米国のドナルド・トランプ前大統領は10日、共和党の資金調達組織である全米共和党議会委員会(NRCC)の会合で、2022年の米中間選挙に向けた党の戦略を概説した。
バージニア州知事選とニュージャージー州知事選で好成績を収めた共和党は、来年の中間選挙でも楽観的な見通しをつけた。トランプ氏はNRCCでの演説で、2022年中間選挙の大勝の「確信」を口にした。
「私たちが団結すれば、1年後には国中に大規模な赤い波が押し寄せ(訳註:共和党支持の上昇)、米史上最多の共和党下院議員の選出を祝うことになるだろう」と語った。
さらに民主党政権の批判も展開した。「民主党は今にも崩れ落ちそうな砂上の楼閣だ」「ジョー・バイデン、ナンシー・ペロシ、そして急進的な民主党全体は、かつてない規模の政治的メルトダウンに向かっている 」とトランプ氏は述べた。
そして、2022年中間選挙に向けた共和党の政党や党のあり方についても提案した。中流階級の経済的幸福と文化的価値に焦点を当てたポピュリズム性向の政党だ。
「我が国を救うために、共和党は米国の労働者の経済的利益のために激しく戦い、米国の家族の社会的利益のために大胆に発言し、信心深い米国の愛国者の文化的価値を誇り高く支持する政党でなければならない」とトランプ氏は述べた。
トランプ氏はさらに「これを米国のポピュリズムと呼ぶ人もいれば、保守主義と呼ぶ人もいる。私は米国第一主義と呼んでいる。呼び方がどうであれ、これ(方針)は今後も続く。勝つための最良の方法であるだけでなく、勝利の唯一の方法でもある」と続けた。
トランプ氏は、今後の共和党のビジョンと昔の共和党を比較した。
昔の共和党は「果てしない戦争、国造り、緩い移民政策、馬鹿げた貿易協定、左翼に文化を明け渡してしまう」政党だったと述べた。こうした共和党は「永遠に消え去った」と付け加えた。
「私たちは労働者の党だ」とトランプ氏は力説した。「私たちは犯罪に厳しく、国境に強く、貿易に強く、遺産を誇り、米国の価値観を誇りにする。国民の雇用と賃金を守る。国民の家庭と地域社会を守る。そして、米国を破壊しようとしている覚醒した狂信者たちを倒す」と主張した。
2020年の選挙戦よりも2016年の選挙戦に近いトランプ氏のコメントは、共和党内で進行中の党内抗争の真っ只中に出された。
党内には、ミッチ・マコーネル上院少数派院内総務やリズ・チェイニー下院議員のような重鎮からはポピュリズム性向から距離を置くよう求める声もある。
マコーネル氏は8日にケンタッキー州で行われた講演で、2022年の中間選挙における共和党の目標についてトランプ氏とは異なる見解を示した。中間選挙に向けて「現政権と民主党議会のしていることについて、米国民と議論することだ」とマコーネル氏は歩み寄りの姿勢を示した。
マコーネル氏とチェイニー氏は、1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件をめぐりトランプ氏を非難し、党がトランプ氏を忘れるよう求めている。
それにもかかわらず、トランプ氏は共和党内で大きな影響力を維持している。全米では、厳しい予備選に臨む多くの共和党員がトランプ氏の影響力を望んでいる。2021年1月にノースイースタン大学、ハーバード大学、ノースウェスタン大学、ラトガース大学が実施した調査結果によると、共和党員の45%が、トランプ氏が支持する候補者を支持する可能性が高いと答えている。
例えば9日、トランプ氏は現職の知事を予備選挙で打ち負かそうとしているアイダホ州のジャニス・マクギーチン副知事への支持を示した。
2022年に向けて、トランプ氏はすでに45人の候補者に強い支持を表明している。その中には、アーカンソー州知事選に出馬するトランプ政権時代の元報道官サラ・ハッカビー・サンダース氏、ランド・ポール上院議員やマルコ・ルビオ上院議員といった2016年の上院予備選挙の挑戦者、州政府や連邦政府の役職に就く候補者が多数含まれている。
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