米国が発表したデータによると、北朝鮮は世界でも貧困度の高い国であるにも関わらず、国内総生産(GDP)の4分の1近くを軍事費に支出している。しかし、同国が保有する核兵器の正確な規模と強度は依然として不明である。
とは言え、2022年の年明けから1月27日までに6回もの実験を繰り返した同国のミサイルに対する執拗性を鑑みれば、ここ数ヵ月の間にアナリスト等の間で囁かれている懸念にどうしても目が向く。つまり、北朝鮮が向こう5年の間に数百の核兵器と弾道ミサイルを保有する可能性である。
金正恩(Kim Jong-un)総書記は2021年末に開催された朝鮮労働党中央委員会総会において、2022年の国政運営方針として食糧、衣類、住宅事情の改善に取り組む姿勢を強調したにも関わらず、未だ国家の武装のほうに重点を置いているようである。 専門家等の見解によると、金総書記が急速に連続してミサイル発射を披露したのは、将来的に予想される韓国や米国との非核化交渉を揺すぶる狙いが裏に潜んでいる可能性がある。
1月に繰り返された発射実験はまた、必要とあらば北朝鮮政権が極端な行動に出かねない危険性を示すものでもある。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「北朝鮮に非核化交渉の再開に応じる考えがあるとした場合、こうした実験の加速はさらに重要性を帯びる可能性がある」とし、「通常兵器の進歩を示すことで、軍縮による国家安保の弱体化に対する国内の懸念を緩和できると同時に、将来的に交渉が挫折した場合でもより強力な軍事力を確立する基盤を確保できる」と報じている。
韓国のソウルに所在する韓国国防大学の金英俊(Kim Young-jun)教授は、「金総書記は自国が強力な軍事力を保有していることを国民に示さなければならない。そうすれば、交渉が失敗した場合も、自国には戦闘体制が整っているという言い訳が効くためである」と付け加えて説明している。
金総書記は最高指導者の地位に就いてから今年で10年目を迎えたが、近年の政策は続けて失敗に見舞われている。北朝鮮は依然として深刻な食糧不足に直面しており、国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者皆無を主張した金総書記が国土封鎖に踏み切ったことで経済低迷が一層悪化した。
脱北して研究者に転向した安江日(Ahn Chan-il)博士はフランス通信社に対して、「おそらく金総書記が自信を持って功績と呼べるものはミサイルと兵器開発くらいだ」とし、「現在のところ、同総書記が北朝鮮国民のために提供できるものは何もない」と述べている。
食糧難に耐え兼ねた北朝鮮は2022年1月に中国との鉄道輸送を再開し、パンデミック発生以来初めて隣国からの援助受け入れに関心を示した。
アナリスト等の見解によると、北朝鮮の頻繁な発射実験は時期を狙った可能性がある。専門家等の意見では、2022年3月に予定されている韓国大統領選挙間際に発射を繰り返せば与党候補に不利に働くため、北朝鮮は1月中にできる限り実験を済ましておこうという思惑がある。
フランス通信社が報じたところでは、2月上旬には北京冬季オリンピックの開催も予定されていることから、その最中に発射実験を行えば中朝関係に影響が出兼ねないため、北朝鮮はその前に可能な限り注目を集めておきたいという魂胆もある。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙が伝えたところでは、朝鮮人民軍は通常12月から3月にかけて実施される定例の冬季訓練の真っ最中であるが、それにしても北朝鮮が新年早々にこれほど多くのミサイル発射実験を繰り返した年は過去にない。
AP通信は、「専門家等の見解によると、今回の北朝鮮による頻繁なミサイル実験は、経済制裁緩和の駆け引きを優勢に運ぶためだけでなく、米国政府との外交を相互の軍備削減交渉に転換することを念頭において、敵対国に一層の圧力を加えることで北朝鮮を核保有国として認めさせるという目的がその背景にある」と報じている。
米国は北朝鮮に対して挑発行為の停止、国際法の遵守、緊張緩和、朝鮮半島の非核化に向けた協議の再開を繰り返し促してきたが、北朝鮮にはこうした対話を前進させる意欲は微塵も見えない。
ニューヨーク・タイムズ紙が報じたところでは、ソウルに所在する韓国の情報機関、国家情報院傘下の国家安保戦略研究所(INSS)の崔容焕(Choi Yong-hwan)アナリストが最近発表した政策論文には、「北朝鮮は自国の核能力と兵器システムの進歩を披露することで、米国と韓国に対して『待てば待つほど、米韓が払わなければならない犠牲が大きくなる』との警告を発することを意図している」と記されている。
金総書記の継続的な挑発行為にも関わらず、米国は引き続き北朝鮮に対話を促している。
北朝鮮が5回目の発射実験を実施した後に開かれた記者会見で、北朝鮮を正式名称の「朝鮮民主主義人民共和国」と呼称した米国国務省のネッド・プライス(Ned Price)報道官は、「北朝鮮に対して敵対的な意図はない」とし、「米国は対話と外交を受け入れる心算である。朝鮮半島の完全非核化という包括的な目標を達成するには、米国は対話と外交が最も効果的な手段であると考えている」と表明した。
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