米政府から約20億ドルの契約を獲得した中国系企業が、米最大のスポーツイベントであるナショナル・フットボール・リーグ(NFL)優勝決定戦「スーパーボウル」でマーケティングを行い、そのブランド力を高めようとしている。
中国の医療機器メーカー九安医療(Andon Health)の子会社iHealth Labsは、2月5日から12日にかけて、LAコンベンションセンターで開催されたスーパーボウルの前夜祭で来場者に12万個の中共ウイルス(新型コロナ)検査キットを配布した。試合当日には休憩時間にスタジアムのビデオボードで大々的な広告を流した。
NFLは、13日の大会では5歳以上の来場者に対して、中共ウイルスのワクチン接種証明書の提示、または試合前の検査実施を要求していた。
中国製キットへの依存
iHealth Labsは、バイデン政権が推進している家庭用検査キット(10億回分)の無料配布政策の主要な契約先として浮上している。
同社は、この1カ月間に18億ドルの連邦契約を獲得し、ホワイトハウスが配布する検査キット数全体の約3分の1に相当する3億5400万回分を供給。同社は14日、「家庭での検査をより身近なものにする」ために、20の州政府やその他の団体と協力していると発表した。
九安医療の書類によると、12月から1月にかけてiHealth Labsがニューヨーク州保健局とマサチューセッツ州から受けた注文を合わせると、その価値は少なくとも3億3300万ドルに上る。iHealth社は現在、米国の需要に応えるため1万6000人の製造担当者を雇用し、1日の生産能力を1000万個以上に拡大しているという。
いっぽうでiHealthと中国との関係については、一部の共和党議員の間で批判の声が高まっている。
ロジャー・マーシャル上院議員は、中国製の検査キットが米最大のスポーツイベントで公然と宣伝されていたという事実は「米国がいかに中国からの医療用品に依存しているか」を物語っていると指摘した。
「残念ながら、この製造業を国内回帰させる行動は最小限に抑えられており、代わりにバイデン政権は何百万個ものコロナ検査キットを購入するために納税者のお金を中国に送り続けている」と批判。「中国共産党ではなく米国の製造業に投資し、国内での雇用を創出すべきだ」と訴えた。
中共ウイルスの世界的な拡大がサプライチェーンに甚大な影響を及ぼすなか、マーシャル氏はリック・スコット上院議員らと「中国共産党のコロナ検査キットに税金を使わせない法案(No Taxpayer Dollars for Communist China COVID Tests Act)を共同提出。上院の全会一致を求めたが民主党に阻まれた。
米国市場への取り組み
2010年にカリフォルニア州に設立されたiHealth Labsは、九安医療と中国のスマートフォンメーカー小米(シャオミ)がそれぞれ70%と20%の株式を保有する共同出資会社だ。昨年5月に米国の投資禁止対象から除外されたシャオミに対してリトアニア政府は9月、検閲機能が内蔵されているとして同社携帯を購入しないよう呼びかけていた。
今回のパンデミックは、これまで数年連続で赤字を計上してきた九安医療にとっては好材料となった。米国食品医薬品局(FDA)から自己診断キットの販売許可を得たことで、同社の株価は14倍上昇した。
しかし、中国での販売許可はまだ下りていない。9日に行われた投資家との質疑応答では、米国外での販売を行っているかとの質問に対し「今のところ、米国市場に重点を置いている」と答えている。
中国の規制当局は最近、iHealthによるオミクロン株の検出能力に関する報告が不完全であるとして、九安医療の幹部を召喚した。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。