中共の3つの主要なデータ収集者は、中国の大手インターネット企業である百度、アリババ、テンセント(この3社は以下、BATという)である。これらの企業にはAIアプリケーションの長年の計画がある。中国の半導体産業の欠点を補うため大量データとインフラに依存している。
米国政府は以前、BATを「中国共産党政権の事実上の道具」と例えていた。元米空軍准将のロバート・スポルディング氏によると、BATはインターネットユーザーからデータを収集し、巨大なAIプラットフォームに送り込んでいるという。
ゴールドマン・サックスが2017年に発表した報告書「China’s Rise in Artificial Intelligence(人工知能における中国の進歩)」によると、BATの唯一の欠点は質の高い半導体が不足していることだ。報告書では、AIの重要なインプットとして「人材、データ、インフラ、シリコン」を挙げ、中国にはこれらが備わっているとした。
BATはデータ収集や専門家を集めるための独自の完全なプラットフォームを持っている。また、中国には10億人近いインターネットユーザーがいるため、BATはデータ面で圧倒的な強みを持っている。
中国最大のシンクタンクであるCCIDコンサルティングによると、データ増殖速度の加速により、AIトレーニングに必要な計算能力は指数関数的に増加するという。
大手インターネット企業は数千ペタバイト(1ペタバイト=1024テラバイト)のデータ量を必要するが、中小企業はペタバイト、個人データはテラバイトを使う。
ビッグデータは機械学習の基礎であり、AIを急速に発展させる鍵となる。中共は、中国の大手テクノロジー企業の協力を得て、大量のビッグデータを入手している。
石油よりも多い半導体の輸入額
BATの唯一の欠点は半導体不足だと前出の報告で指摘した。実は、半導体生産の問題はAI分野だけでなく、中国のハイテク産業にも大きな影響を与えている。中国は高度な半導体を生産することができず、主に海外からの購入に頼っている。
デロイトの報告書によると2015年以降、半導体は中国最大の輸入品目となっている。15年以前は、中国の半導体の輸入は石油の輸入とほぼ同じ量だったが、同年には半導体の輸入額が2倍以上の2200億ドルに達した。18年には3000億ドル、20年には3500億ドルを超えた。そして、その半導体の輸入量は21年1月から5月にかけて30%以上増加した。
この状況下でBATもまた21年に国内半導体製造に向けた新たな計画を発表した。10月19日、アリババはクラウドコンピューティング事業の発展のために、自社使用の「倚天(イーテン)710」半導体を発表した。この半導体は、最先端の5nmプロセスで製造されるという。
8月、百度は第2世代の人工知能(AI)半導体「崑崙(クンルン)」の量産を開始したと発表した。この半導体はクラウドサービス、自律走行、高度道路交通システムなどの用途に適しているとされる。
テンセントは7月、ゲーム事業やオンラインビデオ事業との連携を中心に、AIやビデオコーデックの半導体研究開発に関連する人材募集を始めた。さらにテンセントは、クラウド・データセンター用の深層学習半導体やAIアクセラレータ製品を設計している上海のスタートアップ企業「燧原科技」などの半導体企業に投資している。
今年の1月から5月までに、中国で生産された半導体の総数は1399億2000万個で、前年同期比で48.5%増加した。同時期の輸入半導体の総数は2600億個で、前年同期に比べて30%増加した。
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