駐大阪中国総領事館が主催する新疆ウイグル自治区への旅行ツアーについて、前衆議院議員の長尾敬氏は「弾圧の被害者を同行させてはどうか」と政治的意向を含む企画実施に疑念を投げかけた。欧米諸国が北京五輪ボイコットを表明するなか、中国共産党のプロパガンダ発信が再び浮き彫りになった。
中国の駐大阪総領事館は2日ホームページなどで新疆ウイグル自治区への旅行企画を発表し、日本人限定のツアー参加希望者の情報登録を募っている。中共ウイルス(新型コロナウイルス)流行の終息後に実施予定だという。中国領事館は欧米および日本が懸念を示す地域の人権侵害問題を一切否定している。
かねて中国共産党の人権侵害に取り組んできた長尾氏は5日、ツアーについて「私が参加したら日本に戻ってこれるかなぁ?」と投稿。すると中国駐大阪総領事館の薛剣総領事は、新疆ウイグル自治区では人権問題はないとの趣旨の返信をした。
長尾氏は、強制収容所を経験したウイグル人を案内人として同行させ「彼らが世界中に見てもらいたいところを紹介させてほしい」「当然全員が安全に帰国できる配慮を」とツアー企画実施の政治的背景を暗に非難した。薛氏は人権問題への指摘を「内政干渉だ」と切り返した。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは6月の報告書で、ウイグル人などイスラム教徒の少数民族が多く暮らす新疆では中国共産党による反人道罪が続いていると公表した。同カラマール事務局長は、中国共産党による弾圧を「地獄のような恐ろしい光景」と例えて非難した。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチも4月に同様の報告書を発表しているほか、複数の国や議会ではウイグル人弾圧をジェノサイド(大量虐殺)として認定している。
中国本土ではウイグル人ほか法輪功学習者、キリスト教徒らの迫害情報が継続的に報告されるなか、米国や英国、カナダ、オーストラリア、リトアニアは2022年北京冬季五輪に外交使節団を派遣しない「外交的ボイコット」を実施すると発表した。日本政府は「国益の観点から時期を見て判断する」としているが、与野党議員からは外交的ボイコットを支持する声が上がっている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。