半導体受託生産で世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県での工場建設を正式発表したことを受け、関係閣僚は国内における安定供給に向けた生産基盤の確保と長期的な支援枠組みの構築に意欲を示した。
萩生田光一経済産業相は10日の閣議後記者会見で「半導体の安定供給は安全保障の観点からも非常に重要」であり、TSMCの熊本県への投資は「我が国のミッシングピースを埋めるもの」だと述べた。
そのうえで、先端半導体の国内製造基盤の確保に向けてメーカーや研究機関と連携するなど総合的な環境整備を進めるとともに「他国に匹敵する措置」を講ずるべく、必要な予算を確保すると発言した。
TSMCとソニーグループの子会社は、熊本県の菊陽町で新工場の建設を計画している。2022年に着工し、2024年の稼働を目指す。約1500人の雇用が新たに創出され、台湾人の技術者がトレーニングを施すことも検討されている。菊陽町によると、新工場はソニーの熊本テクノロジーセンターに隣接する土地に建設する予定。
新工場の設備投資額は約70億ドル(約8千億円)となる見込みで、日本政府が半分程度の補助を行う方針。政府の出資に対する批判もあるなか、萩生田経産相は会見で、特定の企業だけではなく「国内の半導体基盤をしっかり幅広に支援していく」と述べた。
小林鷹之経済安全保障担当大臣は同日の記者会見で、半導体の供給網を強靭化することに意欲を示した。先端半導体の国内立地を推進していくために複数年度で支援することや、必要な制度設計を行うことに取り組むという。
TSMCの熊本工場建設に関しては「率直に歓迎したい」と述べた。「足元で先端半導体の製造拠点がこの国にはない」との事実に触れ、国として後押しすることの必要性を説いた。
国内にある既存の半導体関連産業についても、「刷新も速やかに図っていかないといけない」と発言した。将来を見据え「自動運転や人工知能など、日本国内で半導体の市場をどのように作っていくのか、複合的視点からしっかり考えていかないといけない」との考えを示した。
世界的な半導体不足は産業に大きな影響を及ぼしており、日本の大手自動車メーカーは相次いで減産を余儀なくされている。米中対立によるグローバルサプライチェーンの途絶リスクも、現状に追い打ちをかけている。
ひっ迫した状況に対応するため、経済産業省は6月に「半導体・デジタル産業戦略」を取りまとめ、先端半導体製造技術の国際共同開発や生産能力の確保、先端ロジック半導体の開発強化を盛り込んだ。
11月8日に開催された「新しい資本主義の実現会議」では緊急提言が出され、先端半導体の国内立地を推進していくために複数年度で支援していくことや、必要な制度設計を行うこと等を通じて半導体のサプライチェーン全体を強靭化していく計画が盛り込まれた。
政府は来週にも産学有識者を集めた半導体デジタル産業戦略検討会議を開催し、政策の具体化に向けた議論を開始する。
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