台湾保証実施法案が発効 米台関係・米国民支持の急展開

2025/12/06 更新: 2025/12/06

トランプ大統領はこのほど台湾保証実施法案に署名し、対台湾政策におけるアメリカの支援姿勢を法のかたちで明確化した。武器売却と交流強化を推進し、台湾への確固たる関与を示したこの動きは、米台関係の包括的な格上げを象徴している。

12月2日に署名された台湾保証実施法案は、国際社会に少なからぬ衝撃を与えた。ネット上では「中国共産党(中共)が怒り、台湾は歓迎した」との声も出ている。この法案は2020年に成立した台湾保証法の改訂版にあたり、トランプ氏の署名により米国法として正式に発効した。米台戦略関係を制度的に強化するものであり、その核心は、米国務省に少なくとも5年ごとに対台湾交流方針を見直し、結果を議会に報告することを義務付ける点にある。一見すると形式的変更のようにみえるが、実質的には台湾に「制度化された防護盾」を与えたことを意味する。

これまで米台の公式交流は、中共の「レッドライン」を避けるために極めて慎重かつ水面下で行われてきた。だが台湾保証実施法案は、レーガン政権時代に定められた「六つの保証」——1979年の米中国交樹立後にアメリカが台湾に約束した6項目——を、行政上の原則から法的義務へと格上げした点で画期的である。

言い換えれば、今後、アメリカはどの政権が誕生しようとも、台湾政策を安易に変更することは困難になったということだ。法の裏づけを得た米台関係は、1979年以来続いてきた「アメリカの自制的制約」を突破したといえる。これまで両政府高官による相互訪問は「内政干渉」と批判されることを懸念して制限してきたが、新法案では米国務省に「既存制限の緩和を検討すること」を明示的に求めている。

台湾保証実施法案は、共和・民主両党の議員が共同提出した超党派法案である。この点は、国内の分断が深まるアメリカ社会においても、台湾支援が「国家的合意事項」として定着していることを示す。台湾の賴清徳総統も12月3日に「この法案は米台の強固な結び付きを証明しており、今後も安全保障と経済の分野で協力を深め、地域の平和と安定を守る」と感謝を表明した。台湾政府にとっては朗報続きである。

トランプ氏は先月、ホワイトハウス復帰後初の対台湾軍事売却を承認しており、総額3.3億ドル(約510億円)規模のアメリカ製戦闘機部品が台湾の防衛力を実質的に支えている。

台湾も呼応し、400億ドル(約6.2兆円)規模の特別国防予算を編成して戦略的防衛力を強化している。中共の軍事的脅威を前提とした備えである。今回の台湾保証実施法署名により、台湾を取り巻く環境は「戦略的曖昧さ」から「戦略的明確さ」へと大きく変化した。

アメリカは台湾をもはや一時的な交渉材料とは見なさず、制度的パートナーとして位置づけたのである。習近平中共党首は来年4月のトランプ氏訪中で対話と貿易協力を通じて政策を軟化させることを狙っていたが、トランプ氏は表向き「称賛」を示しながらも、10億ドル(約1兆5500億円)規模の追加軍事売却と署名行為で圧力を強めた。再登場したトランプ政権の初動が「インド太平洋戦略」の再確認であり、台湾を「中共封じ込めの要」とした点は極めて象徴的である。

トランプ氏が署名した台湾保証実施法案は、経済と安全保障の双方で中共に対する強い牽制となった。米中対立の構図はさらに明確になっている。

経済とサプライチェーン

法案の影響は経済においても大きい。台湾は世界の先端半導体の約9割を供給し、半導体大手のTSMCはアメリカハイテク産業の生命線である。中共が台湾を攻撃すれば、サプライチェーンが寸断され、電気自動車や人工知能産業が大きな損害を受けるのは必至だ。

トランプ氏の署名には、台湾の民主主義支援に加え、自国の技術安全保障を守る狙いがある。新政権は「サプライチェーンの脱中国化」を一層加速させる方針であり、米企業の中国撤退が拡大するとの見方が強い。その結果、中国経済は短期的に圧力を受け、輸出の急減に直面する可能性がある。「内需拡大による成長」というスローガンが空文化する懸念も拭えない。

習近平が掲げる「共同富裕」は、現実には庶民に新たな負担をもたらす危険性をはらむ。中共はさらに、日本の高市早苗氏が首相になるにあたって、反日的世論の醸成を試みているが、それは結果的に日本・アメリカ・台湾の連携を強化させ、「アジア版ミニNATO」の形成を後押しする方向に働いている。

中共の戦略的ジレンマ

これまでアメリカは、中共に一定の余地を与えながら均衡を取る姿勢を維持してきた。だが制度化された台湾支援によって、中共にとっての「武力統一」のコストは飛躍的に上昇した。軍事面では日米豪などとの連携網を相手にせねばならず、経済面ではサプライチェーンからの排除リスクを負うことになる。

外交面でも中共は、限られた友好国を除き孤立を深めている。「中国夢」は袋小路に入り、「輸血経済」とも言われた外資依存成長モデルは限界を迎えつつある。国内の不満が高まる中、体制維持のために「反日」「反米」「反台独」などのナショナリズムを強調せざるを得ないのが実情である。

今後の台海情勢

短期的には、中共が台湾への「グレーゾーン」圧力を強化する可能性が高い。しかしそれは、台湾側の防衛力強化と対米装備調達の加速を促す結果となる。米台の安全保障協力はさらに現実味を帯びるだろう。来年予定されているトランプ氏の訪中は、中共の体質を改めて浮き彫りにする契機となる可能性がある。

その後、対中関税の再引き上げや「米中貿易戦争2.0」の本格化も視野に入る。中共は一帶一路構想の縮小を余儀なくされ、国内統制を一層強める方向に傾く恐れがある。行き着く先は、体制の崩壊か、あるいは内部の疲弊とともに持続不能状態へ陥るかのいずれかであろう。

F-16V戦闘機の納入と軍事協力

12月4日、台湾空軍参謀長の李清仁氏は立法院で、アメリカから調達した総額80億ドル(約12.4兆円)相当、66機のF-16V戦闘機に関する進捗を説明した。初号機は12月下旬に米サウスカロライナ州のロッキード・マーチン社工場で試験飛行を開始する予定である。これは台湾空軍の近代化における節目であり、米台軍事協力が実体を伴って進みつつあることを示す。

米世論 台湾への軍事装備提供支持高まり

アメリカのレーガン大統領財団が実施した最新の世論調査では、台湾問題に対する関心の高まりが顕著になっている。中共が台湾に侵攻した場合、「台湾の独立を正式に承認すべき」とする回答は73%から79%へ上昇。中共への制裁支持は66%から74%へ、台湾への軍事装備提供支持は56%から71%へと軒並み伸びた。

注目すべきは、「米軍の台湾駐留」を支持する割合が58%から70%へ急増している点である。アメリカ世論は、象徴的支持の段階から、実際の軍事的関与を容認する段階へと移行しつつある。これは、米台関係が理念的価値の共有を超え、現実的安全保障として定着し始めていることの証左である。

金然
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