー入りした。これからも定期的に行う予定だ。日華議員懇談会は超党派で、7月29日の会議では他の党の代表者も台湾に対する思いを表明した。記念すべき行事だと考えている。予想通り中国当局は猛烈に批判していた。想定の範囲内のことである。
―アフガニスタンの首都カブールが陥落した翌日には、中国共産党系メディアが台湾も同じ運命をたどると喧伝していた。日本はどのように対応するか。
中国は共産党一党独裁なので、長いスパンで物事を考える。江沢民が共産党のリーダーだったとき、台湾海峡にたくさんミサイルが撃ち込まれた。米国は相次いで空母を2隻台湾海峡に配備し、中国側の態度を軟化させた。その後、中国は20年かけて自前の空母を作った。
中国は長期的な戦略を実行するため、日米だけではなく、インド太平洋の国々が対中包囲網を形成し、けん制をしていかないと厳しい。日華議員懇談会もそのような役割を担っていると思う。
―日本と台湾は強固な信頼関係を構築している。
本物の信頼関係だと思う。象徴的な出来事はたくさんある。最近で言えば台湾産パイナップルが有名だろう。中国から輸入が止められた際、日本はパイナップルを多く輸入した。このことは台湾側からも感謝されている。
-日台関係の理想的な形とは。
重要なパートナーである米国を中心として、日米台の信頼関係を強固にしていけば、インドやオーストラリアなどの諸国も参加してくるだろう。これを長く維持していくことが大事だ。
―米国は、中国の地図に台湾を含めることを禁止しようとしている。国交回復はあり得るか。
現実を見据え、既成事実を創っていくことが大切だ。例えば、五輪では入場する際に「台湾」という言葉が使われた。このことは台湾でも有名になった。
―台湾有事の際に、日本はなにができるか。
憲法の規制があるので、自衛隊の派遣はできないが、後方支援はできる。
―台湾の方々へのメッセージをお願いしたい。
台湾は私が一番好きなところだ。早くコロナを克服し、大勢の台湾の方々が来日することを期待すると同時に、私も早く台湾を訪れたいと考えている。期待を持ちながら、目の前の課題を解決していきたい。
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