フランス 国内の中国秘密警察署9か所を閉鎖

2025/07/11 更新: 2025/07/11

フランスの情報当局はこのほど、中国共産党(中共)がフランス国内に設置していた少なくとも9か所の秘密警察署を閉鎖したことを明らかにした。これらの拠点は、秘密工作員が運営しており、中共政府に批判的な人物に対して監視、脅迫、さらには強制送還の試みを行っていたことが確認された。今回の報道により、国際世論でも大きな波紋を呼んでいる。

 フランス国内安全総局が秘密警察署を特定・閉鎖 民間組織を隠れ蓑に活動か

フランス国内治安総局(DGSI)は、これらの秘密警察署が中共の国家安全部と密接に連携し、秘密工作員が運営していたと明かした。拠点は主に、中国系の同郷会や民間団体を隠れ蓑にして活動していたという。

フランスメディアによれば、警察署が閉鎖された後も、中共関係者は引き続き華人協会などの形を取り、現地社会に溶け込みながらスパイ活動を継続している可能性があるという。

台湾国防安全研究院の沈明室所長は、中共が海外に秘密警察署を設けている背景について、次のように分析している。

「中共は各国の中国大使館や領事館、さらには民間団体を利用して海外に警察機能を輸出し、国境を超えた弾圧を行っている。これは中国国外にいる反体制派を対象とする弾圧、情報収集、脅迫、統戦工作などを目的としており、国家主権を侵害する行為だ」

沈氏は、こうした秘密警察署が単に海外に逃れた犯罪容疑者の逮捕を目的としているのではなく、中共に批判的な言論の取り締まり、さらには在外華人コミュニティへの思想統制や監視強化も含んでいると警告している。

2024年3月、反体制派の凌華湛さんが、パリで秘密工作員によって本国へ強制送還されそうになる事件が発生した。秘密工作員らは凌氏を無理やりパリ=広州便の航空機に乗せようとしたが、フランスの国境警察によって登場直前に阻止された。

この一連の様子は、仏週刊誌「Challenges」およびFrance 2(フランス国営テレビ局)によって詳細に撮影・報道され、中共がフランス国内で行っている秘密警察活動の実態が可視化された。

事件後の調査により、パリ駐在の中国国家安全部の代表および副代表が、反体制派の強制送還に関与した疑いでフランス政府から国外退去処分を受けたことが、「ル・モンド(Le Monde)」紙によって報じられた。

これはフランスが中共による自国主権への干渉に対して正面から対抗した極めて異例の措置であり、欧州諸国の対中政策にも影響を与える可能性がある。

 中共の秘密警察署、世界53か国に100か所以上 標的は「5大グループ」

国際人権NGOセーフガード・ディフェンダーズの2022年の報告書によれば、中共は世界53か国に少なくとも102か所の秘密警察署を展開している。

沈明室氏は、これらの秘密警察署が中共の公安部により統括されており、「連絡員」と呼ばれる人物や団体が、公安部や大使館からの指示を受けて活動していると説明している。

オーストラリア・シドニー工科大学の副教授・馮崇義氏は、中共が秘密警察署を通じて展開している越境弾圧の実態について、次のように述べた。

「中共は華僑、華人、留学生を含む中国系住民を民族的・文化的出自に基づいて監視・脅迫している。これは民族的・人種的偏見による弾圧に他ならない。言論封じと情報収集が主目的である」

特に中共は、法輪功学習者、民主活動家、チベット人、香港出身者、ウイグル人という「5大批判的集団」に重点的に照準を合わせ、国外でも抑圧を加えているという。

 フランス内務省「看板を変えても活動は継続」

フランス内務省は、「秘密警察署が形式上閉鎖されても、中共のスパイ活動や異議人士への圧力は続いている」と警告。現在も、中国大使館または公安部の指示を受けた秘密工作員が活動を継続している可能性が高いという。

馮氏はまた、中共が同郷会や民間文化団体を使って秘密活動を覆い隠していると指摘。オーストラリア・シドニーでは、江蘇省南通出身者による団体が警察関係者に活動の場を提供していたが、報道によって活動が一時中断されたという事例もある。

 欧米諸国が連携 中共の越境監視に対抗

過去2年間で、カナダ、アメリカ、イタリア、ドイツ、イギリス、オランダなどの欧米諸国は、中共が自国領内に秘密警察署を設置し、住民を監視・脅迫しているという疑惑に対して、外交的・法的措置を次々と講じている。

カナダでは2023年、連邦警察がオンタリオ州、ケベック州、ブリティッシュコロンビア州における中共警察署の関連活動を調査し、すでにいくつかの違法活動を停止。

またアメリカでは、FBIがニューヨークに設置されていた秘密警察署を強制捜査し、閉鎖に追い込んだことを報道している。

沈明室氏は、「中共の影響が及ぶ華人居住地域では、異議者の失踪、強制送還、嫌がらせの事例が報告されており、各国は迅速に反情報・防諜体制を強化すべき」と述べた。

セーフガード・ディフェンダーズの活動責任者ローラ・ハース氏も、「国際社会が中共の越境弾圧に対する警戒を強めている。各国政府は、自国の主権と在外市民の安全を守るために、より断固とした対抗措置を講じ始めている」と強調した。

 

李淨
駱亜
中国語大紀元の記者、編集者。
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