中国で少子化対策として導入された「三人っ子政策」を受け、中国の官制メディアは最近、不妊治療のための生殖補助医療(ART)を大きく取り上げた。15日のSNS微博では、関連報道がトレンド入りした。
14日付の中国国営放送(CCTV)ビジネスチャンネルによると、近年、不妊症患者の増加に伴い、より多くの家庭でARTが選択肢になってきている。この2カ月間で、ARTに関して相談を受ける患者の数は、例年に比べて増加している。患者の平均年齢は36歳。
北京のある三級甲等医院のART部門の入り口には、体外受精を希望する患者の長蛇の列ができていた。
「朝の受付で1日分の診療が埋まってしまう。1日に230人もの患者を診ることもある」と、ある医師はCCTVの記者に語った。
様々な生殖補助技術の中で、最も主流となっているのが「体外受精」で、「試験管ベビー」とも呼ばれている。中国では、毎年約30万人の体外受精児が誕生している。ARTの認定資格を受けた医療機関は523施設あり、そのほとんどは主要都市に集中している。
「悪用や操作の可能性も」
四川省の法学者である王君氏は、米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)のインタビューで、「中国当局は何十年もの間、一人っ子政策を推進し、自然妊娠を奨励して体外受精の話を避けてきた。しかし、今になって突然、ARTを推進し始めた」とした上で、「ARTは、法的・技術的な問題だけでなく、倫理的な面でも多くの議論を引き起こす恐れがある。これまではグレーゾーンだったが、そこから抜け出した今、検証するにはまだ時間が必要である」と語った。
体外受精の問題に詳しい蘭州の学者、郭氏はRFAに対し、「体外受精では、メリットのある受精卵(胚)を選べるが、問題はその基準である。このようにして生まれた子どもたちが全員、極めて高い知能を持っていたとしたら、あるいは政府関係者の意向に沿って基準が設定されたとしたら、恐ろしい問題である。これらの基準は、患者との話し合いなしに人為的に様々な操作が可能であり、倫理や道徳に反する行いになりかねない」と指摘した。
郭氏は、ART技術サービスシステムの構築は、体外受精技術の悪用を防ぐための保護システムの構築から始めなければならないと述べた。
「少子化問題解決に近道はない」
医学専門家やメディアが体外受精を少子化問題解決の近道と宣伝していることに対し、医学生の陳さんは、人口問題を解決するには、雇用、住宅、医療、年金などの公共サービスを政府が支援する必要があり、近道はないとRFAに語った。
「政府は、医療や教育などさまざまなインセンティブを提供すべきである。これらは欧米では非常に一般的な保護政策だが、中国では手の届かないものである」
陳さんによると、(中国)政府は少子化問題で「トリック」や「ショートカット」を使って出生率を上げようとしている。これでは、中国の少子化の流れは変わらないという。
(翻訳編集・王君宜)
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