11月30日、欧州連合(EU)は中国政府に対し、中国共産党の元高官に性的な関係を強要されたと告発した女子テニスの彭帥選手の健康状態、安全と所在について「検証可能な証拠」を提示するよう中国政府に要求した。
同日、EUの外務省に当たる欧州対外行動庁(EEAS)は声明の中で「EUは彭選手の自由で脅威にさらされていないことを保証するよう国際的に高まっている要求にEUは賛同する」とした。またEUは中国当局に対し、彭選手への性的暴行の疑惑について「完全かつ公正で透明性のある調査」を行うよう求めた。
彭選手は11月2日、中国の張高麗元副首相による性的暴行を告発する文書をネットに投稿したあと、公の場から姿を消した。告発文書は約30分後に削除された。それ以来、彼女の消息不明はテニス界をはじめ国際的な関心を呼んだ。
国際的な圧力を受けて、中国共産党は公式メディアで彭選手の写真や動画を公開して「無事である」ことを強調しようとする宣伝を行った。国際オリンピック委員会(IOC)は21日、バッハ会長が彭選手と約30分間ビデオ通話して無事を確認したと発表した。しかし、女子テニス協会(WTA)会長兼最高経営責任者のスティーブ・サイモン氏は、彭選手の安否を巡る懸念を解消するものではないと懸念を示した。欧州対外行動庁の報道官も30日、「彭選手の安全と自由に関する懸念は解消されていない」と述べた。
失踪させられる中国人
近年、党幹部の汚職などを批判したり、民主主義や労働者の権利運動を支援したりして、公の場から姿を消した中国のビジネスマンや活動家、一般市民が増えている。
EUは「強制的な失踪や恣意的な拘束、特に指定された場所での住宅用監視装置(RSDL)の使用に強く反対し、中国に対して国内法および国際法に基づく人権上の義務を遵守するよう求める」と述べた。
今回、彭選手が消息不明になったことで、2022年北京冬季オリンピックの開催について多くの政府や国際的組織が疑問符をつけた。ボイコットへの呼びかけがさらに強まる可能性がある。
米議会下院の外交委員会で務めるマイケル・マコール議員は22日、彭選手をめぐるIOCの対応を批判する声明を出した。また、ビデオ通話で彭選手の「無事を確認」と発表したIOCについて「中国共産党による虐待に加担している」と指摘した。
EUはかつて、新疆ウイグル自治区での国家ぐるみのウイグル人弾圧、香港での民主的自由の抑圧などの人権侵害を理由に、米国と共同で中国共産党に制裁を科してきた。
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