国際的な人道犯罪を弁護士や検察などからなる第三者委員会が裁定する「ウイグル民衆法廷」は9日、中国共産党政権による新疆ウイグル自治区での人権侵害を「ジェノサイド」と認定した。
同法廷は報告書で、中国共産党が強制収容や大規模な不妊手術、強制労働などの弾圧行為を通じて、ウイグル人やその他の少数民族の人口増加を抑え込むために「意図的で組織的な政策」を実施したと認定した。
また、「巨大な国家規模の抑圧装置は、最高意思決定機関が計画を承認しなければ存在し得ない」と述べ、習近平国家主席をはじめ指導部がこの人権侵害に「主要な責任を負っている」との見解を示した。
ウイグル法廷は今年、ロンドンで複数回の公聴会を実施。旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷でセルビアのミロシェビッチ初代大統領を起訴したジェフリー・ナイス卿が議長を務め、弁護士や医療関係者などで構成される陪審員9人が、目撃証言などの聴取を行った。
ナイス卿は、63ページに及ぶ報告書を読み上げ、大量虐殺の証拠はなかったとした一方で、ウイグルの人口増加を抑え込み、滅ぼすつもりで中国共産党が用いた手段は「ジェノサイド」に値すると責任を問うた。
非人道的な扱い
新疆ウイグル自治区では100万人を超えるウイグル人や少数民族が恣意的に拘束され、不妊手術や強制労働を強いられていると指摘される。米国は、同自治区の人権侵害を「人道に対する罪」「ジェノサイド」と認定するなど、中国共産党を糾弾してきた。
同法廷ではナイス卿が公聴会での証人の証言を引用し、拷問や不妊処置強要などウイグル人を狙った弾圧政策の残虐さを語った。
「約12畳の独房に50人もの拘束者が詰め込まれ、監視カメラや大勢の前で排泄を強いられるほか、爪を剥がされたり、棍棒などで執拗に殴打されるなどの拷問を受けている。また数時間から数日間、地面に固定された鉄製の椅子に手足を鎖で縛られたり、冷水を入れた容器に首まで沈められる虐待が行われている」。
さらに、警官による集団レイプや電気棒を開口部に突っ込むなど、電気ショックを使った拷問も行われていると指摘し、容認できるものではないと非難した。
1948年に国連総会で採択されたジェノサイド条約は、国民や民族、宗教上の集団を殺害し迫害する行為を防止し、その壊滅を阻止するため国際的な行動を起こすことを目的としている。ナイス卿は、この条約の重要性は2021年になっても変わらないと指摘。各国政府や民間人などの継続的な主張や活動こそが、人権侵害を解決する鍵になると強調した。
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