ウガンダ、中共債務のワナに陥る…国際空港「接収」の危機

2021/11/29 更新: 2021/11/29

ウガンダは同国唯一のエンテベ国際空港と拡張工事における融資契約をめぐり、中国側に修正を求めている。契約によれば、債務返済ができなければ中国側に管理権を移譲されるという。いっぽう、中国側はこの情報を否定している。

ウガンダ現地紙デイリーモニター(Daily Monitor)25日付けによると、ウガンダはエンテベ国際空港を拡張するために中国国有・輸出入銀行から2億米ドルを借り入れた。この借款は7年間利子払いのみ(年利2%)の据置期間を含む20年の返済期間が定められたが、ウガンダ側は期限内の返済が見込めないとして、再交渉を中国に求めている。

ウガンダ議会は10月、融資には重い義務を含む条項があり、債務不履行に陥れば空港が差し押さえられる可能性があると報告した。しかも、ウガンダ政府は契約の中で主権免除(国際民事訴訟で、被告が国や行政組織のとき、外国の裁判権から免除される)の放棄を約束しており、国際機関による仲裁・保護を受けることができないという。

融資契約の中に「主権を脅かす」内容

デイリーモニター紙によると、ウガンダは2015年3月31日に中国輸出入銀行と締結された融資契約には、いくつかの不利な条項が含まれている。このうち少なくとも13条項は「公正ではなくウガンダの主権を脅かすもの」とウガンダ民間航空局(UCAA)の関係者は指摘している。

例えば、通常UCAAの予算と各種計画の管理はウガンダの航空規制当局の理事会の権限にあるが、この契約では、中国輸出入銀行の承認を得なければならないことになっている。ほかにも、双方の紛争は中国国際経済貿易仲裁委員会 (CIETAC)を通して解決しなければならないなどが定められている。

「UCAAが自身の収入をコントロールできなくなる。このような規定は、サービス提供の失敗や倒産のリスクにさらすことになる」と関係者が同紙に語った。

再交渉を拒否する中国

報道によると、中国側が融資契約の「不利な条件」の再交渉を拒否したため、ウガンダ政府高官は苦境に立たされている。

同紙が伝える高官筋の話によると、融資契約がもたらすリスクが原因で、ウガンダは11人の代表団を北京に派遣し、契約条項を再交渉するよう中国輸出入銀行に求めたという。

しかし、中国輸出入銀行は署名済みの融資契約の条件を変更することを拒否し、変更しようとすれば「悪い前例になる」とウガンダ代表団に伝えた。

この国際空港と債務に関する報道はウガンダ国民の関心を集め、中国共産党による債務トラップに陥ったとの認識が高まった。不条理な契約を結んだことに対して、財務相が議会で謝罪の弁を述べるまでに至った。

いっぽう、在ウガンダの中国大使館は28日に「空港接収」との情報を否定した。「中国への返済が行われなかったことを理由に中国が差し押さえたアフリカのプロジェクトは一つもない」と声明を出した。

世界で問題視「一帯一路」 米、クアッド、EUは代替案を提案

中国共産党が進める広域経済圏構想「一帯一路」は、債務不履行に陥らせて国家資産を接収しているとの問題が指摘されている。

世界銀行が今年10月11日に発表した「国際債務統計」では、低・中所得国における対中債務が2020年末時点で約1700億ドル(約19兆円)となり、11年と比べて3倍超に達することがわかった。多くはインフラ建設関係の融資だという。国際金融組織規模の契約を通じて、中国共産党が世界的な影響力を拡大させていることが数字であらわになった。

こうしたなか、米国や日本など主要国はルールベースや透明性、持続可能性を重視する、一帯一路代替案を途上国に提案している。

米国のバイデン政権は6月のG7サミットで、「一帯一路」構想に対抗する主要7か国参加で米主導のグローバルインフラ構想「より良い世界再建」(Build Back Better World、B3W)インフラ構想を表明した。

7月には欧州連合(EU)が、欧州と世界を結ぶグローバルなインフラ計画を立ち上げることで合意した。また、9月に開いた日米豪印戦略枠組み(クアッド)首脳会談では、インド太平洋地域のインフラ整備支援で協力する方針が示された。

11月中旬には米ブリンケン国務長官がアフリカを周遊し、地域におけるB3Wの推進を説いた。すでにガーナやセネガルなどで公聴会議などを実施している。

蘇文悦
蘇文悦
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