「台湾は今、重大な危機に瀕している」。米国防総省のエルブリッジ・コルビー元国防副次官補が、台湾に警告を発した。同氏は台湾が中国からの危険にさらされているだけでなく、米軍支援を受けられない可能性が大きいことを示した。
25日付の米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、中国共産党(以下、中共)は近年、台湾に対し、武力攻撃に至らない「グレーゾーン」作戦を展開し、軍事的、外交的、経済的、政治的手段を用いて、台湾が大陸との統一を受け入れるよう最大限の圧力をかけてきた。
これに対して、トランプ前政権で国防副次官補(戦略・軍事開発担当)を務めたコルビー氏は、「中国のアプローチは、米台安全保障協力に大きな課題を突きつけている。台湾の人々は自治権の放棄を望んでおらず、中共がいくらグレーゾーン戦術を使っても成功しないだろう」と指摘。
「したがって、中共にとっての最良の戦略は、直接的な武力行使である。米国も台湾も、これに備えなければならない」
コルビー氏は新著『拒否の戦略』の中で、米国がこの可能性に備えるにはどうすればよいかについて見解を述べている。 彼は、アフガニスタンから撤退した後、ワシントンは「アジアにレーザーのように焦点を当て」、覇権を拡大している中国に対抗し、中国が日本の沖縄から台湾、フィリピンを結ぶ第1列島線を越えないよう、緩やかな「連合」を構築すべきだと主張している。
15日に開催された米ワシントンのシンクタンク「グローバル台湾研究所(GTI)」の第5回年次総会で台湾の安全保障について議論した際、コルビー氏は中共が台湾に対して行う「最高の戦略」と「最も危険なシナリオ」を示した。
それはつまり、中共が台湾海峡を封鎖し、砲撃で台湾に侵略し、米国が介入する前に台湾を占領することである。「既成事実」を前に、米国、日本、オーストラリアは、この現実を受け入れざるを得なくなるだろうという。
「これは非常に現実的で可能性のある最終結果である。その時には、米国をはじめとする各国は、この新しい現実を受け入れなければならないだろう」とコルビー氏は強調する。
「台湾のために戦うことの対価は高すぎる」
最新の世論調査では、米国人の半数以上が、中国が侵攻した場合に台湾を防衛するための米軍派遣に賛成している。これに対し、コルビー氏はいざ現実となった場合、米大統領のリーダーシップなどさまざまな要因が鍵になると述べている。彼は非公式の調査で、ほとんどの米国人が「台湾のために戦う」ことに興味がないことを知っているという。
「ここで強調したいのは、特に台湾の友人たちに、あなた方は重大な危険にさらされているということである。危険なのは中国(共産党)からだけではなく、米国民が最終的に(台湾のために戦うことの)コストとリスクが高すぎると判断する可能性があるからである」
同氏は、米国と台湾はお互いに正直になるべきだと考えている。台湾にとって最も重要なことは、防衛費を増やし、それを軍事費に充てることである。そのため、蔡英文総統が最近発表した防衛投資・支出の拡大は、正しい方向への一歩であると評価している。
コルビー氏は、台湾が購入する武器について、米国が口を出すべきではないという考えを否定した。「民間人を含む米国の兵士、水兵、パイロット、海兵隊員が命をかけて行動することになるからである。したがって、台湾が米台の利益になるよう、包括的な戦略に基づいて独自の軍事力を形成すべきであり、米政府にはこれを奨励する絶対的な権利と責任がある」と述べた。
「台湾はもっと頑張らないといけない」
ロバート・オブライエン前大統領補佐官は、GTI総会の閉会基調講演で、「台湾は非常に恐ろしい危機に直面している。台北は、台湾の防衛策を検討するホワイトハウスの担当者から前向きな姿勢を引き出せるよう、一層努力しなければならない」と語った。
同氏は、ヨーロッパの一部の国や北大西洋条約機構(NATO)は防衛への投資が不足しているため、ロシアの侵略リスクにさらされていることを引き合いに出し、防衛費を増加した蔡英文総統の取り組みを評価すべきだとした。「台湾は自分で自国を守らなければならないため、米国だけに頼るべきではない」と主張した。
前出のコルビー氏はGTIの「グローバル台湾ブリーフ」誌への寄稿で、台湾に軍事改革の加速を求めている。「米国の軍事介入は台湾が自国の領土を守るために最善の準備ができているときにのみ行われる。今、準備ができているとは言えない」と述べた。
(翻訳編集・王君宜)
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