バイデン米大統領が主催する「民主主義サミット」でオンライン講演した岸田首相は「世界には権威主義的な体制のもと自由が抑圧され人権が蹂躙されている」地域があると述べ、有志国で結束して対処すると語った。また、人権担当首相補佐官の設置やビジネスと人権のリスクを企業に意識啓発を促すといった日本の取り組みを強調した。サミットにあわせて民主主義的制度の支援のため国際機関に対して1400万ドル(16億円)を拠出することも発表した。
9日から10日にかけて開催する「民主主義サミット」は言論や報道の自由を保護し、汚職撲滅と民主主義システム強化への議論の機会を提供している。米国はこのコンセプトのもと最大4億2440万ドルの対外援助を発表した。米国や諸外国との人権をめぐる懸念事案を抱える中国とロシアは招待されていない。
バイデン大統領は冒頭演説で「自国の民主主義を強化するとともに専制主義を押し返し、腐敗と闘い、人権を推進・保護するための具体的な約束を結ぼう」と2日間のサミットの参加者に目標を提示した。
さらに、人権侵害を防ぐための有志国による輸出管理枠組みを設けることも発表した。大統領は、軍民両用可能な製品や技術が権威主義国に渡るのを防ぐため、有志国で「輸出管理と人権イニシアチブ」を立ち上げた。
米欧では人権法案や決議により権威主義国の拡張防止の動きが活発になっている。サミット開催前の8日、米国上下院では新疆生産品の取引禁止を行う法案が通過した。カナダでも同様の法案が11月上院に提出されている。豪州では「マグニツキー法」と同等内容の人権侵害制裁法案が上院で可決した。10日までに米英豪カナダがウイグル人などに対する人権侵害を理由に北京冬季五輪の外交ボイコットを発表している。
日本は人権制裁や強制労働排除の法律を備えていないが、政府は経済産業省や外務省を通じてサプライチェーンや海外展開の企業に対して人権セミナーや意識調査アンケートを行っている。人権補佐官に任命された中谷元氏は11月出演のテレビ番組内で、制裁法導入の困難を口にしたものの、中国人権問題は「看過できない」と明言した。
自民党グループ「尊厳と国益を護る会」は8日、岸田首相に外交的ボイコット及び中国の人権侵害停止を求める国会決議の早期採択を求める申し入れを行った。山田宏参議院議員のツイートによると、首相は「しっかり受け止める。日本の国益を主体的に判断する」と答えたという。
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