カナダ、台湾との投資保護協定に締結する意向 新たな中国戦略か

2022/01/11 更新: 2022/01/11

カナダのメアリー・エング国際貿易相は10日、同国が台湾との投資保護協定を締結する意向であることを明らかにした。海外に投資するカナダ企業などに「安定したルールベースの投資環境を提供する」としている。中国の強い反発が予想されるなか、正式な外交関係を持たない台湾との協定の締結に強い意欲をみせた。

エング氏は「カナダがインド太平洋地域における貿易関係を多様化させ、経済的なパートナーシップを深めていく上で、台湾は重要な貿易・投資パートナーになる」と声明を発表した。同氏は台湾行政院の鄧振中・政務委員(通商担当)と9日に会談し、外国投資促進保護協定(FIPA)について「探索的な話し合い」を開始することで合意したという。

台湾は世界貿易機関(WTO)に加盟しているものの、自由貿易協定(FTA)を結んでいるのはシンガポールとニュージーランドの主要2カ国のみ。米国や欧州連合(EU)など、志を同じくするパートナーとの貿易取引を求めてきた。

台湾行政院は声明の中で、今回の動きを経済・貿易関係強化のための「重要なマイルストーン」と表現している。

カールトン大学の貿易専門家メレディス・リリー氏は通信社カナディアン・プレスに対して、WTO加盟国同士が投資について交渉するのは「当然のこと」だと述べ、カナダに経済的な利益をもたらす可能性を指摘した。

カナダを含む自由主義国は国交のない台湾との経済連携を模索している。欧州連合(EU)は昨年9月にインド太平洋戦略を発表し、台湾と通商交渉を進める方針を示した。さらに10月には台湾について「民主主義の統治機構」と評し半導体関連事業でEU域内への投資を呼びかけた。

こうしたなか、中国共産党は特に米国との同盟国に対して揺さぶりをかけている。台湾と中国は昨年9月、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)の加入を申請した。

前出のリリー氏は、中国の申し出は「真剣なものではない」「より広範な地政学的な出来事のためである可能性が高い」と加紙グローブ・アンド・メールに語った。米国不在のCPTPPの枠組みで、米国の同盟国やパートナー国との関係を不安定にさせることを試みたのではないかと指摘した。

いっぽう、すでにCPTPPに批准しているカナダ政府は「新規加入の決定はあくまで加盟国による協議次第」として双方の申請について明白な態度表明は避けた。

中国は台湾への軍事的な威圧を強めており、リトアニアなどバルト3国の国会議員団が訪台中には、中国の戦闘機など27機がADIZに侵入した。また、多額の経済援助を行うなどして関係国に台湾との断交を迫っており、蔡英文政権が2016年に発足して以降、台湾は8カ国と外交関係を失った。

米国をはじめ国際関係担当。