親中派の工作員が、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の大流行に乗じて世論の分裂を煽り、米国での街頭抗議活動を扇動しようとしていたことが、専門家の分析により明らかになった。また、中国外交官の意見を広めることを主として、英語のみならず日本語や韓国語を含む他言語で中国共産党が好む言説を拡散しているという。
米国のセキュリティ企業マンディアント・スレット・インテリジェンスが8日に発表した報告によると、世論を親中共に傾ける工作員は、集団で組織的な活動を行なっている。報告によると、2019年の香港民主化抗議活動の真実をねじ曲げることを目的として始まった。その後、工作員組織は規模と範囲を拡大させ、今や30のソーシャルメディアプラットフォームと、7つの言語による40のウェブサイトやオンラインフォーラムで活動しているという。
工作員たちは、中国の国営メディアの主張に同調するだけでなく、アジア人へのヘイトクライムに対する抗議デモに米国人を参加させようと積極的に働きかけていた。
4月、アジア系米国人の間で「人種的不平等」に抗議するデモを呼びかける投稿が相次いだ。韓国語や日本語、英語などで書かれた投稿の中には、米国に逃亡中の中国の実業家、郭文貴氏に焦点を当てたものもあった。郭氏のニューヨークの自宅前で、同氏が唱えるウイルス起源説、特に中共ウイルスは中国当局が作った生物兵器であるという説に反対するデモを行うように呼びかけた。
このような試みの「成功」を示す証拠はないものの、専門家たちは「活動の背後にいる主体が、米国の内政に影響を与える直接的な手段を模索し始めている」と警告を発している。
マンディアント社によれば、中国当局の管轄機関が関与しているという証拠は掴んでいない。
膨大な情報の発信…投稿量で報酬か
また、これらの親中共派アカウントは、4月24日に行われたデモ活動を投稿した際、別の集会の写真を加工して誤認を掲載していたことも確認されている。これに対し、グーグルの脅威分析グループのディレクター、シェイン・ハントリー氏は「彼らは、エンゲージメントではなく、(投稿)量で報酬を得ているようなものだ」と語る。
さらに、ロシアのライブジャーナルや、アルゼンチンの大手SNSタリンガでは、親中派たちは、中共ウイルスの起源について、米国やヨーロッパが発生源だと、さまざまな疑惑を投げかけた。
ツイッター社は、2020年6月、中国政府の中共ウイルスへの対応を賞賛したり、米国の信用をおとしめようとするなど、中国政府に有益なメッセージを拡散する活動に関わった17万件以上のアカウントを削除した。
これらの偽アカウントは、香港民主派の弾圧などで国際的な批判が高まった2019年以降に急増。中国の外交官アカウントをリツイートするなどして、中国にとって都合の良い言説を撒き散らしている。5月に発表された報告書によると、「中国(外交官)のアカウントのリツイートの半分近くが、上位1%のスーパースプレッダーから発信されている」という。
これらの投稿は、「新型コロナウイルス」を「新型クラウンウイルス」と呼ぶなど、笑ってしまうような誤りもあるとハントリー氏は言う。また、専門家らは、他言語での投稿にも同様の傾向があることから、ネイティブではない人や自動翻訳によって書かれた可能性があると指摘する。
「彼らは明らかに、世界的に広い範囲を任されている。誰かが彼らに命令を出しているのだ」と、マンディアント社を傘下に持つサイバーセキュリティ企業、ファイア・アイ社の情報分析担当副社長、ジョン・ハルトキス氏は述べた。
(翻訳編集・Tran Nhung)
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