政府は16日、2021年の農林水産物・食品の輸出額が初めて1兆円を突破したと明らかにした。米国やアジアの需要回復が追い風となり、品目では牛肉や日本酒などが牽引した。2030年に輸出額を5兆円にする目標に向けて政府は輸出増加に向けて注力するとともに、日本産農産物輸入に対する規制撤廃の働きかけを続ける。
財務省が16日に発表した11月の貿易統計(速報値)によると、野菜や果物などの食料品は前年同月比18.5%増の899億円だった。1〜10月の輸出額9734億円と合わせると1兆633億円になる。松野博一報道官は16日の記者会見で「海外市場を取り込むことで農林水産業の成長産業化を図り、地域経済を活性化していきたい」と述べた。
政府統計によれば、1~10月は日本酒・ウイスキーなどアルコール飲料、清涼飲料水、醤油や味噌などの「加工食品」、牛肉、ホタテ貝が多く輸出された。
同期間中の国・地域別の累計では、輸出額が前年同期より40%以上増えたのは中国(1841億円で1位)、米国(1371億円で3位)。ほか台湾、韓国、オーストラリア、フィリピン、EU(欧州連合)でも20%以上増加した。香港(1778億円で2位)やベトナムでも8%以上増加した。
輸出は今年に入ってからほぼ毎月、前年同月比で20~40%増が続いた。コロナ禍の巣ごもり需要(オンライン販売)で酒類や牛肉の販売が伸びたのが原因とされる。2012年には4497億円だった農林水産物・食品の年間輸出額は9年間で倍以上になり、農林水産省や各関係省庁は海外市場における日本食の人気から日本食品のブランディングやプロモーションを進めた。
日本政府は、農林水産物・食品の輸出額を2025年までに2兆円、2030年までに5兆円にする目標を掲げている。岸田文雄首相は12月10日に開かれた農林水産物等輸出促進全国協議会で、目標達成に向けて「品目別の輸出促進団体の組織化によるオールジャパンでの輸出力強化を図る」と述べ、次期通常国会に輸出促進法改正案を提出する考えを示した。
農林水産省は21年度補正予算案で輸出拡大実行戦略として約433億円を計上。自民党が10日に発表した22年度税制改正大綱では、製造設備や物流施設などに税制上の措置を創設することなどが盛り込まれ、輸出促進を後押しする構えだ。
政府は、福島原子力発電所の事故を理由に日本の農産物に輸入規制をかけている国々に継続的にアプローチを掛けている。日本の主要輸出先である香港や中国、台湾などはいまだに特定地域の産品に規制している。いっぽう、今年9月には米国が農産・水産物の輸入規制を撤廃したほか、EUが証明書の提出によって輸入を許可する制度を導入し規制が緩和された。
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